第2話 noir fantasia

年月が経ち少女……皐月一樺さつきいちかは、母譲りの金色の髪と父譲りの赤眼を持ち、立派な少女に成長していた。


「パパ!今日は魔法学校の制服貰いに行くんだよね?早く行こうよ!」 笑みを浮かべながら一樺は父を急かした。その様子にくすくすと笑いながら「一樺。制服もカバンも逃げないから落ち着きなさい」と母が一樺をたしなめた。その言葉に一樺は「はーい……」と不満そうに返事をすれば父はそっと一樺の頭を撫で、「じゃあ行こうか。一樺の制服とカバンを受け取りに行こう。」と告げた。その言葉にパァっと笑みを浮かべ「うん!」と一樺は頷いた。


「さぁ一樺。魔法の練習だ。移動魔法の詠唱は覚えているね?」


「勿論だよパパ。ちゃんと覚えてるよ」 その言葉を聞いた父は笑みを浮かべ「じゃあやってみようか」と告げて1歩後ろに下がった。それを確認した一樺はゆっくり息を吐きそっと詠唱を始めた。『風の精霊よ今ここに。我の身体を導きたまえーノーレーラ!ー』一樺が詠唱を終えれば周りにやわらかい風が吹き一樺の身体をふわりと浮かばせ一樺を目的の店へと運んだ。



数秒後、一樺は目的の店【noir fantasia《ノワールファンタジア》】の前に降り立った。

「ここが……noir fantasia……」

「おっ一樺。ちゃんと店の前にいて良かったよ。移動魔法は完璧に出来たね」と父の声に一樺は振り向き笑みを浮かべ「当然でしょ!パパとママの娘だもん!」と告げて店内へ入った。


noir fantasia……そこは魔法学校に入る人にしか現れないという少し不思議なお店。制服にカバン、ホウキといった道具から必要な教科書までなんでも揃うお店。それがnoir fantasia。


「あらっ?皐月さんじゃない」

「やぁ久しぶりだねアンナ。今日は娘の道具を取りに来たんだ」 父は店主である女性に話しかければ水色の髪をふわりと靡かせ一樺の前へやって来た。その女性……アンナはにこりと柔らかい笑みを浮かべ「あら……貴女がマリア様に愛されたっていう子ね……私はアンナ。このお店の店主よ」と告げた。一樺はぺこりと頭を下げ「皐月一樺です。」と短く名乗った。父は笑みを浮かべ「じゃあアンナよろしく頼むよ」と告げて店の外へ出ていった。一樺は瞬きしながら「あ……あの一体何を……?」と問いかければアンナは軽く笑みを浮かべ「これから準備するのよ」と告げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る