静けさ

麗奈先輩と別れた歩夢は、帰寮していた。


1時間程、麗奈と共に居た為か、終礼直後とは違い、下校する生徒の姿もまばらだ。


遠くの空には沈んでゆく太陽が見える。


現在時刻を確認しようとズボンのポケットに手を入れる。


「あれ?」


しかし、求めていたものを掴む事はできなかった。


「スマホ忘れた…」


今日、学校に持って行ったのは間違いない。


麗奈と会った時に触った記憶は無い、という事は恐らく教室だろう。


今日くらい別に必要ない、とも考えたが、彼も現代の若者だ。

取りに戻る事を選択した。


△ △ △


教室に戻った歩夢は、真っ先に自分の机へと向かった。


「良かった、あった」


スマホは机の引き出しに放置されていた。


電源を入れると、ロック画面と共に時計が表れる。


現在時刻17:15分。麗奈と別れてから、もう少しで1時間が経とうとしていた。


教室の窓から差し込む夕陽は、もうすぐ沈もうとしている。


目的を果たし、教室を出る。


廊下はとても静かで、薄暗く、いかにも何か出てきそうな雰囲気を醸し出していた。


これ以上、ここにいる必要は無い。


歩夢は足早に学校を後にした。

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