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「あれ?さっきまで両手に荷物を持っていたのに、今は持っていないよ。それに、手にはタブレットサイズのスマホ?がくっついている」
「本当だ」
あやのの言葉の真偽を確認するため、紫陽とすみれが画面越しに自分たちの母親だと思われる人間を観察する。すると、ある違和感が目についた。すみれの言葉に紫陽も頷くが、そうなると、隣で二人の様子をうかがっている幼馴染の言葉を肯定することになる。
「あやのさんは、『スマホ』って言っていたけど、実はうちの親、スマホに寄生されたくないから、スマホを解約したはずだよね?私のスマホも危うく解約されそうになって、さすがにそれは嫌だって反論した記憶があるよ」
「確かに、それはオレも知っている」
『ということは、本当に……』
「だから言っただろう?あれは、お前らを研究対象として誘拐しようとしている奴らが放った、スマホに寄生された憐れな犠牲者だ」
二人の言葉はハモりを見せた。その言葉にあやのは驚くことなく、冷静に彼らの正体を説明する。
「私たちはこれから、どうしたらいいのかな」
残酷な事実を述べた彼女に対し、兄に助言を求める妹。紫陽はあやのに問いかける。
「オレからも教えてくれ。もしかしたら、お前もオレ達を利用しようという魂胆かもしれないが、まだお前の方が信じられる気がする」
「ふん、我もお前たちと同じような、狙われている存在。どうしたらいいかと言われても、それはお前たち次第だ。とりあえず、今日のところはこのまま家でおとなしくしているのが正解だな」
ちらりとインターホン越しの画面を見ると、いまだに玄関から離れず、じっと一人の人間が座り込んでいる。もっと自分を家に入れろと主張してもいいはずなのに、最初に一声以外に言葉を発する様子は見られない。それが余計に不気味で、急いで画面の電源を落とした。
母親だと思っていた玄関前の人間を無視して、夕飯を適当に済ませ、順番に入浴を済ませると、三人は紫陽の部屋に集まった。すでに深夜に近い時刻となり、辺りはしんと静まり返っている。
「今日はお兄ちゃんの部屋で一緒に寝てもいいかな?なんだか、一人で寝るのは怖くて」
「我もこの部屋で寝るつもりだ。三人仲良く、同じ部屋で寝ることにしよう」
紫陽も三人で同じ部屋で寝ることに賛成だった。一人になるには、この状況は不安すぎる。軽く頷いて同意した。
「じゃあ、今日はもう遅いし、寝るか」
紫陽は自分のベッドに、二人は床に敷いた布団に横になる。紫陽が部屋の電気を消すと、部屋が一気に暗くなる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
兄弟二人は、疲れが一気に押し寄せ、すぐに寝息を立ててぐっすりと寝てしまった。あやのだけは、じっと天井の壁を見つめ、なかなか眠りにつくことができなかった。
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