第1話 ミス研定期夏合宿
「いろいろと調べてみたんだが…… 」
そう言ってミステリ研究会部長の長谷川卓(はせがわ すぐる)は、話を切りだした。
夏休みを控えた、夕刻の人気の無い学校。
ミステリ研究会部室。
中古の扇風機が部屋のなま暖かい空気をかくはんする。
テーブルに置かれた部長のノートパソコンの廻りを囲むように部員達が座り、この研究会のリーダーの説明を待っている。
一年の僕は、みんなの後ろからなんとか画面が見える位置に立っていた。
まあ新入部員だから先輩達を押しのけて座ることなんてできないのは当然だけど。
「徹君、そこじゃ見えないでしょ?
あたしの隣に来れば? 」
そう言って、僕と同じ新入部員の山寺綾(やまでら あや)が手招きをする。
彼女だけは特別で(女の子だからだろうけど)、部長の隣の特等席を与えられている。
綾は僕の幼なじみで、幼稚園からこの高校までずっと同じ学校で、しかもクラスが違ったことなんて小学校2年の時に一回あっただけだった。どういうわけか彼女とは縁があるようで、常に彼女と一緒にいるような気がする。
僕がミステリ研究会なんていう部に入ったのも、「新入部員があたしだけじゃ寂しいから」という、ただそれだけの理由、つまりは我が儘で無理矢理引き込まれたのだった。
ミステリ研究会は、研究会とは言っても僕を含めてたった6人しかいない小さなクラブだ。去年の夏ごろまではもっとたくさんの部員がいて、活動もにぎやかだったらしい。しかし、いつの間にやら部員達は辞めていき、今やこんなに寂れた部になったらしい。何か原因がなければこんな事にはならないのだろうけど、それが何だったかは入ったばかりの僕には見当もつかないでいた。
先輩達に聞いてみても、ただ笑うだけで話をはぐらかされてしまう。
どっちにしても、ぼくはミステリもミステリーも興味はないんだけれども……ね。
僕は彼女が開けてくれた、男一人が座れそうにない狭いスペースに座り込む。
お尻が椅子から半分はみ出した状態だから立ってたほうが楽かもしれない。でもそれを口にしたら、また綾にどやされそうだ。
彼女は僕に対しては遠慮など無くズケズケとモノを言うからな。黙って我慢するしかない。
綾の隣には部長がいて、その隣には二年生部員の深町理沙(ふかまち りさ)さんが腰掛けていた。
彼女も僕たちと同じく、この4月にこのミステリ研究会に入部して来た。
詳しくは知らないけど、よその高校から転入学してきたらしい。
長く真っ黒なストレートの髪が印象的な女性だった。
僕が思うに校内一番の美少女じゃないかと思う。
時折見せる憂いある表情が彼女を儚げなものに見せ、男心を擽らずにはいられないのだ。
放課後の校庭の隅のベンチに一人腰掛け、悲しげな顔で空を見上げていた彼女を見たとき、一瞬僕の時間が止まった様な気がした。息をのむほど美しいというのをリアルに感じた時だった。本当に綺麗だった。
噂では多くの男子生徒が彼女に告白し、玉砕しているという。
このミステリ研究会に入って良かったといえる点は、
彼女と出会え、ごく自然に会話できる機会をえたということだけだ。
(クラブでのミステリ討議っていうのがあるんだけど、ミステリ作品を一つ選び、そのミステリの トリックや犯人の意外性、伏線の張り方の優劣なんかをいろいろ議論するんだけど、意味不明なキーワードが飛び交うだけで、僕にとってはただの拷問でしかないんだよね。それに僕は本を読むとすぐに目がショボショボしてきてしまうから、何冊もミステリ小説を読むなんて不可能なんだ。)
こんな女性とつき合えたなら、毎日が楽しい、死ねる、などと考えるのが普通だろう。
人によってはゲロでも食えるとまでいいかねない。
僕自身、彼女が恋人だったらいいのに、と想像してしまう。
しかし、それは儚い夢。
世の中とはなんと無慈悲なのだろう。
残念な事に、彼女はミステリ研究会部長の長谷川の彼女だということだ。
単なる噂であればいいのだが、どうも現実はそうはうまくいかないみたい。
「どうしたの? 徹君」
ぼんやりしていた僕に綾が話しかけてきた。
ポニーテールの幼なじみも忘れてたわけじゃないけど、深町先輩に負けないくらい男子生徒に人気がある。
小さい頃からずっと一緒だったせいか、彼女に対して異性として意識する感情を持ち得ないけど、彼女も客観的に見れば美少女という範疇に入るんだろうな、と思う。
それも抜群の……。
細身の長身で運動神経抜群、成績も優秀。
そして性格も明るい。
町を歩いていれば、すれ違う男達は必ず振り返るくらい人目を惹く少女だ。
よく声をかけられるし、男友達も結構多いようだ。
かといって同性の友達もそれ以上に多いのだから凄い。
男にチヤホヤされ、それを鼻にかけて同性に嫌われる子が多いけど、彼女にはそれは関係ないようで、うまくやっている。
ちょっと気が強いのが欠点だけど……。
いや、かなり欠点であると僕は思っている。
黙っていたら本当に人形みたいに綺麗なんだけどね。
しかし、深町理沙、山寺綾(外見)という校内1,2位を争う美少女が入部している事を考えると、このミステリ研究会ってところも凄いなあと思う。
何が彼女たちを引きつけたのか、これこそが最大のミステリーと言える。
ヲタが集まる陰気なクラブという僕の固定観念を吹き飛ばすようなものだ。(ミス研とは、殺人事件を題材に犯人の歪んだ動機や物理的心理的トリックについてネチネチ批判するのが趣旨だと思っていた。いや今でも思っている。)
少なくとも深町先輩に関しては、パソコンの前に座っている我がミステリ研究会の部長がいたからだといえるかな。
もしかしたら、綾だってそうだったりして……。だったらショックだけど。
「あ、いや何でもないよ」
僕は、慌てて答えた。
「そう? だったらいいんだけど……」
そういうと彼女は部長の方を見る。
「そろそろ始めていいかな? 全員揃っているわけでは無いけど、……まあ仕方ない」
部長は僕たちの会話が終わるのを待っていたかのように、話を再開した。
このミステリ研究会の主宰たる三年生の長谷川卓……。
やや長めの前髪が目にかかっている。銀縁の凝ったデザインの眼鏡をかけた彼は、ミステリ研究会なる、少しマニア向けの部の部長とは思えない容貌をしている。
……悔しいが、はっきり言って、外見だけでいうと女にモテるタイプだ。
身長は僕よりだいぶ高い。180cmを越えている。成績もかなり優秀らしいし、運動能力も長けているようだ。中学時代は様々な運動部を掛け持ちしてたと聞いてる。
成績優秀、スポーツ万能、理知的な容貌。
それだけでも完璧に近い人間と言える。ちなみに父親は会社経営をしていて、その社名もほとんどの人が知っているという会社だ。
つまり、……金持ちでもある。
漫画とかでしか存在しないような人物が現実に、しかもこの場にいるってことだ。
あと一人、このミステリ研究会には三年生の部員がいる。
長野という人なんだけど、ここに入部して以降、彼を見たのは数えるくらいしかない。もちろん話をしたことなんて無い。最初に挨拶をしたかもしれないが、覚えていない。
外見に関してだと、ゴツイ印象を持っている。
服を着ていてもその体が相当に鍛えられているのが分かる。色黒の肌、太い首、ごつごつした感じの腕や脚。ボディビルダーの鍛え方とはまた違う、野獣的な鍛え方?……そんな感覚を受けた。
それ以上に、彼の眼光は異常な程鋭く刺すようだったことを覚えている。初めて会った時、その瞳の奥をのぞき見て、ある種の悪寒が走ったのを覚えている。
長野先輩は、ミステリ研究会の部室に現れてもいつもほんの一瞬だけで、すぐどこかに消えてしまう。おそらく部長に話があるときにだけ来ているように思える。
……幽霊部員と呼ばれているのもその為だ。
彼がまともに部活動に参加している姿を見た人間はいるのかな?
冷房設備の無い狭い部室に大勢の人間が入っているため、夕暮れ時の涼しくなった時間帯とはいえ、蒸し蒸ししている。
部長はマウスをクリックし、画面を表示させた────。
スキャナで読み込んだらしい新聞記事の切り抜きが画面に映し出される。
凶悪殺人鬼、誘拐殺人、警察は翻弄、など刺激的な見出しとともに殺人事件の記事が張り出される。
内容を見てみると、陰惨な事件の詳細が書き込まれている。
怨恨とか金目当てといった事件ではなく、連続少女誘拐殺人事件や、連続バラバラ死体遺棄事件といった、かなり陰惨でどちらかというと快楽殺人といったジャンルに入るような内容だった。
スキャナ画像は結構汚くなっているので、新しい事件ではないのだろう。今は猟奇的事件が増えたとか言うが、昔も変わらずこういった事件が起こっていたということを認識する。────人は変わらないということだろうか。
「これは昭和50〜60年代に起きた事件の記事を読み込んで、必要な部分を張り合わせたものだ」
部長はそう言って、みんなを見回す。
「さて、この記事を見て何か気付いたことはあるかい? 」
「そうやね、通り魔とか連続殺人の記事ばっかやから、未解決の殺人事件を集めたんちゃうの? 」
二年生部員の村野良子(むらの りょうこ)が応える。
彼女は、聞いた話によると中学3年生の時に親の仕事の都合で大阪からこちらに転校し
もう2年以上経っているが、未だに関西弁が抜けないらしい。やめる気が無いのかもしれない。
関西弁に彼女なりのポリシーを持っているのだろうか。
小太りでボサボサ頭の彼女は、どういう訳かいつもハンディカメラで撮影をしている。
今日もその例に漏れず、喋りながらもカメラを回し続けている。
みんなは慣れているのか、不躾にカメラを向けたりすることに対して特に注意する者はいない。
僕個人としては、ぶしつけにカメラを向けられるのは好きではない。
でもそんなこと言ったら、彼女の毒舌の嵐を浴びて悲惨な目に遭うのは間違いない。
そんなことで嫌な思いをするのは嫌だし、女性と話すのは苦手な僕としては黙っているしかないのだ。
もっとも、小太りであまりファッションとやらに興味のない風体の彼女に女というものを意識することはないだけれど。
まん丸の牛乳瓶の底みたいな眼鏡を止めてコンタクトにし、せめて髪くらいきちんとしておけば女性だと分かるだろうけど、今の状態ではちょっと中性的な、しかも親父にしか見えない……。
カメラなんか回す暇があるなら、少しはオシャレとかに気を付けたらどうなのかって言いたくなる。
本当に外見に関しては頓着していない。
まあ、深町先輩や綾がいるこの部で、並の顔の子がどんなにがんばったとしても色あせて見えるから馬鹿馬鹿しくてそういった努力を放棄したのかもしれない。
それが事実なら可哀想な気もする。
「うん、そうだな。少し編集の仕方が悪かったかもしれない。殺人事件の記事の隣にある小さな記事に注目して欲しかったんだ」
よく見ると、大見出しの後に長々と書かれている凶悪殺人の記事に隠れるように、小さな記事が書かれてあった。
それらは飲酒運転で死亡した事故とか、ひき逃げされた主婦が死亡した記事、海釣りにいった男が行方不明でいまだ発見されずといったような記事ばかりだった。
ミステリ研究会が話題にするには、あまりに地味な事故ばかりだ。
部員達は部長の意図することの意味がさっぱり分からず、互いに顔を見合わすだけだった。
「山寺君は、この記事を見てどう思う? 」
突然、部長に問いかけられた少女は戸惑いの表情を浮かべた。
綾は、少し考え込むようにうつむいた。
そんな彼女をみつめながら、長谷川部長は答えを待っている。
「よくわからないですが、この記事に載っている人たちの間に何か関連があるんでしょうか?
部長がわざわざ収集するくらいの事故ですから、これらの事故が何か大きな問題に繋がっているとか」
「その通り。さすが山寺君だね。この僅かな情報からよくたどり着いたね」
端から見てもそりゃ言い過ぎだろう? というくらいの口調で部長は彼女を持ち上げた。
さらに意図しているかどうかは分からないけど、それだけ自分は凄いのだと自慢しているようにさえ思えたのは僕のひがみなのかな?
「この次のページを見てくれ」
そう言ってマウスをクリックすると、今度はワープロで作られた表が現れた。
被害者名、事件の発生場所、日時、そして被害者の住所。
それを見て、みんなが部長の意図に気付いた。
部員たちの間から微かにざわめきが起こる。
「そう、みんなも分かったと思う。私が集めた事件のデータ。—————被害者の住所を見るとわかると思うが、全ての人が愛媛県○○郡紀黒町に居住していたんだ。
これは偶然の一致と言えるのだろうか……」
「いや、過去の事故とかを拾い出したら、こういった事もあるんやないの」
否定的意見を述べた村野先輩を、部長は頷きながら見つめ返した。
目があった彼女は、何故か照れくさそうな顔をする。
「そう、その通り。確かに意図的にデータを遡れば、同じ町出身者ばかりの事故データは 集められるよね。……だが」
そう言って再びマウスをクリックする。
画面に小さな島の画像が映し出された。
「これがなんだか解るかい? 」
「なんや小さな島やなあ……」
どういうわけか妙にわざとらしく、驚いた口調で村野先輩が声を上げる。
「これは、その事故の被害者達の出身地である島だ」
再び画面が切り替わる。
モノクロの画像に切り替わり、何か研究施設らしき映像になる。
軍服を着た数人の兵士らしき人物がいる。
また画面が切り替わった。今度は、施設の規模が大きくなり、写真もカラーになっている。
「島にある施設の経緯がこの画像だ。戦前に軍の施設がこの島に建設され、機密を守るために住民達は島を追い出された。そして戦後、ある製薬会社がこの施設の払い下げを受け、研究施設として使い続けた。近年、この会社も島から撤退して、今では完全な無人島だ」
「あ! そうか」
綾が大きな瞳を輝かせ、何かに気付いたように声を上げた。
「山寺君、何かに気付いたのかい? 」
「たぶん、たぶんなんですけど、この島には第二次大戦以前から、住民は住んでいなかったんですよね。すると、部長が見つけた新聞記事の人たちは、その後この島に移り住んだ人、つまり、製薬会社の社員だということなんじゃないかと」
「そう、その通りだ。昭和50年代にこの製薬会社は島から撤退している。事故死した人たちは、会社が島から撤退して数年の間に死亡している。
それも複数人がだ!
これは明らかに普通ではない出来事が起こっているんじゃないのか? 」
部員達の間に再びざわめきが起きた。
「死んだ人々は、製薬会社の研究員とかその家族や。つまり、これらは事故やなく、何らかの人為的なものが作用してるっていうん? 」
「そうだ。あくまで推測でしかないが、何かが彼らを死に追いやったとしか考えられない。……そこで」
部長は一呼吸をおいて、部員達を見回す。
「今回、我がミステリ研究会の夏期合宿の目的はこれだ。この謎の連続死亡事件の根底には軍が、そして製薬会社が絡んでいると思われる。その謎にできる限り接近するため、我々はこの紀黒島に赴くことにする」
旧日本軍が人目を避けるように無人島に研究施設を建造し、かつて何かを研究していた。そして戦後、軍は解体されたが、今度は製薬会社がその施設を引き継いでいたという事実。営利企業であるその製薬会社がどうして交通の便の劣悪な無人島でそんな施設を維持する必要があるのか。
そしてある時期に製薬会社は島を撤退した。その後、勤務していた人々の謎の死。
このミステリ的な謎に僕は興味を持った。この一連の流れには何か秘密があるに違いない。
ふと綾を見ると、彼女も明らかに興味を示しているようだ。
昔からこういったミステリーネタには目がなかったな。
「なんやあ、思い出したわ! この島って去年も行った所やんか。部長もどうかしたんとちゃうん?……あんな事があったのに今年も行くや言うの? そんなん先生が許してくれると思えへんわ! 」
水を差すように村野先輩が口を挟んだ。喋りながらも、相変わらずビデオを回している。
一瞬、部長の顔が引きつったように思えたが、直ぐに笑顔に戻った。
しかしその口元は僅かに歪んでいるように見える。
「去年の調査では何も得られたものが無かった。しかし、今年は今までに資料収集もしてきた。今年こそは何かを得られるだろうと私は考えている」
「でも去年のあれは……」
「あれは単なる事故だろう! 」
村野先輩の言葉を遮るように、部長が怒鳴る。
弾かれたように、村野先輩は黙り込んだ。
部長の目は怒りに満ちて、普段の温厚な彼からは想像できない形相をしていた。
いきなりの出来事に部室内は静まりかえる……。
僕は二人が何の事を言っているのか理解できなかった。それは綾にとっても同じだろうし、深町先輩も二年生だけど入部したのは僕たちと同じだからピンと来ないのだろう。「去年の事とは何ですか? 」と聞きたいがそんな雰囲気では無かった。
「ご、ごめんなさい。ウチが悪かったわ」
いつもならすぐに反撃し、毒舌でやりこめてしまうはずの彼女が、怒られた子犬みたいにうつむき加減に部長を見る。
部長も僕たちが唖然とした顔で見ているのに気付き、
「すまない村野君。私も言い過ぎたよ。みんなを驚かせてしまったね。だが、去年のことはもう忘れてくれないか……。それから顧問の先生の事は私に任せておいてくれないか。みんなはこの夏の合宿の事だけ考えておけばいいから」
と、笑顔を見せた。
しかし笑顔はどこか力無かった。
僕は、去年の事というのが何なのか気にはなったが、あえて何も言わなかった。そんなことを口にできる雰囲気ではなかったからだ。
綾の方を見ると、彼女も場の雰囲気が読めたのか、大人しくしていた。
「さあ、今日はこれまでだ。合宿の予定については、後日伝える。準備関係については、新入部員のみんなにお願いすることになると思うから」
それを合図に部員達は部室を去り始める。
去り際にも村野先輩はビデオを回し続けていた。
一体、何が彼女をそうさせるのか? これも1つのミステリだな。
いつの間にか、部屋には僕と綾だけが残されていた。
「それにしても、去年の事って何かしら? 」
「さあね。でも、さっきの部長の態度から想像すると、この部においてはタブー視されていることかもしれない。去年まではもっと部員も多かったって話だし、もしかするとその事故が原因かもしれないよ」
「……それもあるかもしれないかもね。まあ、それはさておき、準備で手伝って欲しいことがあったら言ってね。徹君だけだと頼りないから……」
綾にそう言われて、初めて気がついた。
そうだ、合宿の準備は新入生がやるんだった。そして、どう考えても僕達がやらなきゃいけない仕事だ……。
途端、げんなりしてきた。
「そうか、僕が段取りとかしないといけないんだよなあ」
「まあ何事も経験よ。がんばってね」
僕の肩を叩くと、綾は去っていった。
一人残された部室で、僕はぼんやりと合宿の準備を考えていた。何を買うとかそう言ったことを部長に聞いておかないといけないな。
そんなことを考えながら、今日が過ぎていくのだった。
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