第56話 ハルバードの達人
朝日が登りかけの早朝。
タイ・クォーン教会神殿敷地の、
「第三
五十人くらいの部隊が、最近の討伐での標準なのかな。
それより。そうか、
教会衛兵隊より、年齢層が高そうだね。
二十代のベテラン揃いかな。
揃いのハルバードや
サブ・ウエポンは、標準ソードかな。
フルフェイス
安全性よりも『視界』を優先とは、だいぶ『
猛は、地球でも
カウル形状はレーサーレプリカ・タイプで、真正面にはこちらの
ガチで魔獣に突っ込めば、シールド・バッシュ出来る。
現在は地上高10cmに設定してあるが、通常の戦闘機と同様に、
小さく小回りが効くので、戦闘機同士のドッグ・ファイトも、お手の物だ。
機会があれば、ワイバーン?とかの飛行魔獣にでも、シールド・バッシュしてみたいなぁ。
装着した『盾』は、こちらでも戦士なら気になるデザインの様で、チラチラ見られる。
中二病ぽく、
また、皆、浮かぶフロートバイク自体にも
(説明が面倒くさい時は、『勇者の
出かける時、ニーグさまはまだ、夢の中だった。
まぁ簡易COPもあるし、目覚めたら飛んで来るだろう。
「コレは、楽ですねぇ」
フロートバイクの左側に、サイドカーの距離で追随させている、
シートポッドに座って貰っているワードマンさんは、
『はい。私も飛べるとは言え、乗り物に乗っていた方が地上の移動は、楽ですし』
「なるほど、
『お名前は?』
ワードマンさんとの話題が途切れた所で、隣で騎馬を
「えっ?あ、はい。ベルター・フォン・ゲルスタイトと、申します」
(貴族さんか)
(ローカル・ネットワーク情報によりますと、『下級貴族』に当たる様で)
(そうかー。腕とチャンスさえあれば、
(ゲルスタイト家の
お
(良いねぇ)
『宜しく、ベルター。で今日は、どこで
「はい。ホイロード村の農耕地近くに、魔獣が目撃されたそうです」
『発見されたのは、いつかな?』
脳内で、ホイロード村を『
確かに村から、やや離れた雑木林の中に、赤い点がいくつかある。
魔獣は夜行性と聞くから、まだ寝ているのだろう。
「二日前だそうで......本当は昨日出動する予定でしたが......」
『そうかー、昨日の神殿の状況だと、
......農民が心配だね』
「はい......」ベルターも、浮かない顔をする。
(
(
魔獣が暴れている急報でも、足で教会に駆け込まなくてはなりません)
『うーん』
銀色ヘルメットのアゴ辺りに、右手親指を当てて考え込む。
『ベルター。こちらでは、緊急時の連絡方法には、どんな方法があるのかな?』
「一番確実で早いのは、
『通話したい二点に、それぞれ魔法が使える者が居ないといけない、か』
「はい......他には
『えーと。勇者とか、渡り人の技術とかは?
例えば魔力伝達させる線を、遠い二点で繋いで通話とか、それこそ
「『勇者の
中には『技術解放』して下さる勇者様も居られますが、
後の系譜に代替わりされますと、有料になってしまわれたり......」
『あー......『勇者の
だからそう言うと、それ以上踏み込んでは来ないのね......
どの世でも......『
「はい」
ワードマンさんが、寂しげに会話を引き継ぐ。
「だから、便利で豊かな世の中に、ならないのです。
本来は王室の権威主導で、経済活動に有効な遠方通話や安全な移動等の技術の、情報開示を指導すべきなのです。
が、四百年前の『魔王戦争』の影響が、政財界に現在も残ってまして......
地方貴族や財閥豪族達の実力と発言力も、無視は出来ないのです。
無論、王室の現在の権威や軍事力は確かに国一番なのですが......」
『あ、『魔王戦争』の切っ掛けが、周辺諸国へのヤーディン大国からの征服戦争で、
短期決戦のはずが長引いてしまい、増悪した『絶望と瘴気』が原因でしたっけ』
「はい。『魔王戦争』で開戦した王が戦死し、次王が『王の暴走を調整しよう』と
『貴族の多数決の意見で、お
『魔王戦争』を体験した者が存命中は、上手く調整されていたのですが......」
『『魔王戦争』を知らない世代になると......』
「貴族院の権利の都合良い『拡大解釈』の横行が、
『それで現在は『政治闘争』が得意な、
「『権力は
『『能ある鷹は爪を隠す』タイプの王侯貴族は『裏も表も』面倒ですねぇ』
「......『聖光剣の勇者』様なら、『裏も表も』......得意そうですが?」
『............』
『......まぁ、『
「そうですね......ヴォーグ神様が『守破離されるまで』
持ちこたえさせて頂けたら、助かります」
『
猛は、ちろりと空を見る。
バリバリ バリバリ バリバリ
少量の雲だけの、晴れている空の真上から突然!
猛にまっしぐらに
ブン
自然の流れて漆黒の八角・六尺棒を、天にブン投げる。
キカッ!
ドンッ!!
ブワーン!
「「「「うわあああ!」」」
凄まじい落雷の
「おぉ、お?」
「おう!アレも『聖光剣の勇者』様の、
「アレで、ファザンを追い詰められていたそうだぞ!」
頭上にうかぶ漆黒の八角・六尺棒が、また避雷針になってくれた。
(しかし、敵魔法使いも居ない様子だし、今の雷撃魔法は、どこから?)ヒソヒソ
(あんな強力な雷撃魔法は、初めて見たぞ)ヒソヒソ
(でも、さすがは『聖光剣の勇者』様!、片手間で御守りくださった)ヒソヒソ
(本当だな! なんでも、あのファザンも子供扱いだったそうだぞ!)ヒソヒソ
(オレも聞いたぞ! ロイヤル・ガードが邪魔しなかったら、
あの『ディープ・パープル騎士団』を捕縛出来そうだったんだろ)ヒソヒソ
『ワードマンさん。教会に
「はい。教会の宝物殿に、大切に......」
『しばらく、そのままにしておきましょうかねー』
急に、空の......大気がゆらぎ始めた様な?
「そうですねぇ。数十年になるのか、数百年になるのか......」
ぱぁー!
あっという間に雲が飛び去り、雲ひとつ無い快晴と変わる。
「む?」
急に、ワードマンさんが空を見る。
「......『ずるいぞ!』だそうで」
猛は、じろりと空を
『レシピも、回収しましょうか......』
「『わ、わかった!もう口を挟まぬ!』だそうです」
『やれやれ......では、また『お茶会』を致しましょう』
「......はぁ、『言うたな!約束じゃぞ!絶対じゃぞ!』......申し訳、ありません」
猛の目は、スっと細くなる。
『二言はありません』
ピリっとした、気配が出る。
「......『よ、よし!』だそうです。あ、切断されました。はぁ」
ワードマンさんは苦笑しながら、ガックリと疲れる。
「やれやれ、神をビビらせるとは......」
『任せるならば、任せるべきかと』
少し硬い声が、出てしまう。
「......ごもっとも」
ワードマンさんが、また、上司のポカを
ふぅ
『進軍しましょうか』
猛も、苦笑を浮かべた口調になる。
「「「「「?」」」」」
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
「へぇー、ハルバードも良いねぇ」
猛は小休息に入ると、ハルバードの基本型を教えて
「では、
ブン ブンブン ブォン
先程話しかけたベルターは分隊長だったらしくて、ハルバードの扱い方は天下一品だった。
(いい腕だ)
「まぁ、こんな感じです」
ベルターは、振り終わったハルバードを渡してくる。
受け取ったハルバードは、バランス良く手に馴染む。
『どれ』
フォン フッ シュシュン フシュン
借り物のハルバードは、猛の手の中で、美しく舞い踊る。
(
ヒュ ボヒュ シュン ボシュン
ざわざわ
(おいおい、ハルバードの動きじゃ無いぞ!)ヒソヒソ
(
(ゆったりで......早い!)ヒソヒソ
(なるほど!石付の使い方も、こうすれば良いのか!)ヒソヒソ
(いわゆる『スキル勇者】様、じゃ無いぞぉ......)ヒソヒソ
(ファザンを打ちのめされるだけ、あるよな......)ヒソヒソ
猛はハルバードの
(どれ)
シュオン くるくる
シュオン くるくる
(よし)
この
もしくは
((((!))))
さすがにベルターと同じ、分隊長達は、『聖光剣の勇者』様が『いま、何をした』か、理解したようだ。
腕ある
シュン
ふー
演武終えた猛は、美しく構え、ゆったりと一礼する。
おおおお!!!
ウラー!!!
皆、歓喜の雄叫びを、上げてしまう。
『ありがとう。ハルバード、良いねぇ』
ベルターにハルバードを返し、礼を言う。
「使って頂き、有難うございます!光栄です!」
ベルターも、感動の笑顔でいっぱいだ。
彼の理想の演武が、そこにあった。
ハルバードの、さらなる可能性を見た。
(よぉし!『聖光剣の勇者』様の動きの残像が消えない内に、振りまくるぞ!絶対身に付けてやる!)
ほど近い未来、ハルバード・
普通の貴族であったゲルスタイト家の系譜は、以後『武門の家系』として、代々名を
「さぁさぁ!休息は終わりだ!出るぞ!」
本日の指揮官の、バクスターが発令する。
「「「「「は!」」」」」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます