第48話 馬子にも衣装




ユグドラシル・エナジーは、『あばうま』だ。


ビッグ・バンを始め、無限の星々を、荒々あらあらしくしているのだから。


矮小わいしょう我々われわれ人間が使うのは、『太陽で、タバコの火を付ける』様なモノだ。


しぼってもしぼっても、パワー微調整びちょうせいが、むつかしい。


開祖も初期には暴走させてしまい、海底クレーターとか作ってしまうし。


ある時、制御ベルトに『相乗相克そうじょうそうこく』機能を、落とし込めたのは幸いだった。


ようは、『じゃんけん』だったのだ。


制御さえ出来たならば、強大なエネルギーを必要とする、次元突破やレプリケーションなども、可能になる。


『暴れ馬』なので、見習い勇者超人には、ユグドラシル・エナジーの制御補助装着せいぎょほじょそうちを、十重二十重とえはたえと付ける。


暴れ狂いがちな光子エナジーを、脳内の火器管制アプリと意識での制御を慣熟かんじゅくしてきたら、

一つずつ補助装置をはずしてゆく。


外した方が、『の様に』強大なパワーを、発揮はっきできるから。


まぁ、開祖や俺は『ユグドラシルの向こう』を、何とか通過出来たから......まぁ、今はいい。


なるべく制御補助装着せいぎょほじょそうちを小型化したが、地球の軍の特殊部隊くらいには、装備がゴテゴテしてしまう。


まぁ、コチラでは元々持ち歩く装備がかなり多いので、むしろ装備が簡略化して、見た目はスッキリするだろう。


しかしフルプレート・アーマーや馬鎧バードは、人馬共に重すぎる。


防御フィールド力場で、普通の布服ぬのふくぽくても、金属以上の防衛力を持たせられるし。


衣装の形状で、いさましさも雄々おおしさも表現出来る。


ここに居る衛兵隊全員も、シルバーコード・リンク出来たので、

彼らの『イケてる騎兵隊のイメージ』を検索してみた。


すると、ファリス精霊王の衣装のイメージが強かった。


愛馬に騎乗した姿も、出てきた。


タイ・クォーン教会建物群に、精霊をまつる棟もある。

そのロビー正面に、ファリス精霊王が乗馬服で、

愛馬シフィールに颯爽さっそうと騎乗した構図の、巨大肖像画がある。


凛々りりしくて、騎士としてあこがれる。


なるほど。


(ファリス精霊王さま)


(はい、なんでしょう?)


(衛兵隊の制服を『見習い勇者』仕様に新調しようと思いますが、

ファリス精霊王さまの御衣装おめしもののデザインを、参考にパクるさせて頂いて宜しいですか?)


(おおお♪ ぜひぜひ! そして仕立て上がりましたら、一着下さい♪)


(えーと? ......何か御希望とかは?)


(先ずは、新調制服を見せて下さい!)むふー!


何故なぜだろう? 精霊王の鼻息が荒い。


(う、うけたまわりました(汗))



とにかく、ファリス精霊王と、騎乗する愛馬との立体映像を、

レプリケーション・モデリング・アプリに浮かべる。


360度、クルクル回す。


ふむ、フロック・ジャケットの、中世貴族の乗馬服か。


フロック・ジャケットは、騎乗しやすいように前身頃まえみごろ鳩尾みぞおちまで開いて居るから、変身ベルトを装着させやすい。


腰周こしまわりりは、長さを調整出来る燕尾えんびになっているから、

野宿の時に、地べたや切り株や岩などに座る時、尻皮しりかわとしてけるから良いだろう。


教会関係者として、白を基調色にするが、

『浄化』『防汚』『防水』魔法を組み込んで居るから、決して『濡れない・汚れない』


アスコット・タイと、左右上腕と、背中の第七頚椎だいななけいついあたりに、タイ・クォーン教会の龍神紋章りゅうじんもんしょうを、金糸で入れる。


『見習い勇者』とは言え、インベントリ無限収納は必須だ。

うーん。家財道具一式入れられても困るなぁ。

とりあえず、現装備容量の二倍位にして置こう。

レベルが上がれば、容量も増える設定で良いかな。


ヘルメットは、普段はかぶらない。

頭には、転送プレートのユニセックス・カチューシャを付ける。

必要な瞬間に、フェイスシールドとヘルメットが、無限収納から自動に装着される方式にした。

デコ出しを好まなければ、細いティアラを付けてもらう。


ジャケットの袖口から、白手袋が見えている。


が、『見習い勇者』の段階では、強化フィールドだけでは、上手く『身体強化』と『意識の同調リンク』出来ない。

なので、手先からの全身白タイツ仕様の『パワー・アーマー強化筋肉』になっていて、装着者の全身を隅々までおおう。


パワー・アーマー強化筋肉』や、衣装いしょうは、魔素や魔力でした強化繊維パワー・ファイバーだ。

そこらの剣では切り裂け無い。


もちろん衝撃吸収しょうげききゅうしゅう......どころか、ジェダイのごとく剣撃けんげきかえし、敵にかえす。


手術手袋の様に全身の皮膚に密着するが、シルクの肌触りである。


体内の『精霊ナノマシン』と連動する『パワー・アーマー強化筋肉』なので、

『装着者の装着感覚』と連動して『密着度』を調整できるので、圧迫感あっぱかんれやかゆなど不快感ふかいかんは一切出ない。


手指や手首の細かい動きや、全身の動きを妨げない。


もちろんリンゴは軽くジュースにしぼれるし、

正拳突せいけんつきやりで、大岩も軽くくだくことも出来る。


白手袋の甲や、ジャケットの肘や、ブーツのすねや足のにも、500円玉ほどの転送プレートの丸チップがある。


ヘルメットと同様に戦闘寸前せんとうすんぜんに、それぞれ、『ガントレット篭手』『グリーヴすね当て』『サバトン鉄靴』が、装着される。


無限収納に慣熟かんじゅくすると『右手のガントレット篭手だけ装着して、相手を殴る』とか、出来る様になる。


身体強化のパワーで、ガントレット篭手を叩きつけたら......


見習い勇者とは言え、無敵だ。


頭部周囲とうぶしゅういに常に、ナノ・ドローンを飛ばそう。


360度視野警戒しやけいかいと、運用うんようレコーダーになるし。


念話通信も可能になる。


全員に同じ、簡略化した『共通作戦状況図COP』を見れる様にする。


軍事行動にはむしろ、コチラCOPが重要だ。


無言で、テキパキと作戦行動を取れる、迅速じんそくな一軍となるだろう。


全身に防御シールドを、常に掛けて居る。

シールド内は、外気温に準じて一定の気温に保たれる。


シールドが強すぎて五感ごかんにぶくなるのは、気配察知けはいさっちが遅れるので、

本人が『暑い』『寒い』を感じれば、気温は微調整びちょうせいされる。


そして常に『浄化』魔法が掛かる。


くさい』遠征隊は、いなくなる。




次は騎馬だ。


身体全体にフィットする透明とうめいな『パワー・アーマー強化筋肉』でおおう。


外観は、まったく変わらない。


シャフロン面甲は、形状は変えずに軽くする。


馬も『共通作戦状況図COP』で、現在位置を確認出来る。


馬にも精霊ナノマシンを導入するので、『パワー・アーマー強化筋肉』と連動させる。


馬の五感と連動させ、汗を吸収速乾し、体温調整もする。


教会紋章入りのキャパリソン(馬用コート)は付けるが、馬鎧バードが不要となるので、動きやすいと思う。


シルクの肌触りだから、『パワー・アーマー強化筋肉』の着心地は良いと思う。


くつわから、経口補水液スポーツドリンクや牧草ジェルなどの、栄養補助ジェルさせる。


爆走しながら水分やミネラルや、馬用うまよう行動食こうどうしょくを補給出来る。


最たる機能は、一日中全力で走ったとしても『身体強化』をするから、馬の脚も身体も守られる。


馬も『身体強化』に慣熟かんじゅく出来たら、音速突破で駆け抜けるる事が、出来るかもしれない。


ひずめにも、転送プレート蹄鉄ていてつを装着。


ハンマーの頭の様な、強化パーツひずめが各種、転送換装てんそうかんそう出来る。


ブルドーザー?の様な、土木や農耕パーツもあるようだ。


強化前脚まえあしみつけや、後ろ脚蹴りは、そこらの魔獣も一撃必殺だ。



そして、馬の視線より背が低い、馬丁ばていドロイドを一馬ごとに付ける。


馬の主が手を離せない時、すかさず世話をして、戦に備える。


馬の思考も五感も、精霊ナノマシンにより、正確に読み取れる。


ので、馬の希望通りに世話を出来る。


そして通常、ファザンと愛馬カテドラルの様な阿吽の呼吸な意思疎通は、馬の才能度合い次第だ。


が、騎士と馬は精霊ナノマシンにより、普通の軍馬でも、より正確に意志の疎通が出来る。


人馬一体の最強騎兵たちの『騎馬軍団』の誕生だ。


理論上、馬丁ドロイドに騎乗させランス等を持たせて、遠隔指示で馬単独で攻撃『など』も、可能ではある。


要人警護ようじんけいごの状況によっては、御者ぎょしゃ無しで、要人だけ馬車に放り込んで、馬だけで馬車をあやつらせる事も出来るだろう。


無論『馬からの好悪』もバレてしまうので、非戦闘期間は、主人は恋人や家族の様に、キチンと馬の世話しなければならない。


衛兵隊が騎乗して、一体感あるデザインにする。




○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○




「では、勇者への修行を始めよう。変身!」


キューン


衛兵隊全員が、聖なる青白い光に包まれる。



光が、収まって行くと......



衛兵隊員それぞれの体格に合わせた、白を基調とした、

ファリス精霊王と同様のフロック・ジャケット・タイプの、乗馬服に包まれる。


各人の燕尾の長さ?も、丁度良い。


腹には丁度、真円の金色バックルが収まる。



全員、雄々おおしさといさましさにあふれている。。



おおおおおおおお!!!



「この衣装は......」

「ファリス精霊王さまみたい♪」

「そうだ!」

「それそれ!」


互いのアスコット・タイの、金糸の紋章をよく見る。


「それを、教会の白基調にされるなんて♪」

素敵すてき!」


「ねぇ!馬達も見て!」


うわぁー!


白地に金糸の教会紋章きょうかいもんしょう入りのキャパリソン(馬用コート)は、

シンプルがゆえうま神々こうごうしくも雄々おおしくせる。


「ファリス精霊王さまの愛馬、『シフィール』の、衣装みたい♪」



「ハーパン♪ カッコイイじゃない♪」

ブルル♪

主のリートにハーパンと呼ばれた馬は、ほこらしげに顔をあげる。




タムとカムランは、互いをマジマジと見る。

着たことがない、シンプルだが上質な衣装だ。


「「馬子まごにも衣装いしょう?」」


かぶった!


わっはっはっは!


「イけるな!」

「あぁ!」




初々ういういしいのう......」


めいめいに盛り上がる、まだまだおさない衛兵隊たちをながめて、龍神ニーグは微笑ましく思う。


「そうです。若いのです。ですので、これから死亡者は、一切いっさい出しません」


猛は、キッパリつぶやく。


「そうであろうな。あのお仕着せで、皆お主の『手の内』で、守られる」


「分かりますか」


「あぁ。『龍』は強者に敏感じゃ......いきなり五十五名の『絶対強者』が生まれるとはの」


「はい。まぁ、まだまだ『見習い生まれたてのヒナ』ですので、今からの修行次第ですよ。いずれ私の『手の内』から、飛び立ちます」


「そうか。どこかの山奥にこもるかの?」


「いえ、今からこの場から、修行は始まります」


「ほう」


「『絶対強者』の修行は『日常』の中で行われなければ、意味がありません」


「ふふっ、面白い。本当に我が夫は『やることなすこと』面白くて、目が離せん」


「おやおや......では、始めます」


前に出る。


傾聴けいちょう!」


声をる。


全員が瞬時しゅんじに整列し......馬も一緒に、猛に傾聴する。


「では、これより、『見習い勇者』の修行を始める......」


皆、緊張の面持ちになる。


「今から......ぐっすり、てもらう!」


がくっ


いっせいに、全員のかたちる。


うまさえも。







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