第53話 席替え

馬車から降りる際、危険はないか?

不審者はいないか?と確認してから降りる。

手を差し出しエリザお嬢様とついでにシーラお姉様もエスコートし馬車から降りてもらう。


「今日はいないわね。」

「そうみたいですね。」

「あんなやつがエリザの婚約者なんてねー。かわい「「シーラ。(姉さん。)」」はいはい、ごめんなさいね。」

「誰が聞いているかわからないところで言っちゃ駄目だよ。」

「リヨン……そういうことではありませんよ。」

「盗聴防止の結界を張る?」

「ラハートフ……」


昨日と同じ時間帯に来たが、あんなやつ……ホルスディン殿下が校門前にいなかった。


「はぁ……行きましょう。」

「はい。」

「「はーい。」」


エリザお嬢様の歩く後ろ姿を見ていたら、あっという間に教室に到着した。


教室に入ると一位の席に座るあんなや……ホルスディン殿下と隣に座るモモティルナ嬢とその周りを囲う数人の男子達、まばらに座るクラスメイト達がいた。


「おはよっす。」

「おはようございます」

「「「おはよう。」」」

「おはようございます。」

「エンダース様、エリザ様、おはようございます!」


入口の近く席に座っていた第十九位ケトマセー商会会長の長女、カシュエ嬢が挨拶してきた。

それで俺達に気がつき、モモティルナ嬢が笑顔で元気に挨拶してきた。


「あぁ、おはよう。」

「モモティルナさん、おはようございます。ホルスディン様、皆様もおはようございます。」

「……おはよう。」

「「「……」」」


モモティルナ嬢の愛称呼びもホルスディン殿下の無愛想な挨拶も挨拶されたのに返さない男どももぶん殴りたい。


エリザお嬢様の挨拶だぞ?

喜んで返せよっ!


「エンダース様、そこの席が空いてますよ。」

「……そうか。」


モモティルナ嬢は俺らマジルド義姉弟には挨拶しないでエンダース様に席を薦める。

エンダース様がちらっとこっちを見る。


「……エリザ、あっちの席にしよう。」

「そうね。纏まって座れるのはあそこしかないものね。そうしましょう。」


シーラお姉様が窓側の席を指して、エリザお嬢様が同意し窓側の席に向かう。

俺とリヨンお兄様も窓側の席に向かう。


「すまないな、あっちの席に座る。」

「えっ?」


エンダース様がついてくる。

モモティルナ嬢が断られてめっちゃ驚いている。

囲んでいる男子達がエンダース様を睨んでいる。


「皆様、おはようございます!」

「おはよう。」

「アリティーナさん、スタルード様、おはようございます。」

「おはようございます。」

「「「おはよう。」」」


第四位ガルディーナ男爵長女、アリティーナ嬢と第五位ベスタット侯爵の次男で近衛騎士団長の子、スタルード様に挨拶され挨拶を返した。


「エアルリーザ様の近くの席、できれば隣に座っても、いいでしょうか?」「俺も近くに座っていいだろうか?」

「いいわよね?」

「エリザお嬢様に良いのなら、構いません。」

「いいんじゃない?」

「いいよ。」

「いいぞ。」

「ありがとうございます!」

「ありがとう。」


前窓側から

シーラお姉様第十八位エリザお嬢様第三位アリティーナ嬢第四位ミサイト第七位モモティルナ第二位ホルスディン第一位


第十七位エンダース様第十二位タダシュ様第十一位、空席、マリダット第九位ナルストラ第十五位


リヨンお兄様第十六位スタルード様第五位、空席、空席、空席、空席


ウィンドル様第八位、アソトー第六位、空席、空席、ルシュカ嬢第十位イーサ嬢第十四位


ナトナ嬢第十三位、空席、空席、空席、クロッシュ嬢第二十位カシュエ嬢第十九位


斜め後ろ正解だったな……

横顔を自然と見れる!

最高かよっ!

あぁ、いつ見ても綺麗だなぁ。


「エリザ、あれ、いいの?」

「……」

「あれとは何ですか?」

「あれよ、あれ。」


シーラお姉様がモモティルナ達、男に囲まれて楽しそうに笑っているモモティルナを指差した。


「モモティルナさん?ですか?」

「そそ、あれがエリザの婚約者と」

「エアルリーザ様、婚約者がいるんですかっ?」

「何で知らないのよ。記念パーティーの時に発表があったでしょ。」

「あぁ、記念パーティーでですか。私、参加しなかったんですよね。エアルリーザ様の婚約相手はどなたなのですか?」

「参加してないならわからないわね。殿下よ。」

「ホルスディン殿下ですかっ!」

「ちょ、声が大きいわよ!」

「あ。」


アリティーナ嬢の声にホルスディン殿下達がアリティーナ嬢を見る。


「な、何でもないです。すみません。」


アリティーナ嬢が立って彼らにぺこぺこと頭を下げる。


「確かに、あれはいけないと思います。モモティルナさんは殿下が婚約者がいると知らないんでしょうか?いいえ、殿下もエアルリーザ様という婚約者がいるのにあれはないと思います。」

「そうよね。昨日なんかね。ーー」

「それは、ないですっ!ーー!」


「リョーレン、小さいのにどうやってあんな叩き潰す力を出したんだ?」

「小さいは余計だよ。教えてあげない。」

「なっ!す、すまん。強くなりたいんだ。教えてくれ。」

「うーん。エンダースに勝ったら教えてあげる。」

「はぁ?」

「エンダース!俺と勝負しろ!」

「はぁ?リョーレン、俺を巻き込むな!」

「強くなっているか確かめたいでしょ?」

「リョーレン殿、某もエンダース殿に勝ったら教えてもらえるでござるか?」

「いいよー。」

「おまっ!」

「エンダース殿、某とも勝負してくれるでござるか?」

「先は俺だ。」

「いいでござる。某は後でいいでござる。」

「いや、俺は」

「放課後、勝負だ。」

「わかったでござる。」


あれ?エリザお嬢様を眺めていたら、女子は女子同士で、男子は男子同士で仲良く会話している。


出遅れた……

どっちに混ざるべきだ?

いや混ざる必要ないな。


引き続きエリザお嬢様を眺めていよう。

そうしよう。

あぁ、綺麗だ、好きだ。


エンダース様に声をかけられるまで眺めていた。


ーーーーー

あとがき

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