第42話 鑑定後

後頭部に良い枕の感触と良い匂いを感じる。

枕の良い感触を感じたく頭を動かし、さらに柔らかい枕を揉むと額にばしっと衝撃が走る。


「いたっ!」


跳ね起きる。


周りを見ると教会内、エヴィンカル様が苦笑、アウルーレ様とトリーリア様が微笑み、エアルリーザが真っ赤な顔、メリルさんが睨みつけている。


うん……

わかった……。


「申し訳ありませんでしたああああああ。」


謝罪の気持ちを最上限、いや限界突破した気持ちを込めた渾身の、土下座をエアルリーザ様にする。

床にひびが入った。


「も、問題なさそうねっ!き、気にしていないから、頭を上げなさい!」

「あ、ありがとうございます。え、えーっと、どうして、私は寝ていたのですか?」

「ラハートフが魔力量の鑑定の水晶に触れたら爆発して、」

「水晶がっ!爆発っ!」

「えぇ、そして吹き飛んで頭をうって気絶したのよ。」

「そ、そうだったんですね。そ、その水晶って、ど、どのくらい価値が、あるんですか?」

「お父様?」

「うむ……。」

「す、すぐに言葉にできないくらい高価な物なんですかっ?」

「……予備があると思いますが、ダンジョン産のもので、未だ人には生産できないものなのですよ。」


魔力量の鑑定の水晶だったと思わしきものが集められた容器を持ってきて司教様が言った。


「そ、それが、お、私が壊してしまった鑑定の水晶、ですか?」

「はい……。まさか、量れないほどの魔力をお持ちだとは思いませんでした……それに爆発して壊れるとは思いませんでした。だから、公爵様は他の皆様を退出させたのですね……。」

「……いや、私もラハートフが水晶を壊すとは思っていなかった。私はラハートフが全属性だと思っていたから、な……。」

「そ、そうだったんですね。量れない程の魔力量で、適性属性がないとは、可哀想に……。」

「「「……」」」


えええ?

また悲痛な表情になってるよ……


「あ、あの、適性属性がないと何か問題があるんですか?」

「適性がなければ中級以上の魔法を覚えられません。」

「……」

「ラハートフ君は適性属性がありませんので、初級の魔法しか使えません。」

「……」

「可哀想に……」


ショックで沈黙しているわけじゃないんだ。


あれだ。

ある日の魔法修練場で魔法使いの領兵さん達との会話を思い出していた。


「ラハートフ様の魔法はプチとか生活魔法って言ってますけど、上級以上の威力がありますよね。」

「そうなんですか?」

「はい。余裕で王宮魔導師の実技試験を通ってしまうくらい素晴らしい魔法です。」

「そうなんですか。」

「プチなんて詐欺です。相対した敵に『騙したなっ!』って怒鳴られますよ絶対。私も『プチじゃないよなっこれ!これ、プチじゃないよなっ!』と同僚の肩を掴み激しく揺らして少し取り乱してしまいましたよ。」

という会話だ。


その人は盟約した人でもあって、今では魔力量も増えて魔力を込める技術も知って、自身でも上級以上の威力の魔法をばんばん使えるようになっている。

めっちゃ敬意を持って接してくるんだよね……。


あと

「ラハートフ様、見てください。」

「ラハートフ様、これできるようになりました!」

「グリフォンを作れるようになりました!一緒に飛んでください!」とか会うたびになにかしら報告してくるんだ……。


と今はそんなことより、自分の魔法は上級以上の威力があるみたいだから、中級以上の魔法が使えなくてもいいかなとか司教様がそう言っても別に悲観的なことを思わなかった。


まぁ、攻撃魔法に関しては上級以上の威力があるみたいだから別にいいけど、他の魔法は使ってみたかったけどな……


「攻撃魔法に関しては上級以上の威力があるみたいなので別にいいですが、他の魔法は使ってみたかったですね。」

「は?」

「「「あ。」」」

「そ、そうよ!ラハートフは素晴らしい魔法が使えるんだから、適性属性がなくたって意味ないわ!」

「確かに、そうだな。」

「そうね。」

「そうでしたわ。」

「は?」

「あ!ラハートフ、魔力を込めたプチリペアをしたら魔力量鑑定の水晶が直るんじゃないかしら!」

「!?やってみます!司教様、それをお貸しください。」

「あ、はい、どうぞ?」

「ありがとうございます。よしっ!全力でいきます!」


魔力を集め集め集め、粉々になった水晶を包み、魔力を込めていく。

可視化する程に魔力が込められる。


「な、なんという魔力量!?」

「凄いな。」

「さすがラハートフ!」


「わああすっごい魔力、貰っていい?」

「食べていい?」

「今は駄目ですよ。」


容器の真ん前でニチカとポチマルが集められた魔力に手を顔を近づけようとしているのをユシルが止めている。


「魔力超増し増しの『プチリペア』!」


粉々で山となっていた魔力量の鑑定の水晶だったものが光輝きながら元の姿に戻っていく。

余波を受けて床のひびも直る。


「「おおお。」」

「綺麗。」「綺麗ね。」「綺麗ですね。」


「綺麗だなー。」

「綺麗だー。」

「綺麗ですね。」


光が収まる。

水晶が鎮座している。


「な、直ったでしょうか?」


元の水晶の形になっているが、鑑定能力まで直っているかかわからないから不安だ……


「で、では、私が試してみましょう。」


司教様が水晶に触れると淡く光る。


「おお!以前鑑定した時と同じです。」

「私も鑑定してみるか。」

「あ、ちょっと待ってください、エヴィンカル様。『プチダーク』」

「あ、そうだな。ラハートフ、助かった。」

「いえ、では、どうぞ。」


予想通り、エアルリーザ様より強い閃光を放つ。

アウルーレ様もトリーリア様も同じくらい閃光を放つ。


他の人のも鑑定できるということは直ったってことだよな?

あぁ、弁償するとかにならなくてよかったぁ……


「こ、公爵様より強い光を出したラハートフ、様はいったい……」

「司教殿、内密にお願いするぞ。」

「は、はい!神に誓って他言しません!」

「では、また何かあったらよろしく頼む。」

「はい!」


教会を出るオルヴェルド公爵一行。

前の馬車にエヴィンカル様、エアルリーザ様、アウルーレ様、俺ラハートフ、後ろの馬車にトリーリア様、エンダース、様を回収していたメリルさんが乗って進む。


「うむ。適性属性がないとは思わなかったが、ラハートフにとってはあまり意味がなかったな。」

「そうですね。でも攻撃魔法以外の魔法を使ってみたかったです。」

「ラハートフなら似た効果のプチ魔法が使えるんじゃないか?」

「そうですかね?」

「見せてもらって、試してみるといい。」

「そうですね。色々試してみます。」

「私も一緒にやるわっ!」

「えぇ、一緒にやりましょう。」


そう話ながら帰宅したエヴィンカル達とラハートフ。

忘れられていたエンダースはメリルがエンダースの部屋に持っていったらしい。

俺は忘れていたよ。

息子なのに回収したメリルが乗ってきて「あ。」と漏らすくらいトリーリア様も忘れていた。


日頃の行いがあれだからな、憐れ……


ーーーーー

あとがき

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