*第十九話:裏話・引き寄せられる自業
部屋に居ても、なんもする事がねぇ。仕方ねぇから当て所も無くぶらぶら歩いてたら、都心まで来ちまった。
俺に断りも無く二度も勝手をやって、ススムにぶっ飛ばされた挙句、病院に運ばれてやがった元部下共に聞いた話だが、機動隊モドキの連中はススムが潰したらしい。
俺の部下を発症者にしやがった軍隊モドキの奴等は、あれ以来見てねぇ。あいつ等もススムに遭遇すりゃあ潰されるんじゃねーか?
(まあ、例の軍隊モドキは、いずれ俺がしっかりオトシマエつけとかなきゃな)
何となく車の音が聞こえた気がしたんで、新しい足の確保ができねぇかと音のした方に歩いてたら、打ち上げ花火みてぇなデカイ音がして、前方に見える建物が爆発した。
それに、なんだ? この音は……銃の発砲音か? 誰かマシンガンでも撃ってんのか。確かこの先は、でかい避難所があるって話だったな。
ちょっと様子でも見に行くか。
この辺りはくっそなげぇバリケードが続いてやがる。さっき爆発したのはあの建物か。避難所に併設されてるっていう病院みてぇだな。上の方の壁に穴が開いてんぞ。
ん? 建物の向こう側から拡声器の声みたいなのが聞こえて来た。
『――差し出せば避難所や病院に犠牲者は出さない』
なんだ? 今『ススム』つったか? ええい、ここからじゃよく分からねぇ、どっか高いところに上がらねぇと。
バリケード代わりに積まれてるらしい二段重ねのコンテナに上って、避難所の正面を見渡せる場所まで来たが――
(あいつ等……! 間違いねぇ、俺の部下を発症者にしやがった奴等だ!)
正面のバリケードを挟んだ道路側には、あの軍隊モドキの大軍が居やがった。
(つーか、なんだこりゃ、まるで戦争じゃねーか)
大型バスを壁みてぇに並べた内側に、100人くらいの兵隊が集まってる。高速道路の出入り口にゃあ、大砲積んだ戦車みたいな車まであるぞ。さっきの爆発はあいつか。
あの車は欲しいが……燃費悪そうだし、動かせねぇと意味ねぇからなぁ。そんな事を考えてたら、避難所側の突き出たテラス状になってる部分から誰か飛び降りた。
(――って、ススム? 避難所を護ってんのか)
ススムは、バリケードと大型バスも飛び越えて兵隊の群れに突っ込むと、片っ端からぶっ飛ばし始めた。
すげぇ! やっぱアイツは異常だなっ! 俺もバスの上に飛び上がるくらいなら出来るが、流石にあの高さを飛び越えるのは無理だ。
雑魚共がススムにぶっ飛ばされてんのをニヤニヤしながら見てたら、いきなり爆発音がして空気が震えた。何だ!? 爆弾でも置いてあったのか?
振り返ると、あの車の大砲から白煙が上がってる。
(な――あいつ等、味方ごとススムを吹き飛ばしやがった!)
大型バスに囲まれた一帯は、大砲に吹き飛ばされて粉々になった肉塊と血がぶちまけられてる。土砂と煙だらけでよく見えねぇ。
「イカれてやがる……」
ブルドーザーがバリケードに突っ込んで、あいつ等の部隊が侵攻を始めた。
(ススムの奴、マジで殺られたのか……?)
何台か横転して煙に覆われてるバスの周辺に、動いてる奴は居ねぇ。あいつ等側から救出に行くやつも居ねぇって事は、最初からススム諸共吹き飛ばすつもりだったって事か?
「糞が……気にくわねぇ」
そこまでやんなきゃ、ススムには勝てねぇって思ったわけか……だが、あいつ等には、俺も部下を三人も発症者にされてんだ。このままやられっ放しで終われるかよ。
「俺がぶっ潰してやる!」
だが闇雲に突っ込んでも返り討ちに合うだけだ。
(何かねぇのか)
辺りを見渡し、駐車場に大型フォークリフトを見つけた。多分ここのコンテナを運んだ奴だろう。フォークなら動かした事がある。
「ガスは入ってんだろーな」
俺は駐車場に向かって走り出した。
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