孤高の世界最強~ボッチすぎて【世界最強】(称号だけ)を手に入れた俺は余計ボッチを極める~
ナザイ
第1章 ボッチの自主的に過激なスローライフ
ボッチ0 ボッチ転生
空の世界、転生した俺が真っ先に感じたのはそれだ。
果てしなく広がる空。それは本来境界であるはずの大地や海、宇宙が崩壊していることで成立していた。
頭に鳴り響くアナウンスを無視して俺は魅入る。
恐らくこの光景は何もかもが滅びた結果なのだろう。
そしてこれが俺が救う事になる世界。
だがどうしようもなくこの世界を美しいと思ってしまった。
嗚呼、ここが異世界! 俺の生きて行く新世界!
『すいませ~ん! 送る世界を間違いました! 其処じゃありませ~ん!』
俺は気が付くと転生前に居た空間に戻っていた。
そこには不自然な満面の笑みを浮かべる女神様。
「あの、俺、異世界に転生したんじゃ?」
俺は半眼で聞いた。此処に戻る直前に答えは聞いたがはいそうですかとは納得がいかない。
俺の感動を返してくれ! あれは初めだから許される思いなんだ! 恥ずかしい……。
「間違えて他の異世界に送っちゃいました」
しかし俺の思いを無視し、笑顔で乗り越えようとする女神様。
どうやら強く言わないといけないらしい。
「可愛い顔で誤魔化してもダメです。とりあえず座ってください!」
「はい……」
女神様は正座した。
「何故転生先を間違えたんですか?」
「あの世界、貴方の
誰もいない世界と相性が良すぎる……。
「って! 誰がボッチだー!」
俺は断じてボッチなどではない。ただその、あれだあれ、何にしろ勝手な憶測はやめてほしい。
「えっ? 違うんですか?
「そ、それは、俺は友達を選んでだな、その……プライバシーの侵害だー!」
プライバシーの侵害はよくない。そう! プライバシーの侵害はよくない! 俺はボッチじゃないからそこは関係ない! 俺はプライバシーの侵害に対して訴えたいのだ。
そんな遺憾の意を表明する俺に対して、女神様は悟ったように慈愛を込めて俺に語り掛けた。
「大丈夫です。あなたは失敗をした上で人生を一からやり直せるのですから。きっとお友達も作れますよ」
暗に友達が作れなかったことを失敗と言っている。失敗じゃないから…それに作れなかった訳じゃないから、作らなかっただけだから……。
それに。
「二度目の人生、早くも終わったんですけど?」
誰もいない世界じゃ友達なんて作れるはずがない。そもそも空があるだけで食糧の一つもありそうにない世界、まさに人生終了だ……なんで俺はそんな世界に感動していたのだろうか……。
「ああ、それなら大丈夫です。完全に召喚される前にギリギリで戻しましたから、まだあなたは転生前の状態です。例えるなら、目的の駅に着いて電車の扉は開いて降りたけど扉が閉まる前に戻った、と言うのがさっきの状況ですね」
「なら俺の二度目の人生は始まって無いって事ですか?」
「はい、ギリギリ大丈夫です。と言うことで正しい世界に転生してもらおうと思うのですが? あ、先に見せておきますね」
女神様はそう言って転生先の世界を俺にも見せてくれた。
そこには、先に転生したのであろう同級生達が広い神殿の広間でわいわい騒いで、ステータスを見たり、説明を聞いていたりする場面が……。
俺と同時に死んだ奴らが居ないと思ったら……。
「あの、完全に出遅れてるんですけど?」
あっ、広間にある如何にもな召喚陣が消えて行く。
出遅れたどころか同じところにも行けそうにない……。
「……お詫びに貴方のギフトを一つ増やしましょう。ほら、主人公は後から登場するものですし! さあさあ!」
女神様はもので解決する方針に変えたらしい。まあ、いいとしよう。どうせあいつらは友達じゃないし、出遅れたところでそんなに変わらない……。
思考が漏れていたのか、また女神様から慈しみの眼差しを頂戴する。
「異世界では、奴隷も買えますよ」
とニッコリ。強制的に友達っぽく振る舞わせられるってか……それも悪くは……。
「いや! そこまで友達に不自由していないから! そんな末期じゃないから! あとボッチじゃないから! 友達を選んでるだけだから!」
そんな俺の叫びを女神様は分かっています分かっていますの頷きだけで、まともに相手にしてくれない。
「さて、二つ目のギフトを差し上げましょう。……あれ? 一つ目のギフトは?」
「何も貰っていませんけど? ギフトって?」
「……えー、ギフトとは不思議パワーです。戦闘とは無縁の方でも持っていれば魔物を簡単に倒せる、異世界転生には必須の力です」
女神コノヤロウ……。
「それ、ある意味違う世界に転生させようとしたことよりも問題なんじゃ? 魔物って、そんなのがいる世界に着のみ着のままで放り出されたら、普通に死にますからっ!!」
「えーあー、さーて、三つギフトを差し上げると言う話でしたね! さっさっと始めましょう!」
女神様は無理矢理誤魔化すように光を両手ですくい取るように集めだした。
まあ、三つギフトとやらをくれるのなら見逃してやろう。
「ギフトは貴方の器の関係上、貴方の性質に近いものになります。一つならある程度選んでギフトを差し上げる事が可能なのですが、今回は三つなので私の方でもどんなギフトになるのか判りません。それでも宜しいですか?」
「はい、お願いします」
「では……」
女神様が集めていた光が三つの球体になり、俺の方に飛んでくる。
そして俺の身体に触れたかと思うと、光は俺の身体に衝突することなく透き通り、また戻ってきて同じく透き通るのを繰り返し、加速し、やがて光輪となり縮小し、俺の中に溶け込んでいった。
同時に自分が大きくなったような、増えたような、不思議な感覚を覚えた。
他に異常は何もない。
「これで貴方には三つのギフトが身に付いたようです。そのギフトは〈空洞〉〈風景同化〉そして〈超演技〉」
うん、如何にもボッチなギフトだ…。
〈超演技〉は謎だが他の二つは明らかなボッチ能力。友達でグループを作る中、取り残され自分の周りに自然とできる空洞、そして誰からも相手にされずそのまま風景と化す俺……。
あれ? 目から汗が。
そんな中、女神様は優しく語りかけてくれた。
「貴方のボッチ属性は私の想像以上だったようです」
声音と違って内容は酷い……。
「ですが安心してください。ボッチギフト二つは相性が良すぎて器に空きができました。なのでギフトを制御して、〈超演技〉を貴方に差し上げる事ができました。
貴方は根っからのボッチ属性です。きっとこれまで通りだと友達を作ろうとしても失敗するでしょう。だからこのギフトで演技してみてください。自分を強制的に変えるのです。そうすればきっと、貴方にも友達ができる筈。演技から生まれた友情でも真なる友達なら素の貴方も受け入れてくれるでしょう」
女神様はそう言って微笑んだ。
「女神様……」
この人は女神だ、いや本当に女神様だけど。
「さあ、新しい世界へ行きなさい。貴方ならきっと出来る」
俺の足下に魔方陣らしきものが現れる。
「二度目の人生、悔いの無いように」
俺の身体を魔方陣から発生する光に呑み込まれて行く。
「女神様! ありがとう! 俺、頑張ります! 俺の幸せをどうかここで見届けてください!」
「ふふ、楽しみにしています。
では貴方に祝福を。どうか世界をお救いください」
その女神様の言葉を最後に、俺の視界は変わった。
《多田倭文の転生が完了しました。これよりステータスを有効化します。
ステータスの有効化が完了しました。
名前の表記をマサフミ=オオタに変更します。
転生の女神アウラレアの介入により、ギフト〈空洞〉〈風景同化〉〈超演技〉を獲得しました。
スキル〈鑑定〉〈アイテムボックス〉を獲得しました。
加護〈転生の女神アウラレアの加護〉を獲得しました》
自分があやふやな中で無機質な声が全身に響いた。
同時に女神様の温かさを感じる。
《称号を更新します。
【異世界転生者】【異世界勇者】【複数の世界を知る者】【ボッチ】【唯一絶対】を獲得……【唯一絶対】の獲得に失敗しました。【唯一絶対】を他称号に再構築します……【世界最強】【至高】を獲得、【ボッチ】と【至高】より【
……はっ!? 【世界最強】!?
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