織姫さんは笑わない。 第2部 学生編が終わったから社会人編だろうか?

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第1話 プロローグ


 から〜ん ころ〜ん



 ある休日の日に、一面に広がる青空の下、ウエディングベルが高らかに鳴り響く。



「おめでとう〜」


「おめでとう〜」



 周りの出席者からの祝福の声とライスシャワーが純白の衣を纏った2人に降り注ぐ。



 そんな幸福な瞬間を夢見ていた少女が、今は成人した立派な女性となり、そのレッドカーペットを進む。



 式の終わり、ブーケトスの瞬間、笑顔と共に涙が零れた。


 アタシ、結局、彼と結婚するんだ。



 何だか、とても複雑な気分だ。


 彼には、とても好きな人が居て、本当はその人と結ばれたかった筈なのに、でも彼は今、アタシの隣にいる。



 そして、その人はアタシの親友だった。


 彼と彼女は、とてもイケてる同士で見るからにお似合いだった。



 だから、私は彼とお見合いで知り合い、その後の会話で、彼のその強い思いを知って彼の応援をする事にした。



 それが、あんな事になるなんて…。



 彼に幻滅した彼女は彼を容赦なく振ってしまった。


 それから、彼と彼女の関係は段々と疎遠となり、そんな彼を慰めていたら、いつの間にか二家族ふたかぞくに周りを固められてしまっていた。



 そうだよね。


 元々、お見合いで知り合ったんだもんね。


 そうなるよね…。



 でも何だか2人を仲違いさせて、親友から彼を奪ったみたいだ。


 そんな思いがずっと、ず〜っと心にのしかかってくる。



 こんなにも周りに祝福されているこの瞬間にも、この場に彼女は居ない。



 アタシ、親友…失っちゃったのかな?



 ごめんなさい…。



 ごめんなさい…。



 ごめんなさい…姫ちゃん。




「呼びました?」


「え?」



「あ、ご結婚おめでとうございます。遅れて申し訳ありませんでした。撮影が長引いて中々、帰らせて貰えなくて……って何で泣いてるのですか?花奈」


「姫ちゃ〜〜ぁぁん!!」



 ガバリと彼女を抱きしめると、その親友の身体は少しだけ火照っていて、急いで駆けつけてくれた事が触れたその肌から分かる。



 アタシ……無かった。


 アタシ!親友、失ってなんて無かった!



「姫ちゃん!アタシ達、ズッ友だよ!」


「え?それはどうでしょうか?」



「姫ちゃん!?」


「冗談です」



「そんな真顔で言われても冗談に見えないよ!?」


「冗談です」



「どっちなの!?」



 そんな2人の会話に遥や楓が爆笑していた。


 隣で彼も笑いを堪えていた。



「酷いよ〜みんな〜」



 私はこの日、本当の意味で夫婦になった。

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