第18話 山林のお掃除と新たな問題
鵜川家の山林奥地には、それはもう野良モンスターがわんさかいた。
ゴブリン、コボルト、オーク、リザードマン、そしてオーガなどの人型種にくわえ、ラット、ラビット、ハウンド、ウルフ、ボア、ベアーなどなど、獣系のモンスターまで多種多様だ。
それらが共存したり食い合ったりと、野生の楽園を築いていたのだが、ほんとうに溢れ出す一歩手前だった。
「ごちゃっとしてわかりにくいが、二千は超えておるな」
「うへぇ、まじかよ」
山林に踏み込んだうえでシャノアが精密な索敵をおこなったところ、予想の倍を超えるモンスターがいるとわかったので、さっそくお掃除の開始だ。
初日にはとにかく大量購入した自動小銃の弾丸をばら撒きまくり、シャノアの活躍もあって500を超える戦果をあげた。
翌日になると、少し戦果は落ちて300程度。
モンスターどももさすがに異常を察したのか、広い山林を逃げ隠れし始めたようで、3日目には100を切り、以降戦果はどんどん減っていった。
いくらシャノアの索敵が優れていても、遠くへ逃げるモンスターを追い回すのはしんどい。
ちょうど一週間を機に、山林のお掃除を一度終えることにした。
「7日で、1500を超える討伐か……」
報告の際、タイジくんの顔が若干引きつっていたよ。
「ああ、そうだ、いくつかスキルオーブを都合してもらいたいのだが、可能か?」
「可能と言えば可能ですが、どういったものを?」
「隠蔽や索敵関連のものがあればありがたい」
なんだなんだ、隠密部隊でも作るつもりか?
「新たなギアの開発がいい具合でな」
「新たなギア、ですか?」
「ああ、オーブを直接組み込むことで、解析や再現の困難な機能を持つギアを、実用化できそうなのだ」
アーティファクトじゃん!
「アーティファクト……?」
「えっ、タイジくんやっぱり読心術を!?」
「いや、口から漏れていたぞ」
「おおっと」
いかんいかん、ひとりごとのクセがつい……。
「いや、なんというか、中二病的発想からつい口走ってしまったというか……とにかく、気にしないでください」
「ふむ……なるほど、いい名称だな」
「いやいや、そんな、勘弁してください……」
狼狽する俺を見て、タイジくんがフッと笑みをこぼす。
「とにかく、そういうことだから、オーブを都合してもらえるとありがたい」
「あ、はい。善処します」
つまらん失言でいろいろと見抜かれてしまったかもしれんから、ここはご機嫌とりをしておこう。
俺のとの付き合いにメリットがあるとなれば、
○●○●
タイジくんとわかれたあと、異世界へ戻り、トマスさんへ報告した。
討伐した野良モンスターは、すべてウォーレン商会へ預けておく。
あとはトマスさんがうまいことギルドへ納品してくれる手はずだ。
これで一時的にだが、ギルドへの納品不足は解消するだろう。
今回はたまたま野良モンスターを大量に狩る機会があったからできた芸当で、何度も使える手じゃない。
ただ、例の五商会とのいざこざも、そろそろ決着が見えそうなので、これが最後の後押しになるはずなんだが……。
「どうしたんです、トマスさん?」
なんというか、報告を受けたトマスさんの表情が優れない。
「もしかして、納品数が足りない、とか?」
「めっそうもない! ギルドへの納品に関しては、これを機に解消へ向かうでしょうな」
うーむ、言い回し的に、なにか別の問題が発生した感じだぞ?
「トマスさん、なにかあったのなら、遠慮なく言ってください。役に立てるかどうかはわかりませんが、なにか問題があるのなら、小さなことでも知っておきたいですから」
俺はともかく、セイカは賢いし、いざとなればタイジくんにそれとなく話を振ってみるって手もある。
あの人、なんやかんやで役に立ってくれそうだし。
「ふむう、そうですなぁ……少し、お話を聞いていただきましょうか」
食堂へ場所を移し、アイリスとセイカも呼んで、軽食をいただきながらトマスさんの話を聞く。
「ジャーヴァス商会。例の五商会のひとつなのですが……」
例の五紹介のなかではもっとも新参で、規模の小さいところだそうだ。
「先日、そこの会長であるナタリアさんから、会談の申し出がありましてな」
先触れの様子からして、こちらへ寝返りそうな雰囲気があったらしい。
「近いうちにぜひ、というお話だったのですが、ここ2日3日ほど、連絡が取れなくなりましてな……」
気が変わったのか、と考えつつも、心配なのでジャーヴァス商会の状況を探ったところ、どうにも様子がおかしい。
「妙に混乱しているようでして、探りを入れたところ、ナタリアさんの行方がわからなくなっているのでは、とのことでしてなぁ」
トマスさんは、心配を露わにため息をつく。
しかし困った。
心配事は遠慮なく話してくれ、と提案してはみたものの、俺じゃ力になれなそうだぞ。
銃弾ぶっ放して解決する問題ならまだしも、こういうフクザツなニンゲンカンケーってのは苦手だ。
(主はあれだな、ノーキンというヤツだな)
テーブルのうえでのんびりとしていたシャノアが、ちらりとこちらを見て、目でそう訴えたあと、大あくびをして顔を伏せた。
誰が脳筋だ誰が……といいたいが、ジョブを得てからこっち、暴力で物事を解決してばかりだと思い至る。
もう少し平和裏に、頭を使って物事にあたらねばなぁ。
「とりあえずさ、そのジャーヴァス商会ってとこを訪ねてみたらどうだい? 面会の約束はしてたんだしさ」
セイカがそう言ったので、俺たちはジャーヴァス商会へ向かった。
――――――――――
本作のコミカライズが決定しました!
明日12/28よりピッコマにて先行独占配信がはじまります!!
よろしくお願いします!!
https://hilao.com/?p=37
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます