第17話 集合ティータイム
「海賊だ……!」
そうエンタロウが宣言したと同時に、一陣の風が庭園に吹き込んできた。
「ダンさん、なにか……潮の香りがしませんか?」
「何言ってんだシスタァイノリ。そんなのするわけねェ……、いや、香ってきやがった! 潮が!」
「ヨーヤホー。俺は海賊にして海の民。俺が行くところには、我が故郷アオミ海の潮風が吹く」
エンタロウが両手をバッと広げると、潮風がより強く吹きつけた。
「し、潮風などどうでもいいわぁ! それよりお前、なんだその船の乗り方は?! 頭が高いではないかぁ! さっさと鎮ま——」
「断る!!」
大海原で鍛えられた張りのある声が、再びウテビ中尉の言葉を遮った。
「言っただろ、俺達は海賊だと。海賊が従うのは己が乗る船の船長と欲望のみ。なぁそうだろ? 野郎ども!」
エンタロウの煽りに、後ろの乗組員達は雄叫びを返す。
その熱気に、ウテビ中尉は後退り歯軋りをすることしかできない。
「賊を名乗る男。では何故貴様はここに来た?」
だが、ゴンリツ大佐は仁王立ちでエンタロウに質問を返した。
「俺は忠告と提案に来た。お前達は魔族が森を抜けて進軍すると進路予想を立てた。……が、果たしてそれは正しいだろうか?」
「違ェとでも言いてェのか?」
エンタロウは、正解と言わんばかりに口笛を吹きながらダンを指差した。
「陸の人間であるお前達は目も向けなかったが、海はずっと告げていた【邪気が迫っている】と。この邪気とは、魔族の侵攻に他ならないんじゃないか?」
「ではなんだ。魔族は海を渡ってに攻め入る、回りくどく美しくない方法をとると言うのかね?」
「その通りだ。事実、普通の人間の俺がこうして来れた。なら化け物だらけの魔族なら容易い道のりだろう」
「そこでアオミ海域で貴様が迎え討つから、報酬をよこせと要求するか?」
エンタロウは口笛を吹き、指を指した。
「海賊とは元来は海の商人、レートを決めさせてもらおう! 死体五〇体ごとに百万、大将首は二千万だ!」
「美しくないな。一体につき一・六万、大将首千六百万だ」
「二千万!」「千六百万」
「千八百万!」「千六百十万」
「チッ、千七百万!」「千六百十五万」
「「千六百十八万!!」」
ゴンリツ大佐はニヤリと笑い、エンタロウはフンと鼻を鳴らした。
「野郎ども、交渉成立だ! ヨーヤホー!」
乗組員達は、また雄叫びを上げた。
「ゴ、ゴンリツ大佐良いのですか? あんな頭が高過ぎる海賊なんかと手を組んで」
「化け物共に占領されるぐらいならば、下郎の商人と組んだ方がまだマシだ。戦が終わり何か喚いてきたのならば、王国の武を持って黙らせればいい。何より……」
「なにより……?」
「船長の指示で、左右三人ずつの漕ぎ手が一糸乱れぬ動きで船を操るその姿。美しい……!」
ゴンリツ大佐は少しウットリしている様子。ウテビ中尉はゴンリツとエンタロウに呆れるしかなかった。
一方その頃、千六百十八万の懸賞金がかけられた大将首の魔王アルテムは————
「いーやーだー。俺はギアラシアにあそb……調査に行って、シスタークルミの採れたて野菜を食べに行くんだ〜!」
「観念しなさいアル! 新幹部が集まってるのに、魔王がサボっていいわけないでしょ!」
幼馴染エルフメイドに、自室から引っ張り出されようとしていた。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
ギアラシアに遊び、もとい調査に行くのを諦めた俺は、エリーと二人、新幹部達が集まっている大広間に向かっていた。
「それで、エリゼ。今回来てる新幹部達の種族は?」
「獣人とゴーレム、風精霊、ヴァンパイア、そしてヒューマノイドの五種族です」
「ローラも含めると六種族だけか……。この間の時みたいにビーム撃ってこないよな」
「そこはアルテム様のコミュニケーション次第だと思いますけど?」
「おい、そう言いながら距離をとるな」
そんなやり取りをしているうちに、大広間の扉の前に到着した。
「まあ見てなエリゼ、着実に信頼を勝ち取ってやるさ」
いざ大広間の扉を押し開けると、既に大広間に集っていた6人の魔族が一斉に反応し、俺を見る。
長い尾をしならせるドレス姿の、巻いた赤毛蟲人族の女。
白い歯をギラつかせ笑う獣人族の、茶髪にケモミミの生えた女。
石でできたギターを一度鳴らす、モヒカン頭のゴーレム族の男。
俺の顔認証をしてる、ヒューマノイド族の男。
空気椅子から立ち上がる、スキンヘッドの風精霊族の細身男。
天井からマントをはためかせ着地する、顔を隠すほどの黒髪長髪ヴァンパイア族の男。
「ご機嫌よう新幹部諸君。先ずは紅茶でも淹れようか……エリゼが」
「私がビーム撃ちますよ?」
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