第31話 アウレア平原の戦い・解析
■中央ゴレムス暦1582年7月1日 9時過ぎ
アウレア平原
「シルフィーナ殿下、準備は整ってございます。
トールトンがそうシルフィーナに促す。
おっさんはもう少し兵を休ませてやりたかったが、状況が状況なだけにすぐさま開戦に踏み切る決断をくだした。来るかは分からないが、わざわざ敵の増援を待ってやる必要はない。おっさんたちも決して余裕がある訳ではないのだ。
おっさんがシルフィーナを気遣うように見ると、緊張しているのか少し息が荒い。
その額には汗が浮いているが、この蒸し暑さだけのせいではないだろう。
彼女は大きく深呼吸すると気持ちを落ち着かせ、戦場に立ったことがないとは思えないほどの大音声で告げた。
「皆の者! 大公陛下の仇討ちです。逆賊に正義の鉄槌をッ! 戦闘開始ッ!」
「先鋒のアーネット子爵を押し出せ」
おっさんが伝令に命令を伝える。
ここに合戦の火蓋が切って落とされた。
陣容として先鋒にアーネット子爵の三○○、グローヴ男爵の一○○、ヘイマー男爵の一○○……総勢一五○○。
対する敵軍はネフェリタス麾下のガネッサ将軍が一○○○で迎撃してきた。
おっさんはボードを具現化してそれを見ていた。
暇があれば検証していたが、戦争時には詳細なマップと部隊の配置などが表示される。戦況が一目で分かるので便利を通り越してチートの部類である。
「(うーん。名目上だけかと思ったけど、俺が総大将設定になってんのか。これは全部隊に【
おっさんがアーネット子爵の部隊を指でタップする。
すると部隊の指揮官と兵力、士気、練度などの情報が表示された。
試してみたが、頭で考えるだけでも操作は可能なようである。
「(おお、現状の兵力が分かるぞ? 被害数も分かんのかこれ!)」
おっさんは1人で盛り上がっていた。
現在進行形で兵力が分かるので、今現在、アーネット子爵軍が敵軍のガネッサ将軍の軍に押し負けていることが一目で理解できる。
「殿下、わざわざ敵に合わせてやる必要はありません。右翼と左翼を押し出しましょう」
「分かりました。ではそのように」
「両翼を押し出し左右から挟撃させろ。同時にその側面を突かれないようにソルド子爵軍とハンクス男爵軍を押し出せ」
戦況が動くと同時にボードの状態も推移してゆく。
こちらの部隊の動きに対抗してネフェリタス軍も動き始めた。
「(おッほー! 敵部隊の指揮官まで分かるのか……)」
本陣で采配を取るなど退屈だと思っていたのだが、この能力があれば楽しめそうだ。ゲームみたいな感覚だとおっさんは理解し始める。
おっさんは、この世界に来て初めての興奮と歓喜に打ち震えていた。
そうと分かれば物は試しである。
取り敢えず、敵本陣の指揮官ネフェリタスを指定してみた。
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「(はッ! 現地人はこんな感じで表示されんのか! この感じだと現地人でも【
シルフィーナ以下、本陣の指揮官や貴族諸侯たちが真剣な面持ちをしているのに対し、おっさんは1人場違いな表情をしていたが、彼らのほとんどが斥候や伝令からもたらされる情報を聞いて戦況の把握に努めるのに精一杯のようである。
「(この辺りの地図が表示されてるのは標準仕様か? 平原だから分かる感じかも知れんな。次はオゥルを見てみるか……って、んんんんん!? 待て待て待てこれ指揮官以外も見れんのか!? 何人か対象がいるぞ……)」
おっさんは盛り上がり過ぎて狂喜乱舞していた(23年ぶり2回目)
「(重要人物か肩書きのある人物だと、対象者になるのかもな。おッ……【
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おっさんは興奮しながらも的確に指示を出していく。
戦力の逐次投入はしない。
数の暴力で一気呵成に畳み掛けるべし。
次々とアウレア平原に部隊が殺到し、命の
戦場の各所でネフェリタス軍を押しまくっている時、おっさんはふと気づいた。
そしてすっかり忘れていた自軍の存在を思い出し震えた。
あいつら怒ってんだろうなと思いつつ、遊撃で好きにやれと伝令を飛ばす。
「(あーーー!!! 直接ボードで操作できねぇかなーーー?)」
最早全てが面倒臭くなるおっさんであった。
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