第28話フィーの気持ち

「覚えてくれてたんだ」

すこし冷たくなったカップを見つめながら懐かしく思った。

「当たり前だろ。初めて見た時から気になっていた。だから・・・跡をつけたんだ」

「跡を?」

「ああ。一目見て目が離せなかった。きっかけを作ろうと子供ながらに頑張ったんだけどな」

「フィー?」

何を言おうとしているの?

その思い詰めた顔は何?

ドキドキしてきた。

「後から聞いた。その国の王子の婚約者だ、と。何度も諦めようとした。スティングがどれだけ王子を好きなのか見ていてわかった。だから、スティングが幸せになるならそれで良かったのに、そうじゃなかった」

フィー?

私の持っていたカップを取り、テーブルに置いた。

「それなら、俺が変わってスティングを幸せにしたいと思った。だから、この国来たんだ」

「この国に・・・来た?」

フィーは、私の手を強く握り淀むことなく言葉を紡いだ。

「スティングを奪うために、この国に留学を父上に頼んだんだ。ずっと好きだった。俺を選んでくれ、スティング。あの時スティングが言っただろ?思っていることを言わないと後悔する、と」

「・・・!?」

その言葉が嘘でないと態度からでもわかった。

「今の状況で、弱くなっているスティングに言うのは卑怯だ、と分かっている。だがそれでもいいんだ。その弱さにつけ入りたいんだ。俺を、選んくれ。何があっても俺は、スティングを許せる。スティングが何かしたいのたら、それを手伝ってやるよ!」

「・・・なに言ってるの・・・。フィーの馬鹿!!フィーは帝国の皇子だよ、そんな事言ったら都合良く使われちゃうよ!私だって、フィーを都合良く使ってしまうかもしれないよ!?」

「使えよ!何かしたいんだろ!!」

「・・・フィー?」

「さっき、助けるつもりでいた、と言っただろ?」

しまった、と思った。余計なことを知らずに言ってしまった。

「そんな顔するな。カレンを呼んでくる。少し話そう。・・・スティング、俺が嫌いか?」

思いっきり首を振った。

「違う・・・の・・・。巻き込みたくないの。これは・・・私達の問題だもの」

途端にぎゅうと抱きしめてきた。

「俺の事を考えてくれているなら、心配するな。それとも、公爵殿も呼んだ方がいいか?」

「・・・ううん、お父様はまだいいわ」

「わかった。カレンを呼んでくる」

そう言って部屋を出ていった。

途端に身体が熱くなり、ドキドキしてきた。

フィーが昔から私を好き?

その為にこの国に来た?

そう言われてみれば、2人の会話でそんな風な感じがあったような気がする。

私は、フィーが好きになれる?

いや、勿論嫌いじゃない。一緒にいて楽しいし、私のことを考えてくれている。

考えれば考えるほど、ドキドキしてきてた。

これまでの私は殿下の事だけを考え、誰かに、私の事を好きになって欲しいと思ったこともなかったし、誰かが、私の事を想っているなんて、思いもしなかった。

それも、帝国皇子である、フィーが、私を?

あの綺麗な顔で、あの優しい、フィーが私を?

え!?

私を!?

ぐるぐると色んな考えが浮かぶ中、

フィーの顔がすぐに浮かんできて、

慌てて消したが、

すぐに浮かんできた。

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