第27話フィーとの出会い
あれば7歳の殿下の誕生日パーティーの時だった。もう殿下と婚約者として決まっていたが、幼かった私は、パーティーがつまらなくて、途中出抜けだして庭に隠れていた。
喉乾いたなあ。
でも、また、知らない人がいっぱい声かけてくるの、やだなあ。
父様はお酒ばっかりだし、母様はおしゃべりしてたし、
兄様は、女の人ばっかりと話して、つまんない。
つまんないよ。
殿下の周りには、大人ばっかりで、よく分かんない事ばっかり言ってるし、
つまんないよ。
でも、喉乾いたなあ。
膝をたてて小さく座り、ドレスの裾をモゾモゾと触っていた。
ガサッ、と音がした。
探しに来たのかな!?
長い時間いないのがバレちゃった!?
「これ、飲む?」
男の子がおどおどしながらも、ソーサーもないカップを2つ持って来た。
月夜の光がキラキラと金色の髪の毛を光らせて、逆光で顔はちゃんと見えなかったが、天使みたいと思った。
「いいの?」
「・・・だって、ずっとここにいたでしょ?」
ボソボソと恥ずかしそう言いながら、チラチラと私を見た。
「見てたの?」
「・・・うん。僕もつまんなくて外に出たら、君が歩いてるの見えたんだ。ずっといたから喉かわいたかな、と思って」
よく見えないが、とても頑張って言ってくれているのがわかった。
「ありがとう。ちょうど欲しかったの。あなた、帝国の皇子だよね?さっき、父様が教えてくれたよ」
「・・・うん」
何故か声が固くなり、真顔になってしまった。
聞いちゃいけなかったのか?
「どうしたの?こっち来たら?一緒に飲もうよ」
「いいの!?」
「だって、2つ持ってるでしょ?」
「うん」
凄く嬉しそうに頷くと私の横に座り、私にカップを渡した。
よく顔が見えた。
やっぱりとても綺麗で天使みたいだわ。
「1人でつまんなかったの。丁度良かった。ふふっ、もう冷めてるね」
貰ったカップが冷たく、飲んでも冷たかった。
「・・・ごめん。どうやって渡していいのか分からなくて・・・うろうろしてたんだ」
「え!?そんな事で困ってたの?なんで?直ぐに言ってくれたら良かったのに」
「だって、隠れてたでしょ?」
「そうだけど、私の為に持ってきてくれたんでしょ?だったら素直に渡してよ。思ってる事をしないと後から損した気分になるよ。えーとね、何て言ってたかな、えーと、あ、そうだ!後悔するだ!」
「後悔?」
「うん、父様が言ってた。素直に言わないと絶対後から後悔するって、言ってたもん。だから、皇子様が私にお茶を渡してくれたからきっと後悔しないよ。だって、私、
今、嬉しいもん」
「良かった。あのね」
「皇子!?何処ですか!?」
男性の慌てた声が聞こえ、皇子様は嫌そうな顔をした。
「探してるよ」
「・・・うん。でももう少しここにいたい」
「また、会えるよ。行った方がいいよ。心配させちゃダメだよ」
「・・・わかった」
名残惜しそうに言うと、そっと出た。
「ここにいたんですか!!皇后様が探しておられました。さあ、参りましょう」
バイバイ。
手を振ると、見つからないように振り向き、返してくれた。
貰ったお茶をもう一度飲んだが、やっぱり冷たかったが、とても美味しかった。
それから、
あっても、
社交辞令ぐらいしか喋らなかった。
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