第25話ガナッシュ殿下の誕生パーティー2

1曲踊ると、王宮召使いが、呼びに来た。

「陛下がお呼びです」

「分かりました」

「俺も行くわ」

「私もよ」

いつの間にかカレンが、側に来ていた。

「申し訳ございませんが、呼ばれているのはヴェンツェル公爵令嬢のみとなっております」

慌てる召使いを無視して、私達は陛下の待つ奥へと向かった。

ご立腹の陛下と、

珍しく眉間を寄せた王妃様、

楽しそうに笑う殿下とレインが待っていた。

フィーとカレンが一緒にいるのが気に入らないのだ。

王妃様、何もかもがあなたの思う通りには、もういかないわ。

「お呼びとの事でまいりました」

「スティング殿、これはどう言う事だ!?ガナッシュと参列する事を拒み、ダンスも拒むとは、何を考えている!?」

陛下の詰問に、首を傾げた。

ふん。

おかしな事を言うわね。

「私が参列を拒んだ?仰ている意味が分かりません。私は今日はご一緒に、と前々からお願いをしておりましたが、それを拒んで来られたのは殿下でございます」

「まあ!?陛下聞きましたか!?ガナッシュが拒んだ、といけしゃあしゃあと陛下と帝国皇子、皇女の御前で嘘を申しております。また、被害妄想ですか。はあ、困った方ですわね。直ぐにバレてしまう嘘が何の意味がありますの?」

「恐れ入りますが王妃様、私は嘘はついておりません。私は、控え室で殿下の来るのを待っておりましたが、一向に来る気配はなく、仕方なくフィー皇子様とカレン皇女様とご一緒に参りました」

珍しく私が返答したのが、気に入らないようで睨んできた。

「また、何を言うかと思えば、そのような嘘ばかりを言う。ガナッシュはあなたを迎えに行ったが断ってきた、と言っていましたよ」

大きなため息をつき、愚か女だ、と同意を求めるようにフィーとカレンを見たが、直ぐに、顔色を変えた。

「あら、その話では殿下が私がいる控え室にこられた、という事ですね?フィー皇子様、カレン皇女様、殿下は来ましたか?」

あえて困った顔をして、2人に質問をした。

「いいえ」

「いいや」

2人の即答、陛下以外の顔が引き攣った。

さすがに陛下とは口裏合わせはしなかったのね。

「私の控え室に、お2人ともご一緒におられました。つまり、王妃様は、私だけでなく、お2人も嘘をつき、被害妄想を持っていると仰っておられるのですよ。それとも、やはり私達が嘘をついているでしょうか?」

「・・・ご一緒に・・・おられたのですか?」

「そのような事も確認されておられないのですか?控え室の前には帝国の護衛がおられた。その中を殿下は参られた、と王妃様も殿下も仰っている。これは、護衛の方に確認すべきですね、フィー皇子様、カレン皇女様」

「そうね。もしかしたら、護衛の者が追い返した、という事もあるかもしれないわね。ザン、ここへ!!」

カレンの声がホールに響き、すっと、黒い服を着た護衛の1人が近づき膝を着いた。

「参りました」

「あなた、護衛中に、あの王子を部屋に入るのを断った?」

さすがに青くなった殿下を指さすカレンに、ザンと呼ばれた男性は直ぐに首を振った。

「いいえ。どなたも部屋に近づいた方はおられません」

「ありがとう。戻って」

「はい」

静かに去っていった。

「もう宜しいです、カレン皇女様。殿下はきっと心の中で私を迎えに来てくださったのです。体はレイン様とご一緒で、それで満足されているので、少し勘違いしておられるのです。つまり、殿下も私も嘘はついておりません」

ねえ、

殿下、

あなたは約束を守らなかった。

「それで宜しいですね、陛下、王妃様、殿下」

それなら、

私は殿下を護る必要は無いわ。

「あ、いや・・・そうだな」陛下。

「・・・それで宜しいわ」王妃様

「その通りだ。心の中で呼びに行ったのだ」殿下。

「さすがスティングだね。頭いいね」レイン。

愚かな人達だわ。

「何故って、今更私は何も求めておりません。ここで波風たてたところで、私がおかしいと思われるだけでございます。配慮が足りなかったのは私の方です。元々殿下に何かを期待するなど愚かな考えですね。何一つ私の言葉が通じない方々ですのに、その方々の言葉を私が真に受けたのが間違いだったのでます」

微笑みながら、スラスラと出てくる言葉に、王妃様と殿下は頬を引きつらせ、睨んできた。

「スティング!」

フィーの私の名を呼ぶと同時に、ぽたりと顎から何か落ちた。

・・・あ・・・。

フィーの声で、

足元が崩れる感覚をやっと感じる事が出来た。

「・・・お見苦しい所を申し訳ありません。お祝いの中このような姿はお目汚しとなりますので、これで失礼致します」

喉が痛くなる中、嗚咽を必死に我慢し、言葉を出し頭を下げた。

ぽたぽたと床に幾つも落ちていく。

扇で顔を隠し、背を向けホールを出た。

「待て、スティング!誰も来るな!!」

背後からフィーの声が響いた。

カツカツと自分のヒールの音と、混ざるように追ってくる足音が追いつき、ぎゅっと私の手を握ってきた。

「部屋を開けろ!」

フィーの声に、近くにいた召使いが部屋を案内し私を中へ入れた。

「誰も入るな」

そういうと扉を閉めた。



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