第20話クレス様のお茶会2

今日は中央の席に案内された。つまり、お茶会の主役の場所だ。

席には、私とフィー、カレン、そして、レテル婦人、クレス様が座っている。

いつもなら、端の誰もが声をかけにくい席に案内され、それも、広いテーブルに私1人。

数少ない公爵派が参加しているが、誰も私に声をかけに来ない。勿論私が来なくてもいい、と言っているし、側に来たら、後々標的にされるのは分かりきっている。

来るのは王妃派が嫌味を言いに来るくらいだ。

本当は王妃派のお茶会など参加したくないが、殿下の婚約者、という立場と、公爵令嬢という立場なだけに無下に扱うことも出来ない。

いつも、嫌味を適当に流しながら、ぼんやりと時間を過ごしていたが、今日は違う。

逆に落ち着かなかった。

フィーとカレンが参加しているから、視線が集まるのもそうだが、周りを囲む帝国の護衛の方々の人数の多さと剣呑な空気。

そして、真っ青な顔の主催者のお2人。

その中で、慣れてる風でとてもにこやかなフィーとカレンがまた、恐ろしかった。

「ほ、本日は特別なお茶を用意しました」

震える声で必死に婦人が言うと、控えていたメイドがお茶を順番に置いて行った。

・・・もう少し考えてよ、ほら、カレンが楽しそうに変わったじゃない。

ため息さえも出ない。

「これは、どう言う事かしら?」

始まった。

「はい!?何でしょうか!?」

「あらあ?また気づいてない?そんな訳ないでしょう?婦人がメイドに指示しないとこんな事出来ないもの。それともこの家のメイドは主の命令は無視するように言われているのかしら?」

「そんな事ありません!我が家のメイドは誰もが命令に忠実でございます!!」

「なら、ご当主の命令でこんなことをしているのね。ねえ、スティング様。これは、この国の礼儀?それともこの家の礼儀?」

もう、私にあえて聞かなきでよ。

「我が国ではこのような事を礼儀としておりません」

「だよねえ。これを帝国でしたら」

上手くそこで言葉を切り、真顔になった。

「牢屋行きよ」

ざっと護衛が動いたのが。また、上手いな、と感心した。

実際、婦人とクレス様は真っ白な顔になった。

そして、また沈黙。

少し考えたら分かるのだろうが、思考が働いてないのだろうな。

それとも、いつもやっている事だから、本当に気づいていないのだろうか?

でも、流石にこれは私が説明するのはおかしいと思い、私も黙っていた。

「はああ、まだ気づかない?本当に愚かな方だわ。また、私が説明しないといけないのね。お茶会のお茶の配り方は目上から配り、最後は主催者となる。それなのに、何故そこでスティング様が最後なの?つまり、この主催者より、格下?公爵令嬢であるスティング様が?それ、何を基準に決めてるの?何が格下?詳しくおしえてくれる?そこの女は、わざわざ、スティング様にご参加ありがとうございます、とか言っていたよ。ありがとうございます、と言うのは、違う意味かなあ?ねえ、詳しく教えて貰えない?あ、勿論この家のしきたりで、公爵令嬢を最後にする、と教育していたら別だよ。だから、初めの挨拶もスティング様の名を言わなかっのも納得出来るわ。でも、それなら」

また、そこで言葉を切った。

「帝国から、この家に抗議文を送るから。そんな家、いらないわ」

ビクリと2人は大きく動揺し、目を見開いた。

「・・・あの・・・それは・・・」

ここまで来て、言い逃れは難しい。

メイドの手違いも否定され、

国の教育も否定されたこの状況の中、何を言っても泥沼に沈むだけだ。

「下げて下さい」

だから、私が言うしかないでしょ!

「そ、そうですね。申し訳ありません、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様!」婦人

「申し訳ありません、ヴェンツェル公爵令嬢スティング様!!」クレス様。

遅いですけどね。

急いでメイド達がお茶を片づけ出し、言われるように順番に置いた。

「・・・その、カレン皇女様申し訳ありません。私の説明が悪く気分を害してしまいまして、申し訳ありません」

「はあ?私?謝る人間違ってますよね?今までの流れ聞いてませんでした?」

「も、申し訳ありません!!ヴェンツェル公爵令嬢スティング様!!その、このような事になり、大変申し訳ありません」

「いいえ、いつもの事ですので、全く気付きませんでしたわ」

あら?

私ってば少し嫌味を言ってしまった?

「・・・!?」

「ふうん。いつもの事かあ」

「そりゃそうだろ。お茶の配り方が自然だったからな」

「そう言えばクレス様、コリュ様とのご婚約はどうなりました?」

それならこの流れで、地雷を踏んで上げましょう。

「・・・え・・・?」

ガチャン!

クレス様が持っていたカップを落とされた。

そしてフィーが護衛に何かを囁いていた。

「コリュ、と言ったらあの嘘をついた男だよね。それも、この国から来た処罰の内容が余りにも甘すぎて、お母様がご立腹し差し替えしたわ。あの男?その男のと婚約しようとしたの?」

「お待ちください、それは誤解です!!た、確かにそのよう事も話しでありましたが、全くのデタラメです!!」クレス様

「ですよね。婚約者になろう人が帝国から処罰を待っている状態で、お茶会開ける筈がないものね」

「そ、そうでございます。本当に愚かな人間ですわ。お2人に楯突くなど信じられません」

婦人の言葉に、カレンが鋭い眼差しで睨んだ。

「は?今なんて言った?私達に楯突く?あの男は、元々は公爵令嬢であるスティング様に楯突いたのよ。はあ、あんたさっきから、おかしな事ばかり言ってるよね?適当に答えるのやめてくれる?何?そんなに嘘ついて話を合わそうとして、どうにかなると思ってる?」

矢継ぎ早に責め組むカレンに、リオンにそっくりだわ、感心した。

いや、ここに本物がいると言うことは、リオンがカレンにそっくりなのかもしれないわね。

「あ・・・その・・・そのような・・・」

婦人飲もっているカップから、あまりの震えでぼたぼたと雫が飛んでいた。

「ああ、分かった」

フィーに護衛の1人が耳打ちし、下がれと合図した。

「今確認したところだが、婚約は決定しているみたいじゃないか。内々の仲が良い方にはもう招待状が送られている。とても仲睦まじく、お似合いです、と言われているらしいじゃないか」

婚約の確認を聞き出しに行かせていたのか。

「あ、いや、その・・・。これから・・・破棄するので・・・婚約はしません」

「あら、どうして?嘘つき同士なのだから、それも嘘でしょ?だって、婚約者なら処罰受ける話を聞いていない訳が無いわ。同じ学園に通い、それも先週の金曜日よ。ね、聞いてないわけないわよねえ、婦人?」

「は、はい・・・」

「ありがとう。良かったわちゃんと返事ができる方だったのね。つまり、婚約破棄する気はない、という事ね。これって良く物語に出でくる恋愛ものよね。爵位を無くし平民になってしまった愛する男に、何処までも着いていく、なんて素晴らしいの!」

「・・・へ・・・いみ・・・ん・・・?」

婦人の言葉にクレス様が、

「嫌よ!!私は婚約などしません!!」

喚いた。

「うんうん、いい演技だわ。本当に嫌そうに見えるわ。でもこうやってみんなの目を欺き、愛を貫くのでしょう?」

にこにことカレンは冷たい瞳でお茶を飲んだ。

「だって、あなた方嘘つきばかりだもの」

鋭い言葉と、逃げれない言葉。

「あ、婚約おめでう!私から言って貰えるなんて光栄よね」

カレンが立ち上がり拍手すると、フィーも拍手し、周りにいる護衛の方々も拍手し始めた。

そうしてその様子を見て、周りも、何かの祝いよ、と思ったらしく、おめでとう、と拍手喝采となった。

なんか、これ、楽しい。

私も拍手した。

勿論、主催者の2人は真っ青だった。

拍手が落ち着くと、私は立ち上がり、お2人に微笑んだ。

「お顔色が優れないようですね。私ははこれで失礼させて頂きます。そうだ、1つ忠告させて頂きます。帝国の方にお茶を出させれるのであれば、帝国からの茶葉はお辞めになった方が宜しいですよ」

お茶の準備をするテーブルに幾つも並べらた茶葉の缶。

確かにこの国から帝国のお茶は高価で手に入れにくいけれど、帝国皇子、皇女を呼んでおいて、流石にこれは無いでしょう。

何処まで気配りがないのか、呆れるわ。

せめて、茶葉を他の容器に詰め替えればいいものを、いつものように他の方に見せつけたいから、缶のまま出したのだろう。

「だからなのね。何処かで飲んだ不味い味だと思ったわ。確かに顔色が悪いわね。フィー、私達も帰りましようか」

「そうだな。何処かで飲み直ししたいな」

「では、宜しけば、我が屋敷に如何でしょうか?」

「いいわね、喜んで伺わせて貰うわ」

「俺も」

「恐れ入ります。それでは、レテル子爵婦人、クレス様、ごきげんよう」

ずっと背筋を伸ばし、綺麗に一礼し、席を離れた。

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

お2人もそう言うと、私の側にやってきた。

「クルリ」

「はいお嬢様」

少し離れた所で呼んだ。

「後はお願い」

「はい、お嬢様」

軽く微笑むとクルリは離れ、夫人とクレス様の元へ戻った。

「何?」

「なんだ?」

フィーとカレンが聞いてきた。

「保険、かしら?」

「ふうん。面白くなったら教えてよね」

「俺も」

「そうなればいいけどね。さ、行きましょう」

面白くなれば、前に進んでいるという事だ。

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