殿下より呼び出されましたの放課後

「ねえ、昨日は何で先に帰っちゃったの?帰ったらさあ、ガナッシュがすっごく機嫌悪かったよ。もう、せっかく一緒に帰れたのに、勿体ないよ」


授業が終わり殿下は先生に呼ばれ、教壇で話をしている。そこをすり抜け、レインは私に寄ってくるなり、そんな事を頬を膨らませ言ってきた。


朝の事件は既に学園内に広まり、余計にフィーとカレンに対して距離が置かれ、張り詰めた空気の中、本当にぶち壊してきた。


それに、


帰ったら?


あなた何処に帰ってるの?


それも、


せっかく?


勿体ない?


私は、あなたの替わりとしか見られない、その程度でしかないと、言いたいの?


生徒の目がらこちらに向いてくるのが分かる。


だが、前のような私を憐れむでは無く、空気を読め、と言わんばかりの眼差しだ。


レインも、少しは朝の騒ぎを聞いている筈なのに、本当に自由な人だわ。


「私達と一緒に帰ったの。それがどうしたの?」


背後から少しイラついたカレンの声が聞こえた。隣には私の鞄を持つフィーが同じように嫌悪感丸出しの顔でたっていた。


「ああ!カレン様だ、本当だったんだ!凄い、いいなあ、私もそれなら一緒に帰りたい」


本当だった?嘘だとでも思ったの?


また、気持ちが落ちる。


無邪気に笑いながら私を押しのけカレンの前に来た。


ぐっとカレンの眉が吊り上がった。


「あら、丁度良かったわ、王子」


その様子を見て慌てて殿下が走ってき。


「この子あなたのご友人よね?この国では平民が、帝国皇女に馴れ馴れしくするように教育されているみたいね。あなたよりも平気でぞんざいな喋り方の上に、朝の誰かさん達と同じで、公爵令嬢に対しての不躾な態度。本当に、あなたの周りにはあなたにぴったりのご友人ばかりが集まるわね?それともこれは新しい嫌がらせかしら?」


「嫌がせではありません!!」


殿下は庇うかのようにレインの前にすぐさま立ち、顔を強ばらせた。


殿下が、私ではない誰かを護る姿に胸が痛くなった。


「申し訳ありません、帰るぞレイン」


「う、うん。・・・申し訳ありません」


さすがに2人の威圧に押されたようで、珍しくきちんと謝り、少し顔を青ざめていた。


「では、失礼します」


自分の鞄を持ち、逃げるようにレインの腕を掴み去っていった。


「私達も帰りましょうか、フィー皇子様、カレン皇女様」


「そうね」


「そうだな」


私達が歩き出すと、まるで道を開けるかのように、誰もが退いた。


良かった、です。


そんな嬉しそうな声が聞こえた。


公爵派の人だ。


足を止め、振り返ると目が合った。


何人かすっと頭を下げ、頭をあげると、輝く瞳を私に向け微笑んだ。


それを振り切るように、また、歩いた。

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