第8話またまた、どうして?

これは・・・どういう事・・・!?


クルリ!!!


「凄い!!そっくりだ!!」


「でしょう!!お嬢様ったら全然分かってくれないんですよ!!ここ、ここ見てください。このレースの段差と、フリルの仕様。細かく書いてあったから、その通りに寝ずに頑張って作ったんです」


ちょっと私を無視するの?


それに寝ずにですって?


はっ!


あの時だ!


凄く眠そうに朝やってきて、頑張りましたよ、と意味不明な事を言ってるわね?と思っていたけど、この事だったのだわ!


「え、これ?ちょっとわかんないよ。本見せて」


「分かりました。もう、マニアと言うなら覚えていてくださいよ。これです!!」


用意していた本を広げ指差すクルリと、見た事ない恐ろしいまでに食いつくカレン様に、色んな意味で逃げ出したい心境だった。


クルリ、相手は皇女よ。そんな馴れ馴れしく話をするものじゃないわ。


クルリ、もう少し、丁寧に喋って。


クルリ、お茶のおかわりしてあげて。


ああ・・・もう、胃が痛くなりそうだわ。


学園の授業が終わり、お2人の馬車に乗り屋敷に帰ってきた。


帰るとクルリが出迎え、こちらです、と案内してくれる様子が何だか異様な空気を感じたのが、的中した。


あら?いつもと違う客間に案内するのね??


と思っていて入ったら、


ビビの服が用意してあった!!


あの時断って、


封印して!!


と言った服と、それ以外の服が4着も用意されていた。


それをカレン様は見るなり、大騒ぎ。


そして、クルリと意気投合しこんな流れになっている。


それも、ソファに2人で並び座り、あれやこれやと盛り上がっている。


絶対有り得ない状況だ。


召使いがソファ座ることは、許されない。


それも、主の娘である私は突っ立ている。


その上その上、帝国の皇女様相手にほぼタメ口。


というか、私よりも親しく話をしている。


「フィー!!」


「はい!!」


私の脳内も神経もおかしくなっていた。


後で考えたら、呼び捨てなんて絶対考えられない。


「ど、どうした、スティング」


おどおどとしながらも私の側にやってきた。


フィー様も動揺していたのだと思う。だって、私を呼び捨てにしているのだもの。


「フィー、あなたしか私の味方はいないわ。あのままじゃ私はあの服を全部着ることになるわ。それって、それってコスプレという事でしょう!?どうにか辞めさせてよ!」


がっ、とフィー様の手を握りをまっすぐに見つめた。


「私はそんな恥ずかしい事したくないの。カレン様があの本を好きなのは分かるわ。別に私がビビのに似ているのもかまわないわ。でも、ビビの服を着るのは嫌よ!」


あの本が人気があるのはいい事よ。その売上の1部が税金となり、国を潤す。売れば売れるほど国は潤う。


分かってはいるけど、私は嫌よ。


「どれから着て貰う?これ?」


「いいえ、小説の順番通りに作りましたので、この桃色の服です」


昨日見たフリフリのやつだ。


「しまった・・・、失念していた。これ順番通りなのね!?」


「はい、カレン様!!」


「フィーどうにかしてよ!!」


「その、俺としは・・・ビビと言うよりも、あの服はスティングにとても似合うと思っている。別にカレンを擁護してる訳じゃないんだ。スティングは昔からあまり派手なのも、可愛いのも着ないのも知っている。いつも大人しく、1色のドレスしか着ていない。だが、フリルが沢山付いていて、可愛らしいのも似合うと思うんだ。だから・・・少し見てみたいと思っている」


少し恥ずかしそうに言われたが、つまり肯定されているという事だ。


「お嬢様、ではあちらで着替えましょう」


え?


「楽しみ♪」


え?


「いやあ、まさかここまで服のレベル高いと思ってなかったわ。着替えたらテンションマックスになるわ」


え?


「私もです!こんなに話が合う方がいて嬉しいです。さ、お嬢様早く」


「ちょっと待ってよ!!」


2人盛り上がりについて行けなくて困惑した。


「スティング、あのさあ、コスプレとか考えずに作ってくれた服がビビが着ている服に似ている、というだけだ。・・・似合うから」


私を宥めようとして、フィー様が優しく声をかけてきた。


「・・・はあ・・・。そうですね。あの様子では諦めてくれなさ・・・。申し訳ありません!!」


少し冷静になって気づいた。


急いで手を離すと逆に掴まれた。


「いや、構わないよ。それよりも俺としては呼び捨てくれて嬉しいよ。俺も今スティングの事を呼び捨てしてるから、おあいこだ。それにカレンも名前で呼び会えたらいいな、と言っていたからさ」


「その様な事は出来ません。冷静さにかけてしまい申し訳ありません」


「いいって。だってさ、あの様子だとあの2人、これからも大騒ぎになるぜ。それなら、俺達も仲良くなった方が楽しいだろ?それに、カレンがあんなに楽しそうに笑ったのは初めて見た。なあ、カレン?」


振り向きカレン様の所へ歩いていった。


「なあに?話しは終わったの?」


「まだ途中だ。スティングがさっき俺の事を呼び捨てにしてくれたんだ」


「え!?ずるいわ!じゃあ、私も呼んでよ」


「ほらな」


得意げに言いますが、そんな簡単に頷けません。


「お嬢様、お困りのようですが、このお2人からのある意味命令ですよ。それは従わないといけませんねえ」


もう、どっちの味方よ。


睨むと、クルリは全く動じず笑うだけだった。


「そんな堅苦しく考えないでよ。私達だけの時だけ呼んでくれたらいいからね」


ねっねっ、とカレン様が私の周りでねだってくるから、


「・・・分かりました。では、カレン、フィー、とお呼びします」


 と言うしかなかった。



その後は、私にとって中々辛いファッションショーとなった。


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