第7話学園でのお昼2
「美味しかった!」
「ああ、久しぶりにこういうの食べたな」
喜んでくれるお2人によかった、と安心し、デザートはナッツがたっぷりのったケーキをお2人に渡した。
「美味しそう。ナッツの上のソースは何?」
カレン様が受け取ると、直ぐに口に入れ、幸せそうな顔を見て、可愛いと思った。
「ラズベリージャムです。前回はレモンソースにしたのですけど、今回ちょうどラズベリーが余っていたので使ってみたのです」
「自分で作ったのか?」
「これを!?」
「・・・お菓子作りは好きでして、いつも何か作ってデザートに持ってきます。あの、お口に合いませんでしたか?」
「凄い美味しいよ、やっぱりビビだね!」
いえ、違います。
「確かに美味い」
「それは良かったです。飲み物もありますよ。今日はレモンジンジャーティーにしました。甘いお菓子にはさっぱりしたお茶が合いますから、これにしました。どうぞ」
「もしかしてこれも?」
「作ったのか?」
「そんなに難しくないですよ。でも、そんな風に喜んで頂けたら嬉しいです」
「ねえ、このお弁当にしても、デザートにしても、本当はガナッシュ王子の為なんでしょ?」
痛いところをカレン様は容赦なく突いてきた。
だが、このお弁当の量にしても、デザートにしても、お茶にしても、1人で食べるには明らかに多いのは一目見てわかる事だ。
中等部まではずっと一緒に食べていた。
高等部になり、レインが現れた時も、初めは一緒に食べていた。私の作るお菓子が美味しい、と言ってくれた。
それが少しづつ減り、1年の半ばになる頃には、一緒に食べる事が無くなった。
でも、レインが体調が悪くて休んだり、役員の仕事等でいない時に、私を誘ってくれた。
それが何時になるのかは分からないが、何時でも誘ってもらえるように、毎日準備している。
無駄だ、とお兄様に言われたが、それでも、諦める気持ちを手放せなかった。
「・・・見透かされていますね。兄からも、もう辞めた方がいい、といつも言われています。だから、こうやって人気のない所で食べています。でも・・・もしかしたら、と思ってしまうのです」
私の殿下に対する愛は変わらない。
ただ、殿下の私に対する想いが少しだけ小さくなってしまったのだけだ。
「他国の内情に首を突っ込みはしないが、あの状態の2人を見る限り、一緒に昼を食べる事は確率的に少ないだろう?」
フィー様が苛立ちながら、お茶を飲まれた。
「・・・そうですね」
的確な言葉だ。
帝国皇子が、他国の王子に関わっては外交関係に発展する場合があるし、あの2人の間には誰も入れないだろう。
優しいですね。
遠巻きに私を心配して下さっている。
「だったら、明日から一緒に昼は食おう。カレンもそれでいいだろ?」
「お!!やっと行動に」
「カレン!」
また、慌ててカレン様の言葉を止められた。
「それは、ご迷惑ではありませんか?」
本当に?と素直に喜ぶ自分に驚きながらも、冷静に聞けたよね?と思う。
「そんな事はない。正直食堂の食事に飽きていたし、せっかく友達になったんだから、一緒にいてもおかしくないだろ?」
「うんうん、確かな飽きた。私的には、目の前にヒビがいるのが嬉しいし、もっと仲良くならないとお母様に手紙を出した意味が無いものねえ、フィー」
また、意味深な言い方で、それも意地悪そうに笑いながらフィー様を見た。
「皇后様にお手紙?私と関係があるのですか?」
「余計な事を言うな。ともかく、俺達は迷惑じゃないから、明日も一緒でいいか?」
何故だか恥ずかしそうに言いながら、カレン様を睨んだ。
「それは構いません。殿下と食べれるのは、言われるように確率は低いですし。その・・・友達ですもの」
「やった!明日から楽しみだな。ねえ、他のデザートも作れる?」
「多分、何かリクエストがありますか?」
「私はシュークリーム」
「俺ミルフィーユケーキ」
「お2人とも、以外に面倒なデザートを言われますね」
本当ならこんなこと言うのは失礼なのだろうが、この雰囲気にとても心が和やかになり、笑いが出た。
「そうなの?無理?」
「難しいのか?」
しゅんとなるお2人に、首を振った。
「いいえ。大丈夫ですよ。では、今度作って持ってきますね」
「週末遊びに行く時に出せる?」
「本当に来られるのですか?」
社交辞令立と思っていた。
「当たり前よ。今日だって行く気満々よ」
「俺も」
「分かりました。では日曜日で宜しいですか?毎週土曜日は、王宮で殿下とお茶をする決まりになっています」
「勿論!やっと楽しくなってたね、フィー」
「・・・お前が余計な事言わなければ俺はもっと楽しいよ」
ため息をつきつつ、またカレン様を睨まれるフィー様がよく分からなかったが、この空気を無くしたくなかった。
「スティング様デザート食べてないよ。じゃあ私がが食べさせてあげるよ」
「お願いします。でも、ビビではなく、スティングとして御願いますね。友達ですもの」
すっと出てきた素直な気持ちの言葉に2人はとても嬉しそうにしてくれた。
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