問えば響く君の答え~バトル・オブ・ドラグーンより~

大月クマ

プロローグ

 その昔、この星は様々な種族が暮らしていました。

 魔術を使うホワイト・エリオン族。

 科学を使うグラウ・エルル族。

 陸を制するヒューリアン族。

 海を制するマーメリアン族。

 空を制するニーナ族。

 地底を制するドリーアン族。

 そのほか様々の種族が、数千年間、お互いに干渉することもなく暮らしを続けていました。

 でも……今から1000年ほど昔、天からの『ソレ』によって、終わるときがやってきました。


 ペトローレウム。


 のちにそう呼ばれる小惑星がこの星の重力に引き寄せられ、大小三つに砕け、赤道付近の海面へ落下しました。

 その小惑星の落下によって静かだった世界は変わった、と記録されています。

 陸は唸り、海は荒れ、空は焼け、世界は絶望に包まれました。

 舞い上がった塵により数十年にわたり太陽の光が届かなくなると、世界中で食料が取れなくなっていったそうです。

 そして、人々は食料を、豊かな土地を求めて、土地の奪い合いが始まりました。

 今まで干渉することの無かった種族間でも――

 人々は生き残りをかけて、絶え間ない争いを繰り返していました。

 そんな時でした。


 ドラグーン。


 そう呼ばれる巨大生物が、小惑星の落ちた場所から現れたのです。

 争いの中でも、復興し始めた世界に襲いかかり、大地を喰い荒らしていったのです。

 巨大な翼に、巨大な腕と脚。かぎ爪は岩おも引き裂き、その皮膚は鉄のように堅く、巨大な口からは、魔術を使わずとも火球を放てます。

 その火球が幾人の人の命を奪ったことでしょうか。

 明らかにこの世界の生物とは異なる進化を遂げた化け物。

 人類の敵、と真っ先に学校では教わりました。

 それが、ドラグーンです。

 共通の敵が現れたことで、ようやく人々は争いを止められました。

 この星の人類として、生き残りをかけて手を取り合うようになったのです。

 そして、腕の立つものが武器を取り、巨大鳥や竜に跨がり、大空でドラグーンと対抗していきました。


 この数百年近くの間――


 何度も何度も打ち負かされてきました。だけれど、人類共通の敵であるドラグーンに対して、種族を超えて挑み続けてきました。

 それはいつしか武器は槍や弓から銃に変わり、巨大鳥や竜は金属の塊、飛行機へと変わります。

 そして、ドラグーンも武器さえあれば恐れずに足りないと、までになってきた……はずでした。しかし、未だに勝敗は8対2と、いったところでしょうか。

 人類はドラグーンに勝てる武器を手に入れたはずなのに、未だに年に1、2個の割合で村が消えます。

 ですが、この先も人類のドラグーンへの戦いは続くでしょう。


 彼らがこの星を貪る限りは……いえ、わたし達が生き続けるかぎり、負けるわけにはいかないのですから――

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