第2話
美術の時間。自分の手を描くという授業だが葵はうまく描けない、なんなら時間に間に合わず宿題として持ち帰って絵の得意な希菜子に描かせようと目論んでたりもする。もちろん希菜子はあっという間に描き終わって違う紙に葵の横顔を描いている。
途中であのずぶ濡れだった校長も顔を覗かせて高橋先生に授業はどうだと声をかけたり生徒たちの絵を見てから美術室を出て行った。葵は校長の靴の音がうるさくてしばらく集中できず、進まなかった。
するとそんな希菜子の横に先程怪談話をしていたクラスメイト二人が来た。彼女たちも美術が得意で先ほど終わらせてきて同じく葵を描いている。
「たくっ。モデル代、いただくわよ」
葵は少し顔を歪める。変顔だ。
「じゃあ探偵気取りの葵様にまたもやあまり信じ難いお話を」
「探偵もどきとか言いながらも話をぶっかけてくるわね」
クラスメイトはふふふ、と笑った。
「最近私たち変な噂を聞いてさ。ちょっと謎を解いてほしいと思って」
「ん、謎?」
謎、と聞くと黙っていられないのが葵。
「残り五分ー」
高橋先生が葵をじろっと見ている。まだ輪郭しかできていない。どう見ても間に合わない。
だが謎が気になる。
「この学校の七不思議の中には人骨模型が夜に理科室を抜け出すというのがあるんだけど、数ヶ月前にここを守衛さんが辞めてしまったんだけど……理由は夜遅くに音楽室に明かりがついていたから見に行ったら人骨模型が踊っていたんですって……だからそれが怖くて辞めたんじゃないかって」
とクラスメイトたちは震え上がる。希菜子も怖いねーと言うと葵はため息をついている。
「まずもって人骨標本の入ってるところは確か鍵がかかってるよね。昔生徒がいたずらで肝試しやってて使って壊して。あれってひとつ五万近くもするのよ
「でも鍵があれば誰でも……」
葵は首を振る。
「生徒は簡単に鍵を借りれない。職員室まで行かないとね」
「そうか、先生しか取り出せない……理科の御嵩先生? 使った後は丁寧に拭いてるし」
再び葵は首を横に振る。
「前回の人骨模型の損失で理科室の責任者として警告を受けたわけただろうし、丁寧に拭いていたのも高額な器具だから。次壊したりでもしたら責任者として弁償とか言われたんでしょうね」
と葵が言う。
「さすが。じゃあ葵、他に何が考えられる? 鍵かかってたら人骨模型も出られない。確実に誰かが鍵を開けた可能性はある。そしてちゃんと鍵をかけ閉めている」
希菜子も前のめりで聞いてくる。葵はそうだなぁと考えている。
クラスメイトはキョロキョロ見渡して高橋先生が違う生徒に指導しているのを確認して小さい声で言った。
「高橋先生は? あの人は教師の前は画家もしてて作風はあのモノトーンな身なりからわかるけど髑髏モチーフなの!!」
と美術室に飾られている高橋先生の作品を葵は見る。確かに髑髏がモチーフとなっている。おぞましくて高校の美術室にふさわしいものではないが芸術的には素晴らしい、と校長は褒め称えていた。一部の生徒たちには不評だが、絵心のない葵にはすごいなぁと思うのであった。
「だと言ってもわざわざ鍵がかかってる棚の鍵を借りてまで描こうとは思わないだろうし、それに髑髏をモチーフにした作品の作者名……
「それは気づかなかったー。じゃあ今は髑髏モチーフ描いてないから人骨模型は御用なしね。じゃあ高橋先生は無し……やっぱり七不思議の一つ、人骨模型が毎晩動き出す……オバケの仕業かしら」
葵はやれやれと笑っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます