7章

春に産まれし子どもたち

 春になり、暖かさが増してきた。桜の花がポンッと咲いた日に二人の男の子が産まれた。


 黒髪で目はグレイと金色の目をしている。産湯に入れてもらいスッキリしたのか、じっとこちらを眺めている。


「双子ーーっ!?」


「うん……そうだったの……」


 リヴィオが驚いている。私もすっごく驚いたわよ。疲れ切ってベットに寝てる私と小さな赤ちゃん二人の顔をキョロキョロと何度も見比べる。


「驚いた!……えーと、セイラ……体は大丈夫か?」


 お医者様のアランが心配するリヴィオの姿を見て、微笑ましそうに眺めて言う。


「リヴィオ様、セイラ様は大丈夫です。バッチリ安産でしたよ。でも疲れているので、休ませてあげてください」


 良かったとリヴィオはフッと笑い、そっと手を握ってくれる。ツンツンしてる猫がデレた時の可愛さとはこんなものだろうか?とそんなことを考える余裕のある私だった。


 乳母のアンネとグレイシアが待機してくれてテキパキとなんでもしてくれている。……貴族って感じだわ……と、私の感覚は庶民派なので、戸惑ってしまう。


 小さな赤ちゃんの手や頬を壊れ物に触れるように、ツンツンしているリヴィオは距離があるわねと可笑しくなる。


「リヴィオ抱っこしてみる?」


 えっ……と困った顔をするリヴィオ。ダラダラと冷や汗が出てる気がする……そこまでなの!?前にミリーに練習ですよ!と言われてしていたのに、やはり苦手意識があるらしい。


「う、うん……」


 グレイシアが坊ちゃんにも苦手な物があったんですねと目を丸くして驚いている。


 そーっと壊れ物を抱っこするように恐る恐る触れるリヴィオはなんだか可愛らしかった。腕の中におさまるとホッとした顔をした。そして優しく笑った。双子の子を交代に抱っこしてみている。


「うちの子、美形すぎるだろ」 


 ………私も親バカに、そうねとリヴィオに同意しかけて、ハッとする。いや、まだお猿さんみたいなのよと冷静になるのだった。リヴィオ、落ち着いて!目に親フィルターかかってるわ。


「あのヤンチャな゙リヴィオ坊ちゃんが……親になるなんて……」


 リヴィオの乳母を務めたグレイシアの目が潤んでいる。


「公爵家の馬を触るなと言われてるのに馬具もなしに勝手に乗り回し、鶏小屋の卵をコッソリ全部回収してコックたちの帽子に詰め込んだり、お父様の大事な来客中に木から自作弓矢を放ったりお兄様方に喧嘩をふっかけては泣かして……」


「やめろ!思い出にふけるなら良い方にしろよ!なんでそっちなんだよ!?」


 何か良いことありましたか?とグレイシアが一生懸命思い出している。


 ……エスマブル学園に公爵家の坊ちゃんなのに入学させられたのって、もしかして?


 私の頬に一筋の汗が流れた。………よしよしと二人の可愛らしい赤ちゃんを撫でて言う。


「頼むわよ。おりこうにお願いします」


 お願いします!と拝みたい。今の話を聞いてると、今は愛らしい双子の男の子の赤ちゃんなのに嫌な予感しかしない。


 グレイシアとアンネがリヴィオ坊ちゃんの子どもですからねぇ……と不安そうに口にするのだった。


「男の子はヤンチャなものだろ!」


 ヤンチャすぎるんですよ!と乳母達からツッコミをもらった。


 親になった日のリヴィオと私はやはり急には変わらず、いつもどおりの私達なのだった。

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