転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ！

朝定食を食べたくて

「おはようございます」

「おはよう」

　朝の挨拶をし、朝食の会場へ行くお客様達。

　旅館の朝食は宿泊客にも好評を得ている。バイキング形式で食べれるのが『海鳴亭』。個室でゆっくり朝食のお膳が食べれるのが『花葉亭』。どちらもお客様は朝から豪華な食事を食べて満たされた気持ちになるよと言ってくれる。

「牧場のしぼりたて牛乳あるわよ」

「スープが３種類？迷っちゃうわね」

「卵料理はオムレツ、ゆで卵、温泉卵、玉子焼き？えー！どれにしようか！？」

　バイキングの会場はにぎやかだ。私も迷うからわかるわとニコニコしつつ、見守る。

　朝のお風呂を入ってから来る人もいる。ホカホカの顔をして、温まった〜と冷たいフレッシュジュースを飲んだ。

「あらっ？」

　私は見覚えのある顔に気づいた。

「ジーニー！？どうしたの？」

　優雅に窓際の席に座り、朝食をとっている。

「ん？セイラ、おはよう」

「宿泊はしてないわよね？まぁ……朝食だけもオッケーなんだけど、わざわざ？」

「たまに来てるんだよ。ここの朝食、気に入っているんだ。後、この席もね」

　ジーニーは海を見ながらゆったりと朝食を食べているようだった。

「そうだったのね。ジーニー、言ってくれたらタダにするのに……」

　旅館経営だけでなく、領地経営が忙しい時やアドバイスが欲しい時は必ず力になってくれるジーニーだから、お礼をしたい。

「永久朝食サービス券を発行しておくわ！」

「いいの？」

　ジーニーが笑う。私も良いわよと笑う。

「それは嬉しい。気軽に食べにこれるな」

　エスマブル学園の食堂もあるけど、たまに気分転換したいんだ。……そう彼は言った。

　王都から近い、この『海鳴亭』。ジーニー……私は知ってるわよと言いたかった。誰に会った帰りに来てるの？と好奇心で聞きたかったけど、やめておいた。

　私が言う事ではないわね。余計なお世話だし、もしかしたら嫌な気分になるかもしれない。

　そう思い、ただ私は微笑み、いつも力になってくれる友人に朝食のプレゼントをしたのだった。

　リヴィオにその話をすると、ふーんと言った。ジーニーのある噂を持ってきたのは彼だった。

「いや……噂は嘘じゃなかったのかもなぁ……驚いた」

「え？私にこないだ、こんな噂があるって言って持ってきたとき、すごくリヴィオ楽しそうだったじゃないの？」

　確信あってのことじゃなかったの？私が首を傾げてみせると、リヴィオは苦笑した。

「さすがのオレもまだ本人には確認してない。……なんか話を出しにくいだろ！？」

「親友でしょ？」

「オレに聞かれたいか？相手が……」

　そ、そうね……と私は頷いた。私達はとりあえずジーニーから話してくれるまで待つことにした。

　……そう。最近、王都で歌姫エナの舞台に頻繁にジーニーが訪れるという噂があり、もしかしたら二人は恋人ではないか！？と言われている。

　本当ならば、すごく応援したい！それなのに確認できない私達は……なんとなくソワソワするのだった。