【更けてゆく月の夜は賑やかに!】
「おれさまがーやって来たぞー♪」
変な歌を歌いながらやってきたのはエイデンだった。ジャイ○ンの歌のようである。
「なにをしにきたんだよ!?毎回、言うけどな?呼んでないぞ!」
リヴィオにそう無下にされてもハッハーと笑いとばす。
「月見酒をするっていうから、来てやったんだ!」
「恩着せがましい、この方は誰ですの?」
久しぶりにマリアが遊びに来ていた。最近、社交界に戻り、夜会などに真面目に出ている彼女らしいと話に聞く。しかし旅館へ気晴らしですわと時々、手伝いに来てくれたり、私が意識を失い不在だった時には経営の方も力になってくれたりしていた。頼もしく、とても助かっている。
「なっ!?なんだ!?この可愛らしい美人な方は!?」
「まず、人に尋ねる前に、ご自身から名乗ったらいかが?」
エイデンがいきなり跪いて、マリアに言う。リヴィオが口を開く前に、さすが彼の妹だけあって、スパッと物を言う。
「不躾なところを見せてすまない。エイデンと言う!そこの生意気なリヴィオやセイラとはクラスメイトだったんだ」
「わたくし、そのリヴィオの妹、マリアですわ」
「えっ!?なっなっなんだってええええ……そんな……こんな可愛い人が!?似てないんだが?」
「帰れ!月見酒は静かに飲むものなんだぞ!」
リヴィオが追い返そうとするが、そこへワイワイと屋敷から使用人達が、旅館の方からスタッフ達がやってきた。今日は慰労会も兼ねている。
「エイデンさん、また来ていたんですか?」
「一緒にお月見会しますかー?」
なんて、声をかけられて、いい気分になっているエイデン。私は半眼になりつつ、仕方ないわねと呟く。
「ほんとに……もう……ナシュレに来すぎなのよ。街の人まで名前を覚えちゃってるわ」
エイデンは私やリヴィオの声など、すでにどうでもよくなっていて、マリアの方に行っている。
「マリアさん、どうですか!?月見団子など一緒に食べませんか!?持ってきますよ!」
ブッフェスタイルのため、甲斐甲斐しくエイデンはマリアのために美味しいものをとってこようとしている。
「なんだ。あれ?」
リヴィオが呆れている。
「でも……なんのかんのとナシュレの復興のために非番の時は来てくれて、街の人のためにボランティアで働いてくれていたみたいよ。悪い人ではないのよね……」
満月をお酒に映して飲んでいる……こっそり風流なことをしていたリヴィオが顔をあげる。
「そうだが、静かに飲みたいだろ?絡まれずに!」
「静かにって無理じゃない?」
ホラと私が指差すと、リヴィオのところへやってくる使用人やクロウ、トーマス達がリヴィオさん!旦那様!一緒に飲みましょう!と声をかけてきた。
「うわ!なんだよ!?静かに月を眺める会だろ!?」
……それは日本人的な文化じゃないかなぁ?皆、踊りだしそうなくらい楽しそうに話したり、食べたり飲んだりしている。
「リヴィオさん、何言ってるんですかー!満月が空から消えるまで騒ぎますよおおお!あれ?エイデンさんも来てたんですねー!アハハ!」
何故かすでにテンションが高いフリッツまでやってきた。
「こうなると私は思ってたわ……」
なんでだよおおお!とリヴィオは皆に連れられていった。私はモテるわねぇと笑った。
「マリアさーん!このフルーツサンド美味しいですよー!今、持っていきまーーすっ!」
……まだエイデンはマリアに良いところをみせようと、頑張っている。
にぎやかに満月の夜は更けてゆく。
ミラだけはのんびりと月を見つつ、旅館の温泉に『フッ……今夜がチャンス!温泉をひとりじめよー!』と入っていたらしい。
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