6章
鏡の世界
アサヒとヨイチがナシュレに来ていた。
「日本から来て、助けてくれたのか!?シンが来たのか!?それと、あっちのセイラさんのカホっていう人!?会ってみたかったなぁ!」
私は驚く二人に助けてくれてありがとうと言うと、ヨイチとアサヒが少し泣きそうな顔をした。
「あんなことになる前に、あいつのこと倒せばよかったよ!」
「守れなくてごめんね」
「一瞬だったもの。誰でも無理よ。私こそ……なんだか足手まといになってしまって反省してるわ」
なんで反省!?と双子とリヴィオに言われる。
いや……でも本当に、もっと反射神経良ければなぁとか油断していたなぁとか……そのせいでリヴィオやみんなをとても悲しませてしまった。二度と無いように反省だわ。
「ところで、フェンディム王国なんだけど、魔物が順調に減っているし、特に北から増えていた魔物が明らかに減った。復興しやすくなってきたよ」
ヨイチがそう報告する。リヴィオがよかったなと笑う。アサヒは魔物のことより……と、さっきの話が気になっていられない!とソワソワとしている。
「つまり、同じ魂を持った者が触れると、元の世界のあるべき場所に帰るってことなんだろ?」
「……そうみたいだな。どうした?」
「じゃあ、いつか俺たちも、もう一人の自分を見つけたら帰っちゃうのかな?」
私とリヴィオは顔を見合わせた。確かにアサヒの言ってることはわかる。
「まぁ、この世界にもう一人の自分が、存在すればの話じゃないか?」
「そっか……出会う日が来るのかなぁ」
ヨイチが帰りたいの?と、落ち着いた声で、アサヒに尋ねる。
「いや。単なる疑問だった!」
ふーんとヨイチは相鎚を打つ。意味ありげだなっ!なんだよー!とアサヒがムキなって喧嘩になるかと思った時、ナイスタイミングでクロウがお茶とお菓子をメイドと共に持ってきた。
「塩のお嬢様は遊びに来ないんですか?とても可愛らしい方でしたな」
ハッハッハ!と笑う。
「塩のお嬢様??」
私が誰のこと?と眉をひそめるとリヴィオが苦笑する。
そしてカホがソフィアとサンドラに塩を投げつけた話を聞いた。ブッと危うく私はお茶を吹き出しかけた。カ、カホ!?
その事件から、屋敷の者たちから、あの対応は心の底からスッキリした!なんという面白い娘だ!とカホは人気があるらしい。
「シンの趣味がわからない……」
「すげー女子高生だな」
ヨイチとアサヒは困惑している。もう一人の私は元気が良すぎる。
「ま、まぁ、そういう彼女だからこそ、私も力をもらえるのよ」
ニッコリと笑って、もう一人の私をフォローしておいた。
「ガルディンはセレナと会えたかしら?会えてると良いんだけど……」
「……だといいな」
私とリヴィオの言葉に『は!?』と双子の少年達は声をあげた。
「殺されかけたのに、呑気なこと言うね!?」
「人が良すぎじゃないか!?」
驚くヨイチとアサヒにリヴィオは少し目を伏せて話す。
「オレはセイラを失いかけて……黒竜の力をすべて使っても良いと思った。その後にたくさんの人々が苦しもうとも構わないと思ってしまった。オレはあの亡霊が自分の心の鏡のようだと感じた」
「ちょ……ちょっと!そんな危険なことを!?」
私は今更ながらに動揺した。
「自分勝手になってしまうほどの悲しみや憎しみは誰でも持っている……今なら、愛する者を失ったガルディンが過ちを犯してしまったことも少し理解できる」
ヨイチが白銀の狼の力があってよかったよと呟く。
「そうなったら、全力で僕らが止めるよ」
神対神の戦いになるんだけど!?私はさらに、ちょっと!?と焦る。
「あの……私一人の命と引き換えに人類の存亡をかけないでもらえる?怖いんだけど!?」
重すぎるわ!愛がこんなに重いなんてどうかと思うの!リヴィオがジロッと私を見た。
「だからこれからはオレを庇って死のうとか、残していくなんて考えないことだな」
……言い返せない。
クスクス笑う双子は言った。
『セイラさんに、国の存亡がかかってる!』
本当にそのとおりだと思った。
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