トーラディム王国
白い石畳。家々の前には色鮮やかな花が飾られ、人々は楽しげに歓談している。
街の規模が大きい!王都ウィンディムよりもはるかに大きい!遠くに見えるのは王城と神殿だろうか?
時計台に噴水広場。都会的で洗練された町並み。お店の種類も豊富で、活気に満ち溢れていた。治安も悪くない。
「すごい!大きい都ね」
「そうかー?」
「普通じゃの」
………私の感動する言葉にリヴィオとアオはあっさりとした反応を返す。何度も来たことがあるのだろう。
おのぼりさんは私だけですかー?
『パンケーキ専門店』!?
「あっ!あのお店がいい!!」
私がキラキラした目で、言うとリヴィオが……本気で観光だったんだなと言った。
「だから言ったじゃないの!見てくるだけだからって!あっ!お金作らないと……」
リヴィオがポンッとこの国の通貨を渡してくれる。
「あ、そっか。前に来たことがあるから……」
「そうだ。ところでなにと換金しようとしたんだ?」
これよーと袋の中を見せる。宝石の屑を鉱山から買い取ってきた。
「………出すときは、一粒にしとけよ?」
「えっ?」
「この辺で買い物をするなら、それで足りるからな?パンケーキをどんだけ食うんだよ!?」
相場がわからないんだもの。と言う私に2割ほどこっちの国のほうが物価は高いとリヴィオは言った。
「とりあえず食いたいなら、店に入るか」
「やったー!」
メニューも豊富!パンケーキ専門店なんて日本のカフェみたいじゃない!?
「私はこのベリー・ベリースペシャル!とカフェ・ラテ!」
私の食べる生クリームたっぷりのパンケーキをリヴィオとアオは見てるだけで、胸焼けしそうと見守っている。
「次は……あっ!本屋!本屋さんもいいわね。うわぁ……魔道具屋さんもあるのね。何!?家具とかも可愛い。帽子もおしゃれ!」
「落ち着け……っ!こっちこい!」
いきなり私の手を引っ張って路地裏へ逃げた。
「どうしたの?」
「『コロンブス』のやつらがいた。ここでみつかったらおかしいだろ!?どうやって来たと言われる。気をつけろよ!」
「そうだったわね……仕方ないわ。観光は諦めるわ」
「なんだ?目的ちゃんとあったのかよ」
「失礼ね!ただ遊びに来たわけじゃないわ。観光にも目的ありよ!」
どこ行きたいんだ?とリヴィオ。
「神殿を見てみたいと思ってるの。この国の中枢を担うと言われているところでしょ?」
「あー、まぁ、参拝客に紛れて行ってくるか」
アオは不満げにええーっ!と言った。
「……なんであやつの神像など見に行かなければならんのじゃ」
すごく不服そうである。神様同士の関係は良好じゃないのかな?
街の中枢といっていい場所に神殿はあった。王城と変わらない規模なんじゃなかろうか?広々とした敷地、白い神殿は堂々としていた。
白い神官服を着た人達が目の前を通り過ぎて行く。
「あの大神官長様はここの1番偉い人なのよ……ね?」
「そうだな」
屋敷でゴロゴロしていた大神官長様を思い出すと威厳ゼロで……どうもイメージがわかない。本物だったのよねぇ?
「大神官長様は本物だ。セイラに施した術は見たことのない構成の術だった。ましてや異世界を飛び越えて持っていける護符なんてそうそう作れるものじゃない」
顔に出ていたのか、リヴィオは私にそう言う。
アオが付け加える。
「あやつは我々と匹敵する力を持っているかもしれぬ者だ。気をつけよ。トーラディア王国にはそのような者がいてもおかしくない」
「アオに匹敵する人間がいるの?」
まさか……そんな強大な魔力を持っている人はいまだかつて見たことがない。
「まぁ……この国にはいるかもしれねーな。それゆえに魔物からも他国の侵略からも守られてきている国だ」
リヴィオがそう答える。世界を見てきたシン=バシュレの記憶なんだろうと察する。
そんな会話をしつつ、しばらく並び、順番が来たので、神殿内で参拝する。広々とした空間は声を出すと響く。天井がものすごく高い。その目の前には巨大な鳥の像。その像は美しく芸術的である。羽根の一枚一枚が彫られ、目には輝く宝石がはめ込まれていた。
圧倒される。……これがこの国の神様。
「美術品といってもいいわね。すごいわ」
参拝がすんで、私が感心して言うとアオはやはり苦い顔をしていた。
「スカしたものを見てしまった……奉られておるわりに、仕事はなんにもしとらんがのぅ。妾の方がしているのに………」
ブツブツと小さく愚痴をこぼすアオ。
「この国を見たところ……」
うん?どうだった?とリヴィオが私に感想を求める。
「銭湯も温泉もなさそうね。ここに支店……いけるわね!」
「おいっ!」
「ここにも1つ温泉旅館か銭湯をつくろうかしら?民も余裕ありそうだから、流行るわ」
「おまえ!?ここに来て、そんなこと考えてたのかよ!?」
私の構想にツッコミを入れるリヴィオ。
「視察のついでよ!ちゃんと役目もわかってるわよ。ほら!この国の歴史書とか魔法書も買って勉強するし!」
私はそう言葉を付け足したのだが……
「どっちがついでなのか気になるところじゃな
」
「ここにきて、その発想が恐ろしいな。セイラの商売人根性が……シンヤだってそこまで考えなかったぞ!?おまえ、たくましすぎるだろ!?」
二人は半眼になってそう言った。
「あら?この国だけじゃないわよ。目指すところは世界よ!世界に温泉旅館作って、みんなに楽しんでもらうのよ!」
私は腰に手を当てて、ドーンと壮大な夢を語ったのだった。
リヴィオとアオはこのときばかりは仲良く声を揃えた。
『世界規模!?』
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