第4話 メロスの妹です……

──セリヌンティウスを助けたい。


 3ヶ月前に戻った私は当然そう考えた。


 どうすれば彼を助けられるだろうか。どうすれば兄は事件を起こさないか。


 まず考えたのは婚約を破棄することだ。私が結婚しなければ兄がシラクスの市に行くこともない。


 兄は私の夫にと真面目な牧人を見つけてきた。


 悪くない人だ。名前はちょっと忘れちゃったけど私にはもったいない人だ。真面目なのが良い。すごい真面目な良い人。


 しかし今更婚約を破棄することは相手を侮辱することになる。小さな村でそんなことをすれば私達は村に居られなくなってしまう。


 あんな真面目な良い人にそんな仕打ちをしたら非難されるのは私達に決まっている。


 そもそも原因である邪智暴虐王ディオニスがいる限り、いつか噂を聞いた兄が王宮に乗り込んでしまうかもしれない。


 そうなればなんだかんだでセリヌンティウスが巻き添えになるに違いない……なんか歴史の修正力的なやつで。


 婚約破棄は問題を先延ばしにしているにすぎない。


 やはりここはディオニス王を改心させるしかない。


 疑心暗鬼の王、人を信じられぬ王に人を疑うことを辞めさせるにはどうすればいいか。


──男同士の美しい友情しかない!!

 

 メロ✕セリ。


 これ以外にセリヌンティウスを救う道はない。男同士の熱く美しい友情。愛と信頼。これを見せつけることで王を改心させる。


 つまりメロスに約束を守らせる。王との約束を守らせる。自分と友人の命を天秤にかけた約束を守らせるのだ。


 王は改心するか。改心して二人を許すか。それは賭けだ。王がセリ✕メロ派だったらダメかもしれない。

 

 しかし、例え王が改心しなくとも約束さえ守れば少なくともセリヌンティウスを救うことはできる。


──死ぬのはお兄ちゃんだけだ。


 

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