第28話

 僕はヒマリが帰り、休日は飴色玉ねぎを作り、自転車修理をし、余った時間は小説の執筆をして過ごしていた。

 そして風邪を引いた。


 僕の部屋にユヅキが来て熱をはかる。


「これは、今日の学校は休みなさい」


 ユヅキが先生モードで言った。


「そうだね。今日は、休むよ」

「ユキナがいるから、看病は大丈夫ね。連絡は全部私がやるから、ゆっくり休みなさい。水を持って来るわ」


「ありがとう」


 こうしてメイとユヅキは学校に出かけて行った。

 2人が出かけ、間髪入れずにユキナが部屋に入ってきた。


「シュウ、今日はゆっくりしなさい。何か食べられる物はあるかしら?」

「……ゼリーと、湯豆腐にうどん」

「今日買って来るわ。すぐに食べる?」


「後にする」

「ゆっくり休みましょう」


 そう言ってきゅうを膝に置いて撫でながら、僕の頭も撫でた。

 僕の部屋にパソコンを持って来て、小説を執筆し、きゅうを抱いていたけど、ユキナは急に思い出したように僕の近くに来る。


「おでこに熱があるか調べるわ」


 そう言っておでこを合わせた。

 これ、王道のどっちかが風邪引いたときのやつ!

 でも、気持ちいいな。

 それにユキナの吐息がいい。

 もう熱は測って測定済みだ。

 でも何も言わずに受け入れる。


「そ、そうね。熱はそこそこみたいね」


 そう言ってネットで何かを調べていた。

 しかも僕に見られないように画面を隠している。


 ユキナは無言で僕の頭を膝に乗せた。


「ユキナ、傾きが大きすぎて疲れる」

「あ、ご、ごめんなさい。そうよね、正座だと高すぎるわね」


 そう言って足を延ばしてから僕の頭を膝に乗せた。


「ど、どうかしら?」

「丁度、いいです。柔らかくて気持ちいいけど、でもちょっと太ももが熱いかな」

「そ、そうなのね」


 そう言ってしばらく膝枕を続け、僕のおでこを撫で続けた。

 ユキナの顔が手で見えない。

 恥ずかしくて顔をみられないようにしているのかな?


「きゅう!きゅう!きゅきゅう!」

「きゅう、どうしたの?」

「ユキナが僕にばっかり構ってるから、焼きもちを焼いてるんだ」


「もう、仕方ない子ね。散歩に行きましょう」

「きゅきゅう♪」


 こうしてしばらくすると、ユキナが買い物と散歩を終えて帰ってきた。


「シュウ、湯豆腐とうどんとゼリー、後はプリンも買ってきたわ。今食べられる?」

「ゼリーだけ食べたい」

「すぐに持って来るわ」


 ユキナがゼリーとスプーンを持って来ると、僕に渡さず、僕を後ろから抱きかかえるように起こした。

 そして後ろから抱き着くようにしてゼリーを食べさせる。


「ユキナ、一人で食べられるよ」

「ダメよ、無理は良くないわ」


 僕は赤ちゃんのようにゼリーを食べた。


「ねえ、水分補給も大事よ。水を飲みましょう」

 

 そう言って僕にコップを持たせず、ユキナがコップを持って飲ませる。

 変なプレイを想像してドキドキしてしまう。


「飲み終わったから、ありがとう」

「凄い汗ね。体を拭いて下着を変えましょう」


 そう言って下着とタオルを2枚持って来る。

 

「まずは、Tシャツを脱がせるわ。力を抜いて。大丈夫、私がするから」


 こうして僕は、顔から上半身全部を拭いてもらった。

 濡れたタオルで体を拭いて、その後乾いたタオルで拭いてTシャツを着せてくれた。


「次は下ね」

「ちょ、ちょっと下は」

「そ、そうね。パンツ以外の部分を拭くわね」


「苦しい所はない?やって欲しい事はある?」

「とても、気持ちいいよ」


 僕は汗を拭いてもらうと、布団に隠れてパンツを変えた。


「お、終わったわね。そろそろ湯豆腐は食べられるかしら?」

「もうちょっとすれば、食べられると思う」

「すぐに作るわ。待っててね」


 ユキナは部屋を出て行った。

 僕も恥ずかしかったけど、ユキナは真っ赤だった。

 でも、撫でられて、体を拭いてもらえて、気持ちよかった。


 でも、先輩が赤くなってどんどん体が熱くなって、ユキナのぬくもりに僕は、ドキドキした。




「湯豆腐を持って来たわ」

「ありがとう」

「生姜の香りがする」


「そうね。生姜とお味噌、それと鰹節よ」


 器には食欲をそそるような薬味が入っていた。

 鍋を見るとネギ・うどん・豆腐・ちくわが入っていた。

 シンプルで無駄のない材料にユキナらしさを感じた。


 ユキナが鍋から汁を器に入れて味噌を溶かして混ぜる。

 そして器に具を盛る。


「ふ~~~~。ふ~~~~~~。はい、あーん」


 ドキドキしてくる。

 ユキナのしぐさは女性的で、魅力があった。


「うん、おいひいよ」

「熱くない?味は濃すぎない?」

「丁度いいよ」


「良かったわ。ふ~~~~~。ふ~~~~~あーん」


「あら?スマホに連絡、メイからね。ヒマリさんが心配してるって、ふふふ、そうだ」


 ユキナは僕と同じベッドに腰を下ろす。

 そしてユキナは何故か自分の着ているYシャツの第二ボタンまでを外す。

 そして、僕とユキナのツーショットでスマホのシャッターを切った。


「うあ、ユキナ、写真は得意じゃないんだ」

「大丈夫よ。ヒマリとメイとユヅキにしか見せないから。皆信頼できるわ」


 そうして、素早く文章を打ち込んでスマホで送信していた。


「何て打ったの?」

「秘密よ。食事の続きにしましょう」


 ユキナのふーふー食事プレイが終わると、ユキナが僕に食べさせた器で湯豆腐を食べた。


 ユキナは基本口数が少なく、僕を黙って寝かせてくれる。

 食事や汗をかいた時だけ僕の世話をしてくれるのが心地いい。

 それに風邪も熱はあるけど、頭がぼーっとするだけで具合が悪いわけじゃない。


 僕は間食でゼリーを食べ、水を飲み、ゆっくり過ごす。

 ユキナは何故か時計を何度も見ていた。


「そろそろ汗を拭きましょう」

「今日は変えてもらったよ」


 ユキナが背中に手を回す。


「濡れてるわね。駄目よ。風邪で体が冷えたら治りが遅くなるわ。それにベッドも乾かしたいわね」


 そう言って僕を椅子に乗せてユキナの部屋に運ばれた。

 そしてまたタオルで汗を拭いてもらう。


「ねえ、次は上も下もいっぺんに拭きたいわ。Tシャツを脱がせるわね」

「ありがとう」

「ふ、ふふ、いいのよ」


 遠くから声が聞こえる。


「あれ!お兄ちゃんいない!」


 ユキナは扉を開けて言った。


「こっちよ」

 

 メイが入って来る。


「お兄ちゃん体を拭いてもらってたんだね」


 そして遅れてヒマリが入って来る。


「え?え?何で裸に?ご、ごめんなさい!」


 ヒマリが出て行った。


「……」

「……」

「……」


「絶対勘違いしてるよな」

「ヒマリに連絡しとくね」


 ユキナが昼に誤解を招くような文章を送ったのかもしれない。


「さあ、続きを始めましょう」

「ユキナ、わざとやってない?」

「そうね、でも、こんなに反応すると思わなかったわ……やりすぎたわね」





 


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