第22話
「皆、そろそろ食事にしましょう」
食事をユキナが作り、皆が座る。
僕たち4人は母さんの飲食店の2階の家に住み、父さんと母さんは自転車屋の家に過ごす事になったのだ。
飲食店の2階はリビングもキッチンもトイレもシャワーもお風呂もすべて備えられており、父さんと母さんは基本入ってこない。
母さんの提案でそうなったが、母さんと父さんが一緒に暮らしたいと言うのは分かるけど、何かを企んでいるようにも見える。
メイに聞いても母さんの企みは分からなかった。
ユヅキがユキナに抱きつく。
「ユキナ、ありがとう」
「いいわ。ユヅキは学校があるから忙しいでしょう?平日は私が食事を作るわ」
ユキナがユヅキの頭を撫でる。
ユキナの方が年下だが、ユキナの方がお姉ちゃんに見える。
「ユヅキって末っ子だったりする?」
「え?どうしてわかったの?」
「お兄ちゃん名探偵だよ!」
「……」
「……」
ユキナもユヅキが末っ子だと分かっていたようだ。
ユヅキの行動の積み重ねを見れば分かるのだ。
「どうしてわかったの?」
「ユヅキは、甘え上手なのよ。先生の立場を気にしなくなった素の動きを見れば、分かりやすいわね」
「食事にしよう」
「そんなにわかりやすいかな?」
「僕は気にしなくていいと思うよ。先生モードの時はきっちり先生だから何も問題無いよ。食事にしよう」
ユヅキ先生の先生モードを解除した時の甘え方が、いい。
いつもしっかりしてて、でも、気を抜いた時の甘えたような顔としぐさが最高だ。
「……ギャップは大事なのね。私もそういう魅力が欲しいわね」
全員がユキナを見た。
「ユキナ、冗談で言ってる?」
「本気なのだけど?何かしら?」
「「えええええ!」」
「お姉ちゃんちょろいギャップ持ってるよ!」
ユキナはコーヒーカップを上品に持って上品にコーヒーを飲み、コーヒーカップを優しく置いた。
そして艶っぽい声で息を吐いた後に言う。
「ちょろくないわ」
「ユキナはちょろいと思うの」
ユキナは肩にかかったロングヘアの髪を上品に手で払い、そして言う。
「ちょろくないわ」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんと一緒のパソコンを買えてよかったね。ペアルックだよ」
「そ、そうね。ペアルックよ」
「ユキナ、この前シュウ君にお姫様抱っこをされて部屋のベッドまで運んでもらってたよね?感想はある?」
「い、良いと思うわ。女性なら喜ぶシチュエーションね」
「お姉ちゃん、次はお兄ちゃんに何をして欲しい?お兄ちゃんにお願いするよ?」
「そ、そうね」
ユキナは考えながら真っ赤になった。
何を考えたんだ!?
ユキナは頭が良いけど、妄想力も高い気がする。
「ちょろギャップだよ!」
「ちょろユキナね」
「ちょ、ちょろくないわ」
「食事にしよう。メイ、ユヅキもからかいすぎだよ」
意外と、皆のパワーバランスはいい感じだ。
そう思った。
皆が落ち着き、部屋に戻ると、僕は皆に飲物を持って行く。
学校の仕事をするユヅキにコーヒーを渡し、ユキナの部屋に行くとみんなが居た。
ユキナはベッドに座り、メイはユキナに寄りかかるようにしてタブレットでお絵描きをしている。
ユキナは優しい目でパソコンを開いてみている。
そしてきゅうはユキナに撫でられて丸くなっている。
すっきりとした無地のタートルネックを着て、背筋の伸びたユキナはマダムのように見える。
しかも違和感がない。
まるでお金持ちのマダムが2匹の猫を可愛がるようにメイときゅうを撫でている。
「……コーヒーを持って来たけど、飲むかな?」
「頂くわ。助かるわね」
「マダムユキナか」
「全然違うわよ?」
「ユキナが居ると同じ家なのに違う家にいるようだ!」
「お姉ちゃんが居ると空気が変わるよね」
「そんなことは無いわ」
「ユキナ、机に座って欲しい」
「こうかしら?」
僕はコーヒーを机に置く。
「シュウ、ありがとう」
そう言ってユキナがほほ笑む。
「「マダム!」」
「ユキナ、きゅうを膝に乗せて欲しい」
「こうかしら?」
「きゅうを撫でて欲しい」
「こう?」
「お姉ちゃん!似合うよ!」
「違和感がない!ハマりすぎている!」
「お姉ちゃんはお風呂上りにバスローブを着てそうだよ」
「あら?どうしてわかったのかしら?いつもはそうしているのよ?」
ユキナはマダムだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます