第19話

「シュウ、美人4人に囲まれて良かったわねえ」

「わあ、美人ばかりだね」


 僕は笑顔で答えた。

 でも嫌な予感しかしない。

 そして母さんが口を開く。

 ほら来たよ!


「所で、ヒマリちゃんは高校の美人四天王の話は知ってる?」

「いえ、分かりません」

「シュウに教えてもらいましょうね。私はヒマリちゃんのお母さんと話をして来るわあ」


 そう言って母さんは笑顔で向こうの席に向かった。

 また爆弾か!

 

「美人四天王って何?」

「う、うん。色々あるんだよ」


「私が説明するわね。皆が通う高校には美人四天王がいるわ。四天王はここに座る私達ね。それで、ヒマリさんの通り名は【双丘のヒマリ】よ」


「そうきゅう?」

「ひまりさんは胸が大きいでしょ。広大な丘が2つ。だから双丘なのでしょうね。さ、食事にしましょう」


 そう言ってユキナ先輩は食事を始めた。

 ヒマリが真っ赤になった。


「そう言えば、今日の朝、シュウと話し合ったパソコンの件だけど、シュウと同じペアルックのパソコンが明日届くわ」


「え?朝一緒に?ペアルック?」

「ヒマリさん、気にしないで。大したことじゃないわ」


「でも、ペアルックって、えええええ?」

「ただ、僕と同じ型式の色違いのパソコンを買っただけだよ」


「そうね、朝シュウの部屋でパソコンの操作を手取り足取り丁寧に教えてもらったわ。それで私はシュウと同じパソコンを買う事に決めたのよ」

「ユキナ先輩、手取り足取りはしてないですよ」


「訂正するわ。朝2人だけでシュウの部屋で、パソコンの事を教えてもらっただけね。言い方を間違えたわ」

「あ、ああああ朝!二人きりで!」

「ヒマリ、絶対誤解してるよね」


 そう言ってメイはおいしそうに食事を摂る。


「ヒマリ、誤解だ」

「そうだよ、ユキナお姉ちゃんが私の家に一緒に住むことになっただけだよ」

「え?え?お姉ちゃん!」


「ルームシェアだよ。ただのルームシェアなんだ」


「ヒマリさん、落ち着いて」


 ユヅキ先生がヒマリを落ち着かせる。


「ユヅキ先生も一緒の家に住んでるよ」

「え?あの噂は本当なの?」


「あら、ヒマリさん、それはどういう噂なのかしら?私に教えて欲しいわね」

「ユキナ先輩、それは、言いにくいです」


「言っても大丈夫だよ。私が危ない人に声をかけられたのと、ユヅキ先生がしつこく男の先生に飲みに誘われて、それを守る為にお母さんとお父さんがルームシェアをしようって言ったんだよ」


「え?私はその、ユヅキ先生がレイプされたからって聞いたけど」

「さ、されてないわよ。大丈夫。大丈夫だからね」


 噂って独り歩きしておかしくなったりする。

 母さんと父さん、そしてヒマリの母さんは僕たちの話を聞いてにやにや笑っている。


 またややこしい楽しみ方をしている。

 あっちの席は楽しそうだけど、こっちは話がまとまらないし、何故かユキナ先輩はワザとヒマリに誤解を与えるような言い方をする。


「ヒマリは一回話をちゃんと聞いた方がいいと思うよ」

「シュウが、全部、話してよ」


「僕?僕は説明が苦手だからどこまで伝えられるか分からないけど、今僕の家にはユキナ先輩とユヅキ先生が住む事になったんだ。そして、変な噂は嘘だよ」

「そ、そう、そうなのね」


「所でヒマリさん、シュウの隣の席に移動したいのだけれど、変わって貰ってもいいかしら?」

「は、はい。大丈夫ですよ」


「そう、助かるわ」


 ユキナ先輩は僕に腕を絡ませてもたれかかってきた。


「え?え?」


 ヒマリが焦りだす。


「ユキナさん、あまり人前でそういう事はやめて欲しいわ」

「そうですね。人前で高校生であるシュウとイチャイチャすると、先生の迷惑になります。分かりました。シュウ、また後でね」


「また後で!」


 ヒマリが驚く。


「ユキナ先輩、あまりヒマリをからかうのはやめましょう。それにヒマリは言う事を全部真に受けすぎだよ。もう疲れたしみんな食べ終わった様だから、食事は終わりにしよう」


「あら、私はまだ言い足りないわ。シュウ、ユヅキ先生、メイ、一緒に内緒の話をしたいわ。内緒の話よ」


 ユキナ先輩の言い方で僕たち3人は静かになった。

 僕たち3人は、ベッドでシテいるのだ。

 3人全員が黙る。


「私は!?」

「私は、一緒に住む4人で話がしたいのだけれど、シュウはどう思うかしら?ここに住むルールを色々話し合いたいのよ。住んでいる4人で話し合うのが良いと思わない?シュウとメイのお母さんから色々、そう、色々聞いて話し合った方がいいと思っているのよ」


 ユキナ先輩は笑顔だが、絶対僕たちがシテいる話だ。

 母さんから聞いたように聞こえる。


 ヒマリを見た。

 ヒマリは僕とメイの事は知っているけど、先生と僕の事は知らない。

 ヒマリを呼ぶのはまずい!


「そうだね、一緒の家で生活するならルールは大切だと思うよ」

「そ、そうね。先生もそういうルールは話し合っておくのが良いと思うわ」

「う、うっかり休みはのんびりしすぎて、は、話が出来なかったね。ルールは大事だよ」


 シテいる3人は全員ユキナ先輩に同意した。


「早めに決めておかないと、あ、明日は学校だからね」

「そうよね。私は学生じゃないから、みんなが居る内に話がしたいわ」


 母さんがヒマリに声をかけた。


「ヒマリちゃんは、今日は家に泊まって行かないの?」

「わ、私は制服が家にあるので」


「私が車で取って来てもいいのよ?」

「お母さん、でも……いいです。帰ります」

「その前にメイちゃんに上げるお洋服を渡しておかないとね」

「あ、そうだった!」


 こうしてヒマリは慌てて車の洋服を家に運んだ。

 帰る時、僕とメイの母さんがヒマリに耳打ちした。


 僕は何と言っているか聞こえた。


『このままじゃシュウを取られるわよ』


 そう言っていた。

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