第17話

 僕はその日、小説の執筆の手直しをして眠り、朝早く起きて小説を執筆した。

 ユキナ先輩に褒められて、ドキドキしておかしなテンションになっていたのだ。


「お兄ちゃん、ご飯できたよ」

「今行くよ」


 僕がリビングに向かうと威圧感を感じた。

 美人四天王の3人が揃っているのだ。

 

 メイは慣れているからいいけど、ユヅキ先生とユキナ先輩がいると威圧感すら覚える。

 僕のオタクモブ気質のせいだろう。


「シュウ、早く座ってご飯にしなさい」


 僕は四天王の3人と一緒にテーブルを囲んだ。


「そう言えばシュウにはまだ言ってなかったわねえ。ユキナちゃんが今日からここに住むことになったわ」


「え?母さん、聞いてないよ!」

「言ってなかったのよ、ごめんねえ、それと、今日から美人四天王の3人とシュウで食事を摂って貰うわ」


 待て待て待て!

 何で学校の美人四天王の事を知っているんだ!?

 そして僕と四天王3人が毎日食事を摂るだって?

 え?

 どういうこと?


 父さんは?

 母さんは?


「ふふふふふ、いつも落ち着いているシュウがびっくりしてばかりねえ。

 美人四天王の事は他のお母さんも知ってるわよお?


 桃のユズキ。

 双丘のヒマリ。

 万能のユキナ。

 

 それと、ふふふふふ、リスのメイでしょ?

 さっきみんなで話していたのよお。


 高校の男子は面白い事を考えるのねえ。

 そう思わない?シュウ」


「そ、そっか。父さんと母さんもいるんだよね?」


「私は父さんとラブラブでしょう?2人だけの時間も過ごしたいのよお。


 それにシュウ、良かったわねえ。

 美人四天王と一緒に食事が出来て、ふふふふ、リスのメイだけはおかしいわねえ」


 いやいやいやいや!

 リスのメイはまだ良い方だよ!

 桃のユズキと双丘のヒマリの方がアウトだからね!

 桃=お尻だし!

 双丘=胸だし!


 笑う所はそこ!?


 今日は無言で食事を摂ろう。


「所でシュウ、今日予定はあるのかしら?」


 ユキナ先輩が僕のラブコメ小説を見て何も質問してこない。

 あの小説にはメイとシテる描写や、酔ったユヅキ先生とシテいる描写がある。

 もちろん名前は変えてるけど、絶対バレてる。

 何も言ってこないのが怖いんですけど?


「実は、今日は3馬鹿と暗黒鍋会をするんだ」

「お兄ちゃん、今日は暖かいよ」


「3馬鹿がそんな事で中止にするわけがないだろ。汗をかきながら意地でも決行して食べて体調を崩すんだ」

「そうだね。お兄ちゃんごめん」


 メイはナチュラルに3馬鹿をバカにしていた。

 3馬鹿だからやるよねって顔してた。


「あの3人は相変わらずステ振りを失敗してるわね」


 僕はユキナ先輩の発言で笑ってしまった。

 確かにそうだ!

 3馬鹿のガリは頭は突出していいし、気も使うけど、変態紳士だ。

 急に動いて女子からびっくりされて、いじめられはしないけど、怖がられてる。


 ステータスの振り方を失敗している。

 能力値が偏って残念な仕上がりになっているのだ。


「ぷくくく、さすがユキナ先生、小説家の先生はワードセンスがいいですね」

「暗黒鍋会は何時からかしら?」

「ま、まさか!参加しますか!?絶対にやめた方がいいですって!獣のような目で3人にじろじろ見られて気持ち悪い思いをしますから!でも先輩が来てくれるなら僕は3馬鹿から英雄扱いされますよ!」


「そ、そうじゃないのよ。その、いつまでシュウがフリーか知りたいの」

「2時間後に出かけます」


「シュウのパソコンの型式を教えて欲しいのよ。私もシュウと同じ13、3インチのノートに変えたいのよねえ。これから移動しながら執筆する事も増えると思うのよ」

「僕が使っているパソコンは小さめなので、テンキーが無いですし、ファンクションキーの変換とかちょっと不便ですよ」


「そう、そこも含めて私に教え込んで欲しいわね」


 言い方に引っかかるけど、僕は出かけるまでユキナ先輩とパソコンの話をした。

 話を聞くと、ユキナ先輩は15,6インチのノートパソコンを使っていて、少し大きく感じているようだった。

 ユキナ先輩は僕と同じ機種の色違いのパソコンをネットで注文する。


「ふふ、これでお揃いね」


 そう言って出かける僕を見送った。



 ◇



 電車に乗って北街の駅で降り、歩いて集合地点を目指す。


 ランニングをするヒマリとすれ違ったけど、僕は気づかない振りをした。


 僕は今伊達メガネを外して髪をセットしてまともな服を着ている。

 こうする事で僕と目が合っても気づかないクラスメートは多い、というかほぼばれない


 ヒマリがすれ違った後に戻ってきた。


「シュウよね?」

「そうだね」

「どうして知らないふりをしたの?」


「この格好をしていると、気づかないクラスメートが大半だからね。気を使ったんだよ」

「……どこに行くの?」

「ちょっと近くまでね」

「デート?」

「大した用事じゃないよ」


「私もついて行っていい?大した用事じゃないのよね?」


「3馬鹿と暗黒闇鍋をするんだけど、耐えられるかな?この暑い中室内で鍋を囲んで体調を崩しに行く狂った行いだよ。そして、ヒマリが来れば3馬鹿は喜んでくれると思うけど、全員にヒマリの体をちらちら見られて、僕を含めた4人は確実にヒマリの汗でしっとり濡れた肌に興奮するだろうね。でも、ヒマリが来たいと言ってくれれば今から3馬鹿に連絡するよ。あ、もちろんヒマリが来てくれるなら会費は無料だよ。むしろ無料にするだけで来てくれるなら大喜びで3馬鹿も僕もウエルカムだからね。ヒマリが来てくれれば僕は3馬鹿から英雄認定されるよ。さあ、行こう!」


 ヒマリは不自然な汗を大量にかき、顔が引きつる。

 そして呟く。


「暗黒闇鍋、3馬鹿、何を……食べさせられるの」


「さあ、優しいヒマリなら来てくれるよね?3馬鹿は皆大喜びで迎えてくれるよ」


 僕がヒマリの手を握ろうとすると、ヒマリが僕の手を払った。


「わ、わわ、私ダイエット中だから!」


 ヒマリはダッシュで逃げていった。

 振られてしまったか。


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