第10話
「どういう事?」
「ユヅキ先生から連絡があって、泊まろうとしていた温泉旅館が潰れてて疲れたんだって」
「最近潰れたよな」
どうやらユヅキ先生は北街のアパートからここまで自転車で来ようとして途中でパンクして歩いてここまで来た挙句、母さんのやっている飲食店が閉まっていたようで昼食を食べていないらしい。
更に修理が終わっていざ行こうとしたこの村の温泉旅館が潰れていて、疲れ果ててしまったみたいだ。
しかもメイとユヅキ先生は、いつの間にかスマホで連携を取っており、今からこっちに向かって来るらしい。
「これは、先生に注意しねえとな。シュウが尻ばっか見てるって」
「そうねえ。シュウ、そういうのは良くないわあ。ユヅキ先生にちゃんと伝えなきゃね」
父さんと母さんが邪悪な笑みを浮かべた。
僕は汗を吹き出す。
「そ、そういうのは良くないよ!今日は車で送ってすぐに帰って貰おう」
「シュウ、車で送っても、注意喚起は必要だ」
「父さん、シュウは自分が居ない所で話をしてもらった方がまだマシって考えてるのよ。ふふふふふ、あの汗、面白いわあ」
「シュウとメイが見ている手前、人様に対して、手助けをしている姿を背中で見せる必要があるなあ」
「そうねえ。夕食は5人前ね」
「はっはっはっは!面白くなってきたぜ」
「シュウが焦るのは珍しいわあ。もっと恥ずかしい感情を大事にした方がいいわよねえ。5人一緒に食事をしましょう」
メイを見るとつるっとした顔をして表情が読み取れない。
メイは表情を隠そうとすれば出来るけど、メイの顔はその時の表情だった。
僕がからかわれていると、ユヅキ先生が登場した。
母さんはすぐにユヅキ先生と仲良くなり、家の中に招き入れる。
母さんはコミュ力お化けなのだ。
そして、ユヅキ先生はお風呂に入っている。
母さんは遠慮するユヅキ先生の行動を巧みに誘導し、食事を一緒に摂る所までスケジュールを決めていく。
「私がお店を閉めちゃったせいで先生に迷惑をかけたわ。これは意地でも食事を摂って貰わないと私の気が済まないわねえ」
と何度も帰ろうとするユヅキ先生を誘導するコミュ力お化け。
それが母さんだ。
そして僕をちらちら見て、おもちゃで遊ぶような目をしている。
絶対わざとやってる。
そしてメイは僕の焦った顔をタブレットでスケッチする。
父さんは多くを語らないが僕を見てにやにやしている。
僕が自室に逃げようとすると、大きめな声で「シュウ、どこに行くんだ!ユヅキ先生に失礼だろ!」と僕の足を止めてくる。
メイが焦るのはいつもの事だけど、僕が焦るのは珍しい為か、父さんも母さんも楽しそうだ。
僕は発言や行動を繰り返すほどハマっていく毒沼のトラップにかかっていた。
「お風呂まで使わせていただいて、本当にありがとうございました」
ユヅキ先生が出てくる。
少し湿ったセミロングの髪と、お風呂上がりで少しだけ顔が赤くなった先生にドキッとする。
そして普段見ないルームウエアの無防備な薄手のワンピースを着ていた。
自転車で遠出する場合、荷物はかさばらない物で揃えるのが一般的だ。
そして、薄手のワンピースはかさばらずしまえる為、宿泊先でラフに過ごす場合重宝するのだろう。
5人がテーブルに座る。
僕の右にはメイ、そしてその隣にユヅキ先生が座り、対面には父さんと母さんが座る。
「今日はいつもお店で出しているセットメニューよ」
カレー・サラダ・味噌汁・ケーキ・そして飲物が並ぶ。
「このセットは学校の先生の間でも有名ですよ。おいしいと評判なんです」
「まあ、先生に褒められると嬉しくなるわよねえ。シュウ」
「そ、そうだね」
「所で、シュウは最近年頃で困ってるのよお。ちょっと前も美人のお姉さんが自転車に乗っていると、後ろからお尻を眺めたりして、思春期なのね」
「そ、そんな事より、先生、カレーはどうかな?」
「美味しいわね」
「このカレーの飴色玉ねぎはシュウが作っているんだけど、力仕事をさせすぎたせいかしら。男性ホルモンが強くなったのかしらねえ」
「け、ケーキも評判がいいんだ」
こうして父さんと母さんは僕を地味に焦らせる分かりにくくてややこしい遊びを始め、僕が赤くなると少しだけ口角を上げて笑っていた。
そして話は盛り上がっていく。
カシュ!
ついにアルコールが出て来た。
父さんと母さんは3人で遅くまで騒ぎ、僕とメイは部屋に戻る。
父さんと母さんは、アルコールを飲んでなくても毎日2人でスルのに、先生が泊っても大丈夫かな?
僕は心配になりながらコーヒーを飲んで執筆活動を続けた。
「お兄ちゃん助けてーーー!!」
僕はメイの部屋に向かった。
メイはユヅキ先生に抱きつかれて、キスをされていた。
「メイちゃんは本当に可愛いわねえ」
あ、ユヅキ先生は、出来上がっている。
僕は物音を消して、そっと後ろに下がった。
そしてゆっくりと扉を閉めようとする。
「お兄ちゃん!助けないのダメだよ!!」
「明日になれば元に戻るよ。大丈夫、女性同士のスキンシップは、何も問題無いよ」
僕は笑顔で部屋に戻る。
僕が部屋に戻ると、ユヅキ先生が入ってきた。
「シュウ君、メイちゃんを置いて逃げちゃ駄目でしょ」
そう言って抱き着いてくる。
先生の匂いと、肌の感触で一気に体が熱くなる。
薄いワンピースとアルコールで体温の上がり、ピンク色に染まった先生の肌の破壊力が凄い!
「せ、先生、酔いすぎですよ。すぐに部屋に送りますね」
先生を部屋に運んで戻るとまた先生が僕の部屋に入ってきた。
「シュウ君、冷たいなあ」
「さすがに抱きついたりとか、こういうのは良くないと思って」
「よいしょー」
ユヅキ先生が僕をベッドに倒して、上から寄りかかって来る。
「シュウ君は思春期だからね」
そう言って僕に抱きつき、耳元でささやく。
「何度も私の体を見て、お尻も見ている思春期よね」
「ユヅキ、先生、これ以上は、我慢できなくなります。はあ、はあ、離れましょう。我慢できなくなります」
「我慢するのは良くないよ……シュウ君、熱くなって来たね」
ユヅキ先生が僕に馬乗りになったままワンピースを脱いだ。
そしてまた抱きつく。
「はあ、っはあ、ユヅキ先生、我慢できなくなります、もう」
「シュウ君、熱くなってきたわね、脱いじゃおっか。私の初めて、貰ってくれる?」
そう言って僕の服を脱がしていく。
「駄目です。ぼ、僕は、先生を襲ってしまいそうに、なるんです」
「シュウ君なら、いいよ」
……僕はコンドームを取り出した。
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