第11話

 僕は、ユヅキ先生と、寝た。

 ユヅキ先生が僕のシングルベッドで寝ている。

 密着するように体が近くて、まだドキドキしている。


 僕は、疲れてそのまま眠りに落ちた。


 


 僕は衝撃を感じて目が覚めた。

 まだ夜中で暗い。

 起きたユヅキ先生が起き上がって慌てている。


「ユヅキ、先生?」

「ああああ!わ、私!その、私!」


「先生、落ち着きましょう」

「私、生徒に迫ってしまって!責任を取らないと!」


 僕はユヅキ先生を抱きしめた。


「落ち着きましょう。今日は、何もありませんでした。それだけです。先生は部屋に戻って僕とユヅキ先生はなにも無かった日常を生きましょう」

「でも、私、責任を取らなきゃ」


「もしこの事がバレれば、僕も、僕の両親も被害を受けます。なにも無かったんです。そうしなきゃダメです。これは僕やメイ、父さんと母さんが平和に暮らす為の道なんです」


「……皆の迷惑になる」

「そうです、だから、黙っていましょう」


 ガチャリ!


「シュウ、アウトよ」

「かあ、さん」


「あの、私!」

「いいのよ。落ち着きましょう。ユヅキ先生と、一緒に話をするから、シュウは寝てて」


「僕も参加する」

「寝てなさいね」

「……分かった」


 母さんとユヅキ先生がリビングに向かうと、メイが扉を開けた。


「やっぱり」


 そう言って自分の部屋に戻っていく。

 やっぱりってなんだ?

 もう日付は変わっている。


 今日の朝は学校か。

 僕は、朝まで目を閉じて眠れず過ごした。



 朝日が差し込むと、僕は恐る恐るリビングに向かう。

 4人全員が揃っていた。


「おはよう」


「「おはよう」」


「昨日の件はどうなったの?」


 僕は聞かずにはいられなかった。


「そうねえ。昨日の件は秘密よ。それと、ユヅキ先生とにメイとシュウの関係を言ったわ。こちらだけ秘密にするのはずるいでしょ?」


「わ、私がシュウ君に迫ってしまって」

「ユヅキ先生、いいのよ。でも、この事は絶対秘密よお」

「……はい」


「シュウ、今日は何も気にせず学校に行きなさい。話は終わりよお」

「分かったよ。僕とメイとの事も先生は知ってるんだね」

「そうねえ。秘密を共有するんだし、話しておいた方がいいと思ったのよ」


「分かった」


 僕はいつもより早く学校に向かった。

 家を出てから学校の教室まで10分もかからない。

 小説を執筆する気にはならなかったし、やる事が無くて早く教室に着いた。


 僕は本を読んで過ごす。

 電車通学のヒマリは、時間を持て余して教室に早くついていたけど、僕の事をまたちらちらと見ていた。



 チャイムが鳴り先生が入って来る。


「今日は担任の野中先生がお休みなので、私が代わりにホームルームをやります」


 ユヅキ先生が入ってきた。

 

「最近登下校で女子生徒に声をかけてくる怪しい男の目撃情報や、実際に声をかけられた生徒もいます」


 先生は普通にホームルームを進行していた。

 でも、僕と目が合うと、顔が赤くなる。


「え、あれ?……何を言うか忘れちゃった」

「女子生徒に声をかけてくる怪しい男の話ですよね?」


 僕がフォローした。


「そ、そう、気を付けるようにしてください」


「センセー可愛い!」

「初々しい!」


 僕は墓穴を掘らない為、必要以上の事は言わず黙っていた。

 ユヅキ先生は僕を見ないようにしてホームルームを進めて無事ホームルームは終わった。


 ホームルームが終わるとヒマリが声をかけてくる。


「シュウ、フォローするなんて、珍しいわね」

「一言だけだよ」

「いつもは絶対言わないのに」


「僕が話すのが珍しかったかな?」

「……まあ、良い事なんだけどね」


 そう言ってヒマリが席に戻る。

 ヒマリが話しかけてくると目立ってしまう。

 奴らが来てしまうんだ。


「モブよ、最近リア充センサーが反応しているでおじゃる」


 ほら、ガリが来た。

 そして、ガリが来ると、ブタとマッチョも来る。

 3馬鹿が揃った。


「僕のユズキ先生をフォローした善行が報われたのかもね。君たち3馬鹿と違って善行の成果だよ」


「く!モブの癖にスマートに助けるとは!」

「ブタ、お前も今日から善行を行えば人間になれるかもしれないよ」

「俺は人間だっつーの」


「冗談はこのくらいにして、怪しい男ってお前らじゃないよな?」


「ふ、舐めないで貰おう。我らにそんな度胸、有るはずがないだろう!」


 そう言ってマッチョはガッツポーズを取る。

 そこはガッツポーズじゃないだろ!


「我らに女性とまともに話すコミュ力はないでおじゃるよ」


 そう言ってガリが斜め前に足を踏み出してメガネをくいっと上げる。

 動作が気色悪い。


「俺はモブのようにメイちゃんと一緒に同居できるような幸運はねーんだよ!」


 ブタは腹を打ち鳴らす。

 ゴリラのドラミングのような怖さがある。


 こいつら、初めて会ったら全力で距離を取る自信がある。

 そのポーズが3人揃うと怖すぎる。


 隣のクラスから来たメイが、3馬鹿を見てくびすを返して戻っていった。

 こいつら3馬鹿の関わっちゃいけないと感じさせる能力は突出している。


「今日はモブがよくしゃべるよね」


 女子生徒が話しかけてきた。


「そうかな?」

「そうだよ」

「僕はトイレに行って来るよ」


 僕は話が盛り上がるのを回避する。

 教室を出ると、母さんが居た。


「母さん?何してるの?」

「ちょっと学校に用事があるのよお。大した用事じゃないわあ」

「そっか」


 ユヅキ先生がらみの事かな?

 聞こうとしたけど、周りの目があって聞けなかった。


 僕はその日普通に帰宅した。

 帰ると父さんが待ち構えていた。


「シュウ、早く乗れ。ユヅキ先生のアパートの荷物を運びこむ」

「どこに?」

「この家に決まってるだろ?」


「……父さん、ユヅキ先生がこの家に住むみたいに聞こえるんだけど?」

「そうだぞ?母さんが学校に掛け合って決めてきた」


 父さんのワンボックスカーには、メイとユヅキ先生が座っていた。





 

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