King of tale
アダスター
序章:アトフォッグ
プロローグ:おかえりなさい
(終わった……)
その日、
その終わりに向かう刹那に彼はある思いを強く抱き、無意識のうちに口ずさんでいた。
その思いはあまりに在り来りなものだった。
「まだ…何も出来てねぇのに………」
しかし、その言葉も虚しく次の瞬間には彼の視界は暗闇に包まれていった。
そして次目覚めると
女神がいた。
(何でこうなったんだ⁉)
目覚めたばかりの思考能力を総動員して考える。そして記憶は数時間前に遡る―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「陽介!一緒に帰ろーぜ」
勇輝は教室の外からいつものようにから友人の陽介に声をかけた。
すると教室で陽介が悩んでいるように見えた。
「どうかしたか?」
そう尋ねると神妙な面持ちになって陽介は答える。
「すまん!皆に今度奢るから宿題手伝ってくれ!」
「「いやまたかよ!!」」
ちょうど一週間前にも同じようなことがあった。
呆れつつも宿題を手伝ってから俺は陽介を含めた友人たちとともにに教室を後にした。
その後は他愛ない恋バナや教師の愚痴を言い合いながら帰っていた。
そして陽介の家に差し掛かったところで友人たちとその場で解散し、一人交差点で信号待ちをする。
(明日、英語の小テストあったかなー)
何気ないことを考えながらふと顔を上げると赤信号にも関わらず、横断歩道の真ん中に中学生くらいの一人の銀髪の少女が立っていた。
だが、周りには見えていないのか少女に誰も声をかけようとしなかった。
そこにトラックが走ってきた。
しかし少女は何を考えているのか分からない虚ろな目で
勇輝を見て立ち尽くしていた。
「危ない!」
その瞬間ステラの体は少女の体を押し飛ばしていた。
だが、その刹那に少女は勇輝を見て笑みを浮かべる。
その笑みは不気味にも悪意のない優しい笑みだった。
勇輝の体はアスファルトに打ち付けられ、衝撃とともに熱を帯びる。
(ヤバい…熱い……このまま俺は死ぬのか⁉)
そして勇輝の意識が途切れようとした時、小さくその言葉は聞こえた。
「おかえりなさい…」
それは勇輝の聞く最後の言葉となった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして目が覚め、今現在に至る。
(ホントに何があったらこんな状況になるんだよ⁉)
勇輝の目の前には玉座に座る女性おり、その容姿はアッシュグレーの髪に絵にかいたように整った顔立ちで、見るからに女神という感じを漂わせていた。
「あのー……貴方は誰ですか?」
状況の理解出来ず思わず勇輝は、この状況では全く意味のない質問を投げかける。
それに対し、女性は苦笑しながら答えた。
「その質問には今は答えられません」
その女性はそう言うと指を鳴らす。
すると勇輝の足元に魔法陣のようなものが現れ、突如として光を放つ。
「貴方は残念ながら死にました。ですが貴方はこれから違う世界で再び生を受けます」
(これって…もしかして異世界転生ってヤツか⁉)
驚きと未知への感動に目を大きく開けるが、女性は毅然とした態度で勇輝を見る。
「おかえりなさい。後を頼みますね」
「え……頼みますって、何が―――――⁉」
その続きを言う前に勇輝は突然、空中に投げ出される。
「な――何でぇぇぇぇー!!」
急な出来事にステラは焦り、思わず叫び声を上げた。
「こ、こ、このままじゃ―――」
視線を下におろすと森がある。
(ワンチャン森の木の枝に引っ掛かって―――
でもこの勢いじゃ枝が―――)
焦りから思考がまとまらない間にも地上に刻一刻と迫る。
そして―――
「死ぬ!!」
勢いよく勇輝は森の木の枝に落下する。
だが運よく勇輝は枝に引っ掛かり、しっかりと意識を保っていた。
「……はぁ~助かったぁ~」
安堵から勇輝は肩を撫で下ろす。
しかし、辺りを見回してその安堵は警戒心に変わった。
本能的に此処にいてはいけないと感じ取り、勇輝はすぐに木から下り、森の出口に迎えべく歩き出す。
その頭上の夜空には六つの星が輝いていた。
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