第11話 私は計画を実行に移しました

メイドのジェシーは私の右足首に巻かれた包帯を外すと、慣れた手つきで触診しました。それから軽くうなずくと、薬草を塗る事も、包帯を巻きなおす事もなく部屋を出て行きました。


しばらくすると、ジェシーはジェーン、ジュディと共に見慣れたバスタブを部屋に運び入れました。


『完治した』という事なのでしょう。私はベッドから起き上がりました、もう足首に痛みはありません。


それは『お清めの儀式』のようでした。私は自らナイトドレスを脱ぐと、お湯を張ったバスタブにゆっくりと浸っていきました。


私が入浴を終えると、三人のメイドはタオルで体の水滴をふき取り、一礼するとバスタブ共々部屋を出て行きました。以前と同じように全ての布類も一緒です。


私は久々の全裸に開放感を感じていました。たまには服を脱ぎ捨てるのもいいものです。あくまで、たまにならば、ですが…


もちろん、このまま元の監禁生活に戻るつもりはありません。私はただちに計画を実行に移しました。


 * * *


私の立てた計画はこうです。


私は恥を忍んでダルトンに協力してもらおうと考えました。ダルトンとは一度しか顔を合わせていませんが、その時に受けた誠実な印象を信じる事にしたのです。


しかし、ダルトンはコーディに雇われている身、直接的な行動に付き合わせて彼の立場を悪くする訳にはいきません。協力は間接的である必要がありました。


私は部屋のドアを開けようとノブを捻りました。思った通り鍵は掛けられていません。

部屋を出た私は廊下を歩き、正面玄関から堂々と外に出ました。途中、ジュディとすれ違いましたが、いつものように無反応でした。


庭園に出た私は、薔薇の迷路に向かいました。ダルトンが願いを聞いてくれたなら、目的の物はこの中にあるはずです。もし無かったら私の計画はそこで終わり、諦めるしかありません。


薔薇の迷路、メイドたちが決して近づかない場所、何かを隠しておくには最適な場所です。


私は慣れた足取りで迷路を進み、中央にある東屋まで来ると、ドキドキしながらその中を覗きました。


(なんてこと…)その光景を見た私の頬を涙がとめどなく流れました。


そこにあったのは、庭園の草花を編み上げて作った薔薇のドレスでした。ダルトンは私の願いを叶えてくれていたのです。


これなら材料を外から持ち込まなくていいし、万が一見付かってもアート作品だと言えば切り抜けられるだろうと考えました。


それにしても、その出来栄えは私の要望をはるかに超えています。


(この恩はいつか必ず返します!)私はダルトンと神に誓いました。



薔薇のドレスを着た私は正門に向かいました。しかし、そこにはメイドのジェーンが立っていました。

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