第4話 私は勘当されてしまいました
エレーヌが誘拐された直後の王の城。
エドワードのもとに衛兵隊長がやって来る。
「何だって?」
隊長の話を聴いたエドワードは顔色を変えてエレーヌの部屋に向かった。
「エレーヌがいなくなったとはどういう事だ?」
部屋に入るなりエドワードは大声で言った。
「お部屋にこれが残されていました」
その場にいた衛兵が1枚の便箋をエドワードに差し出す、それにはこう書かれていた。
あなたのお気持ちには答えられません、ごめんなさい
エレーヌ・ハバロッティ
「これは何だ…エレーヌ…エレーヌ!どこに行った!!」
怒りとも悲しみとも知れない感情で叫ぶエドワード。
そこにエレーヌの両親がやって来た。
「ああエレーヌ、なんて身勝手な子なの!エドワード様の面目を潰すような事をして…」
ハバロッティ伯爵夫人が卒倒せんばかりの金切り声を上げる。
「一族の恥さらしだ!…エドワード様、申し訳ありません。あんな娘、もう親でも子でもありません、
どこかで野垂れ死にしてしまえばいい」
ハバロッティ伯爵は吐き捨てるように言った。
* * *
また朝が来ました。
(まさかあの手紙を悪用するなんて…)私は少年の汚いやり方に対する悔しさと、親不孝をしてしまったという悲しみと、エドワードが助けが来ないかもしれないという不安感で、眠れぬ夜を過ごしました。
昨日と同じように、ガチャリと解錠する音がして部屋のドアが開き、三人のメイドが入ってきました。
そして昨日と同じ様に無言で私の衣服をはぎ取ると、ベッドのシーツ、掛け布団と共に持ち去りました。
これは何目的の行為なのでしょう?
少年の目的は少なくとも私の貞操ではないようです。どこかから無防備な私を眺めて楽しんでいるのではないかと考え部屋の中を念入りに調べましたが、覗き穴らしきものもありません。
(私、ほっとかれてる?)ならば脱出方法を探すチャンスです。今の格好で動き回る事に抵抗はありますが、そうも言っていられません。
私はまず部屋の中をもう一度観察しました。調度品と呼べる物は、小さなテーブルと椅子が一脚、そしてベッドです。テーブルにはテーブルクロスは無く、ベッドも今はただの箱に等しい状態です。
窓にはカーテンが無く外から丸見え、と言っても丘の上の一軒家の二階なので支障はないのですが…
床はフローリング、貴族の屋敷は絨毯敷きが普通なので、これは珍しい仕様と言えます。
次に私は窓から庭園を見回しました。綺麗に手入れされています。正門から続く通路を挟むように花壇が円形に幾重にも並んでおり、その左側には東屋を中心に薔薇棚を使った迷路がありました。
それ以外にもいたる所に花壇がつくられており、質素な室内とは対照的に華やかな印象でした。
窓の高さは地上から4メートル程でしょうか、花壇に落ちれば何とか骨折しないで脱出できるかもしれない、私はそんな事を考えました。
後は屋敷の中がどんな間取りになっているか調べたいのですが…私はそっと部屋の入口に近づくと、ドアノブを回してみます。カシャリと鈍い音がしてドアは抵抗なく開いてしまいました。
(えっ…鍵が掛かってない?)私はドアの隙間から廊下に誰もいない事を確認すると、足音を忍ばせて部屋を抜け出しました。
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