運び屋

@isobemiya

カンガルー

夜中のドライブが好きだ。

ドライブすると嫌なこと全部忘れる。


響くエンジンの音。ちょっとだけぎこちない。信号待ちしてると赤信号が点滅し始めた。ダッシュボードの時計は12時になっている。ラジオから人の声は久しく流れておらず、ただ異国の知らないアーティストの曲が永遠にループしている。


一時停止して、左右の確認。左からトラックが来ている。トラックはかなりのスピードで通り過ぎた。静かになった道路を右折する。


「このまま、11km直進です」ナビは言う。窓を開けると心地よい風が入ってきた。全然聞いてないけども、ラジオの音量をあげる。知らないアーティストが絶叫が車外にも広がる。ポケットからライターを取り出し、タバコに火をつける。風で灰が飛び散りながら、車内に舞う。


「目的地まで後200メートルです」ナビは言う。

遠目から見ると、目的地は闇に包まれていた。昼はきっと子どもたちで賑わうであろう公園。真夜中になると、街灯の明かりだけが頼りだ。公園には何でもない滑り台と砂場、そしてブランコ。車内で再度タバコに火をつける。タバコの煙は車内にゆっくりと広まった。


「目的地に到着しました。お疲れ様でした」ナビは言う。

車を降りると、心地よい風が吹いていた。タバコの臭いが充満している車内と比べて、空気が澄んでいる。公園の遊具とは離れた場所にベンチが1つ佇んでいた。男はベンチの下に小さな小包を置くと、タバコに火をつけた。タバコの煙は真っ暗な闇へと溶けていった。


男の携帯にメールが来る

「荷物の配達ご苦労さまでした!次の真夜中の配達よろしくお願いします」





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