第16話再会
「もう
姉の気怠気な声で、眠りから覚めた俺は欠伸を漏らしながら身体を起こした。
「ふぁああ〜やっとかぁ!」
「そう、やっと目的地に
「……どうだかな」
「可愛げねぇーッ!ははっ」
高笑いをあげる姉だった。
並木道を抜け、右折すると目的地だった。
駐車場に車を停め、姉貴と同時に車から降り周囲を見渡す。
目的地の側に小さな公園が設けられていた。公園には小学生の低学年くらいの子供が数人いた。
保護者らしき女性も二人おり、ベンチで談笑をしていた。
「荷物持って来て〜克貴」
「あっ!おいっ、姉貴待てよ!」
謎なオブジェが建てられた市民会館に近づいていく姉の背中に呼び止めるが、俺の声は彼女に届かないようで足は止まらずに距離を離された。
「クソッ……人遣いがあれぇやつッ!県外じゃねぇか、ここ」
市民会館に足を踏み入れると、ぜぇーぜぇーと息を切らした俺を迎えたのは、視聴したことのあるアニメに出ていたあるヒロインの装いを纏う二十代前半くらいに見える粟色のミディアムヘアの女性だった。
「あらあらぁ〜大変そうね、君。本日のイベントに参加するの、君は?」
「イベント……参加……いや、えっと……」
「あーっっ、やっと来たぁ克貴ぃ。遅いってば、何してんの!ナンパなんてしてないで、ついてきてッッ!」
駆け寄ってきた姉に責められ、手首を掴まれたかと思えば、連行された。
「コスプレだから言わなかったんだな姉貴っ!」
「恨み言言っても遅いっての〜」
「俺が断り続けようたって、車に押し込めて連れてきたんだろ……どうせさ」
「あったりぃ〜〜!」
階段を上がり終え、第二会議室と書かれたプレートが掲げられた一室の前に連れてこられた俺の耳に懐かしい声が届いた。
「か、克貴……」
「えっ……?さ、沙耶華……なんで、こんなとこに……?」
声が聞こえた方向に顔を向けると、懐かしい女子の顔が瞳に映る。
オフホワイトのフリルスリーブブラウスの半袖に淡い青のデニムパンツ姿の沙耶華が立ち尽くしていた。
「か、克……柳葉こそ、なんで……いるの?」
名前呼びしようとして、苗字で呼び直し、訊いてきた沙耶華。
俺の手首を掴んだままの姉に視線を向けて、「姉に連れてこられて……いる感じ」と、返答した。
「お、姉さん……」
視線を足もとに落とし、ぼそっと呟いたまま顔を上げない沙耶華だった。
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