第7話裏のカオ

俺は宮間と攻防を繰り広げ、20分も経過していた。

彼女に押し倒され、馬乗りされ逃げようにも逃げられない俺は身体中から冷や汗が噴き出していた。

「ねぇー柳葉くんはどうして答えてくれないんですかぁー。怯えているようだけど、そんなことないじゃないですかぁー。ねぇー柳葉くん——」

胸を押し当て身体を触れ合わせながら、顔を近付けてくる彼女。

彼女の熱を含んだ吐息が顔にかかり、思考が停止しかけていた。


あぁぁ〜〜〜ッッ、もうぅ〜〜〜ッッ!


「物音がするが、誰か居んの——」

扉が開くと同時に藤宮先生の声が頭上から聞こえた。

宮間の動きがフリーズした。

「宮間……さんだよな、キミ?」

藤宮先生も驚きを隠せず、宮間に訊いた。

「あっ……とぅー、これはっそのぅー……」

宮間は瞳を泳がせ、たじろぎ始めた。

「誰がどうしようが勝手だがな……いくらなんでもそういうのはだな、大人の目があるところでやるのは——」

「すっすすぅっみませんっっ!私はこれでッ——」

立ち上がった彼女は頭を下げ、勢いよく謝り教室を出ていく。

取り残された俺と藤宮先生は、ため息を漏らした。

「起きれるか、柳葉?」

藤宮先生は倒れた俺に片手を差し出し、起き上がるように促す。

俺は差し出された藤宮先生の手に掴まり、立ち上がる。

「あのまま続けさせた方が良かったか、柳葉?」

「なに言ってんすか、藤宮先生!こんなときまで——」

「悪い、冗談だって冗談。それにしても驚いたなー。あんなかお、知ってたか?」

「知りませんよ。猫被ってたなんて……」

「だろうなぁ……」


藤宮先生と空き教室の前で別れた頃には、昼休みが10分もなかった。

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