終わる、その一瞬まで

シヨゥ

第1話

「『終わった』と思ったら終わりなんだ。だから『終わってない』と常に思うんだ」

 血まみれの勇者はそう話す。体がもう動かないのか寝転がったままだ。その周りではテキパキと治療が進んでいく。

「抗うことを選んで旅立ったというのに、死に抗わないでどうするって話」

 どんなにきつく包帯をまかれようが、麻酔もなく傷口を縫われようが顔色1つ変えない。痛覚がないのだろうか。

「剣が折れようが、腕が折れようが。鎧が砕けようが、拳が砕けようが。最後の最後のその一瞬まで抗い続ける。それが勇者ってもんさ」

 それは勇者というよりは狂戦士だろう。そんなことは口が裂けても言えないけど。

「まあ分をわきまえるのが一番だけど」

 勇者が横たわる担架が持ち上がる。

「どうだい。僕のパーティーに参加するかい?」

「いえ遠慮します」

 考えるまでもなくノーだった。

「そっか。残念。また縁があれば」

 担架が街へ向かって進み出す。それを黙って見送った。あんな勇者が率いるパーティーになんか参加したらいくら命があっても足りない。そんなことを周りに転がる亡骸を見つつ思うのだった。

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終わる、その一瞬まで シヨゥ @Shiyoxu

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