第41話 ラコールの本格的攻撃
―――ラコール本拠ホート
この日、本丸の大広間にサチ、カロ、ネシ以外の城主が集められ、そこにはフェルネの姿もあった。そして大広間の一段高くなっているところの横の戸が開いて国王ゼラフが入ってきた。すると城主たちは胡坐のような座り方で床にこぶしをつき頭を下げた。ゼラフは真ん中に座ると話し始めた。
「フェルネよ、おぬしの作戦通りに事を進めて初めは順調だと思っていたが、実際我が軍は負け続け度重なる包囲戦によって兵たちの不満も高まっている。ここから先の考えを聞いてもよいか?」とフェルネに問い詰めた。
戦と言うものは勝てばいいというものではなく、兵士に手柄を立てるチャンスを与えることも大事である。これまでフェルネは直接的な戦闘を避け、敵を包囲してからの兵糧攻めばかりしていた。兵士から見れば、出世の可能性をつぶされたように感じう者もいるだろう。ゼラフはそのことをよく知っていた。
ゼラフの問いかけに対しフェルネは
「これまで私が包囲戦ばかりしていたのには理由があります。現在、敵軍の兵力は1万4千ほどであり、サチ、カロ、ネシから兵を出せば勝つことは容易でしょう。ですが念のため、アンブロス殿の部隊とハモからラコール海軍全戦闘艦艇を加え、圧倒的兵力をもってクリスタ軍の撃滅を狙う。そして度重なる包囲作戦による兵士の不満を一気に発散させることによって、士気が高ぶることでしょう。私はこれを狙っておりました。」と答えると、他の武将たちは
「おお!」と感心した。そしてゼラフも
「なるほど、確かにこれなら勝てる可能性が高いな。」と納得したが、
「だがフェルネよ、もしもこの作戦が失敗すれば責任を取ってもらうぞ。」とフェルネをにらみつけた。フェルネは
「はい、問題ありません。」と頭を下げた。そしてゼラフが
「フェルネはすぐにその作戦を実行せよ。今回の作戦に関わらぬ者も鍛錬を怠るな。クリスタ軍はラコールにいる部隊がすべてではない。そのことを肝に銘じよ。」と言い大広間を出て行った。
―――ハノ本丸
アドルフ、アーデルハイト、べルティーナが作戦指揮所に集まり。こちらでも作戦会議をしていた。
「最初に落とすのはサチってのは決まりでいいな?」とアドルフが聞くとアーデルハイトが
「そうだね。でも問題は他の城から増援が来る前に落とす必要があるからね、力攻めで行く必要がある。アドルフさん、何か考えがあれば聞いてもいいかな?」と答え、聞き返すとアドルフは
「うまくサチの兵をおびき出して、倒したあと城を落とす。」と答えた。べルティーナはそれを聞いて
「どうやっておびき出すのよ。」と言うとアドルフが
「あえてネシとカロの近くを通る。数で有利だと分かれば敵も城から出てくるはずだ。」と答えた。だがべルティーナが
「馬鹿言わないでよ。今の私たちは1万4千しかいないのにあえて3万5千を相手にするなんて死にに行くようなものよ。」と反論した。だがアドルフは
「1万4千じゃない。俺の隊1千でやれるって言ってんだ。」ともっとありえないことを言った。それを聞いたべルティーナが
「はあ!?あんた頭おかしくなっちゃたの?」と言い返すとアーデルハイトが
「アドルフさん、本当にできるんだね?」と冷静に聞くとアドルフは
「ああ。」と真剣な表情で答えた。そして
「本来なら薔薇隊に任せて経験を積ませるべきなんだろうが、今はそうも言ってられねえ。俺たちはサチを取ってくるから薔薇隊はハノの守備を頼む。」とアーデルハイトに言った。アーデルハイトはそれを認め、べルティーナも納得していない様子だったがアーデルハイトに従った。黒狼隊の出撃日は1週間後となり、それぞれ交代で見張りと休息をとった。
そして1週間後、黒狼隊が出撃準備を終えて全員騎乗して門の前に集まった。アーデルハイトとべルティーナがアドルフを見送りに出るとアーデルハイトが
「そういえばアドルフさんの武器って剣じゃなかったかな?」と聞いた。この時アドルフは腰に刀と右手にクリスタの物より刀身が細い薙刀を持っていた。アドルフは
「ああ、これはクリスタに集まった時にクラングファルベに作ってもらったんだ。俺の刀を見せたら、同じのを作って薙刀にしたって言ってた。」と答えた。
クラングファルベはまだ15歳にしてクリスタ一の鍛冶屋であり、その腕前は天才的で一度アドルフに刀を見せてもらっただけで、それと同じものを作り上げた。
アーデルハイトはアドルフの答えに驚きつつ
「そうだったんだね。」とニコッと笑った。そしてアドルフが
「じゃあ行ってくるぜ。」と言い門を開く号令を掛けようとしたとき
「伝令!」と兵士が駆けこんできた。
「陸海双方から敵軍!数、陸3万輸送船らしきもの100隻!」この報告を聞くとアーデルハイトが
「総員戦闘配置!」と号令を掛けた。アドルフも
「黒狼隊、至急本丸前に馬を置いて配置に着け!」と号令を掛けた。
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