金魚探偵テッテからの挑戦状

団田図

君はこの謎を解くことができるか?

 こんには!僕は金魚探偵のテッテ。本名はテッテレツ・ニイカセロシモオと言うんだけれど、長すぎるからニックネームの、テッテって呼んで。いつも教室の後ろに置かれた水槽の中からみんなを見守っているよ。みんなが協力してエサやりや、水槽の掃除をしてくれるおかげで、とても快適に暮らしているよ。

 そんな僕から君へ、謎解き対決を申し込むよ。この挑戦受けてみないか?

 これから僕が、学校にいる人たちを観察してきた結果、色々なことが分かったから、それらに関する問題を七つ出すよ。そのうち、一問でも正解が出来たのなら君の勝ち。もし、すべて外れだったら僕の勝ちってことで、願い事を聞いておくれ。


 時間がないから早速問題にいくよ!用意はいい?


テッテからの挑戦状 第一問目

 君の隣に座っているお友達が、休み時間に消しゴムの削りカスを集めているよ。自分が削った分だけでなく、クラス中の友達のものまで集めている。さて、これはなんのため?

 ヒントは消しゴムの原料だよ。


正解は・・・その友達の本当の正体は、未来から来た天才科学者だったんだ。そして、この世界へタイムスリップしてきた理由は、未来で起こる戦争の元となる火種を消しに来ていたんだ。任務を果たした彼は、自分で開発したタイムマシーンで未来へ戻るんだけれど、帰りの分の燃料を忘れてしまっていたことに気付き、石油から作られているプラスチック消しゴムを、未来へ帰るための燃料とするために集めていたってわけ。削る前の新品消しゴムを使わない理由は、削りカスの中だけにしか鉛筆の芯が混ざっていないからなんだ。鉛筆の芯に使われている黒鉛という物質は、導電性、耐熱性に優れているから、消しゴムと混ざるとよく燃えるらしいよ。だからあんなに一生懸命に削りカスを集めていたんだね。

 どう?この問題、正解出来た?当たるわけないって?だからこそ当たったときの喜びは最高で、難問を解く甲斐があるってものだろ?これからどんどん難しくなるから、今ある常識を打ち破り、君の想像力を全開まで押し上げて、これからの謎も解いてみてよ。


テッテからの挑戦状 第二問目

 教頭先生が校舎の屋上で、両腕を空に大きく伸ばして、手のひらを広げているよ。さて、これは何をしている?

 ヒントは、天井がなくて空に近い屋上にいるってこと。


正解は・・・地球を侵略しようとする宇宙人からのミサイル攻撃を、超能力で破壊したり、敵に攻撃したりして僕たちを守っていてくれたんだ。教頭先生がかけている眼鏡をよく見てごらん。本当はレーダー探知機になっていて、あれで敵の場所や攻撃を探り当てていたんだ。いつも「廊下を走るなー!」とか「掃除中に遊ぶなー!」ってガミガミうるさいあの教頭先生が、本当は地球を守る正義のスーパーヒーローで、大切な生徒を守るために戦っていてくれたんだね。悪者を倒した後の給食はきっと、おいしさもひとしおだろうね。それじゃあ次の問題行くよ。


テッテからの挑戦状 第三問目

 音楽の先生がピアノの前で大声で泣いてるよ。一体なにがあった?

 ヒントは、学校の先生も一人の人間だってこと。


正解は・・・5年間付き合った彼氏に振られたことと、生き別れの弟が現れて奇跡の再開を果たせたことと、大切に育ててきた花壇の花を野良犬に踏みつぶされたことが、ついさっき同時に起こって、悲しみと喜びと怒りの、三つの感情が同時に押し寄せてきて泣いていたんだ。あっ、今度は笑い出したよ。人間は色々な感情が重なると制御できなくなるんだね。今はそっとしておいてあげよう。


テッテからの挑戦状 第四問目

 売店のおじさんが椅子に座って、腕を組みながら下を向いているよ。一体なにをしている?


正解は・・・これはただ居眠りしているだけ。きっと、昨日は趣味のプラモデル作りで夜更かしをして、睡眠不足だったんだろうね。どんな夢を見ているんだろうね。後ろから近づいて大声を出して、驚かせちゃおっか?あっ、いや、やっぱやめよう。そんなことよくないよね。想像はしてもいいけど、実際にやってはいけないこともあるから、現実と想像の区別はしっかり持とうね。これはサービス問題だったね。正解できたかな?


テッテからの挑戦状 第五問目

 体育の先生が放課後に体育用具倉庫へ入っていくよ。一体なにをしに入っていった?


正解は・・・倉庫の一番奥に、誰も使わない古びた跳び箱があって、それを横にずらすと、地下への隠し階段が出てきたよ。そして、そこを下っていく先生。うんと深くに降りた先にはなんと、巨大な地下要塞都市が広がっていたんだ。100階建てのビルや、それよりも高い電波塔があったりして、とても地底とは思えない広さなんだ。先生は地下へ降りきると、そこを走る電車に乗って3駅進んだところにある、一軒家に入っていったよ。実は、そこで生活する地底人と先生は友達で、ホームパーティーに呼ばれていたようだよ。きっとおいしい料理や飲み物で話がはずみ、親睦を深めて、より近しい関係になるんだろうね。深い深い地下での出来事だけにね・・・。


テッテからの挑戦状 第六問目

 給食のおばさんがノートを見ながら校舎の廊下をウロウロしているよ。一体なにをしている?


正解は・・・彼女は世界をまたにかけるトレジャーハンターで、世界中に隠された秘宝を探し出して、売ったりコレクションとしたりしているんだ。今回は、この学校の中に目が眩むほどの大量の金塊が隠された秘密の部屋があると知った彼女が、給食のおばさんに変装して、もぐりこんで探していたんだね。もし金塊を見つけだすことができたなら、使いきれないほどのお金をゲットすることになるね。もし僕が大金持ちになったら、世界を旅して周ってみたいな。ただ、僕は淡水魚だから、塩水の海では泳げないんだ。だから、水をめいっぱい入れた大きな飛行機を買って、その中で泳ぎながら旅をしようと思ってる。僕は空飛ぶ金魚になるんだ。


 さあ、次はとうとう最終問題だ。ここまでいくつ正解できたかな。笑っても泣いてもこれが最後。いくよ。


テッテからの挑戦状 第七問目

 このクラスの担任の先生が、僕の泳いでいる水槽の中に、いつもより多くのエサを入れてくるんだけど、それはどうして?


正解は・・・僕を丸々大きく太らせて、焼き魚にして食べるためだったんだ。先生は、放課後になると毎日たくさんのエサを水槽に入れて言うんだ。


「ほーら、エサの時間ですよー。大きく育ってくださいねー。あなたは私の食料となっていただきますからねー。このエサを食べ残したらバツとして、今すぐ食べてしまいますよー」ってね。


 食べられるのが怖くないのかって?大丈夫。手は打ってある。(僕にはヒレしかないけどね)


 つまり、この小説よりも愉快で奇怪、誰にも想像ができず、胸がドキドキワクワクする方法を君が考え出して、助け出してくれると僕は信じている。いままで僕が出した問題は、ほんのウォーミングアップさ。人は想像した分だけ世界が広がって、それがやがて他人を巻き込んで、より大きな渦となって人々の感情を揺さぶっていくんだ。桃太郎のお話も、世界的に有名な魔法少年のお話も、全ては想像することから始まった物語なんだ。

 人が生きていく中で、辛く悲しく恐ろしい現実に突き当たることは、きっといつかある。でも、そんなときに一服の清涼剤となってくれるような小説があれば、その人の心を和らげて救い出すことができるんだ。そして、そんな小説を書ける力が、君にもあるってことを忘れないで。


 さあ、君なら僕をどう助ける?そして僕を、面白世界に連れテッテ。


おわり

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