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「オレ、先輩が好きです。」
名を呼ばれ、振り返ってからのたった30秒で…
告白された────…
それはまさに青天の霹靂。
「…………」
とりあえず、辺りを見渡してみる。
此処は自身が通う高校内にある、寂れた図書室で。
使用者数が殆どいない割に、意外と本の種類が充実しているという。僕にとっては、なんとも魅力的な場所だったのだが…
果たして今日は、僕の他に利用者がいただろうか?
「先輩?」
不思議そうに尋ねてくる声の主。
人懐っこそうなその黒い瞳は、やはり僕を…見ているのだろうか?
それでも一応、背後を確認してみるが───…
解っている。そこには陽射しが煌々と入り込む大きな窓しかないし…
そもそもここは、2階じゃないか…。
窓を睨んだまま、うむと頭を捻る。
目の前の彼は、実は霊能力者の類いとかなんとかで。見えない何かと意志疎通を─────…などと、
らしくない現実逃避紛いな想像までしてみるのだが…。
それらは次に彼が発した言葉により…
打ち消されるのだった。
「
無言のまま、遠くを見るよう視線を送ってみた。
何だろうか…コイツの偽りない純粋なまでの笑顔は。
彼の眼差しは、真っ直ぐ自分に向けられていて…
なんと清々しい事か。それは老若男女問わず愛されるであろう、好印象を思わせる。
少し頭が悪そうな感じはするけれど…。
体育とかスポーツは凄く得意そうだ。背も単純に高いだけじゃなく筋肉質というか、芯があるっていうか…。
制服は学校指定の僕と同じ学ランにパーカーだし…。加えてうちは男子校────…
何処をどう見繕ってもコイツは、“性別イコール男”にしかならないんだが…。
「あ─…もしかして新手のイジメ、とかか…?」
「ええ…!?ちっ、違いますってば~!!」
ボソッと零れた不信感に、速攻で突っ込まれるも。
敢えて気にせず、逃れるように意識を文庫本へと戻す。
確かに僕は友人も殆どいないし。
普段は本ばかり読んでいるような根暗なヤツだから。
そういう意味では、弄りやすい人種なのだろうが…。
そんな考えとは裏腹に。
彼は虐め説を、全力で否定してはくれたものの。
視線だけで盗み見ると、バチリと目が合ってしまい…。次には恥じらうよう、顔を赤らめてしまうものだから。
やはり意味が解らない。だって僕は───…
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