Webに公開したもののまとめ

瀬希瑞 世季子

もっと馬鹿みたいに

  蝉がクソうるさい。でも死体が地面に落っこちていたら可哀想だと思う。さっき見つけた蝉の死体に数秒だけ憐みの視線を送ってやった後、公園の遊具の隅でうずくまるあなたに会う。よく分からないけどいろんなことがあったらしい。ご愁傷様と思う。ウジウジしているあなたをしばらく見つめていたら、なんだかすごく嘲笑ってやりたい気持ちになった。ちょっと煽るような感じで声をかけてみる。「悲しいですか」「苦しいですか」「死にたいですか」あなたは無言。そうですか。なんも言えないよね。そうだよね。じゃあ死ねよ。急にそんな言葉が心の中に浮かんできて少しびっくりする。死ね、死ね、死ね。びっくりしたけどなんだか楽しくなってきた。声には出さないけどたくさん酷い言葉を心の中であなたに浴びせまくった。自殺しちゃえ。ウジウジしやがって気持ち悪いんだよ。あなたはずっとうずくまったまま。罵声の語彙が尽きたのでわたしの頭は静かになる。蝉の鳴き声だけが聞こえる。クソ暑い。帰ろうかな。飽きてきたのであなたを見ることもやめる。それからきょろきょろと公園を見渡してみる。花壇に咲いているテッポウユリを見て、フェラチオしてくれそうな見た目をしているなって思う。あなたが大きな叫び声をあげて立ち上がったのはそのときだった。あなたは右手にカッターナイフを握っていて、花壇に咲いているヒマワリの茎に向かって何度も何度もカッターナイフを振りかざした。ざく、ざく、ざく、何回も何回もカッターナイフで切り付けて、ようやく茎が真っ二つに折れて、ヒマワリの花が地面に倒れた。あなたはその場に立ち尽くしたままで動かない。

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