Consciousness Fusion System
里芋の悲劇
第1話 恋と融合
作戦開始まで残り7日
「あと7日で始まる」
「始まるといっても我々の仕事はもうほとんどない、そうじゃないかY」
「いや、ここからだよ、我々、見据えるもの(watcher)の仕事は」
「だがしかし、面倒だよなぁ」
「あんな下等生物の面倒を……か?」
「だが、始まってしまえば終わるまではそうかからない」
「ああ、そうだAはそれを望んでいる」
作戦開始まで残り130日
「飯食って帰るか」
「いや、今日はやめとく」
「んだよ、今日はノリが悪ぃじゃねぇか」
じゃあなと手を振り帰路へ着く。学校から部屋までは10分程度
「急いで帰るか」
少し早足になる、今日、そう今日なんだ
「よっしゃ!やるか」
大人気FPSMMORPG「DEUS」初の大規模シナリオイベントが開催される。俺はというと前回のPVPイベントで世界一とったんだけど。でも今回は順位出ないからサクッとイベント報酬だけもらっちゃうか。
じゃあ、さっそく周回しようかな
数時間後
「ん?」
メッセージか、俺はクランとか興味ないんだけどな
「っと、ん? システムメッセージかよ」
えっとなになに、「明日東京都〇〇区××12_5678へ向かえ、午前0時までに到着しなかった場合、セーブデータを削除いたします」ん?削除、削除ねあーそういうこと、でもシステムメッセージねじゃぁマジってこと?でもさ、こういう詐欺、流行ったんだよねでも確か見分け方があって、メッセージフォルダを開いて、systemでソート……うんこれ、システムメールだねちゃんと、え?
やばいじゃん、やばくね、行かなきゃ……ん?なんで?なんでなんだ?まぁ、あと24時間あるし。でも、ああ!思い立ったが吉日だ!なんで家から走っていける距離なんだよ!電車使ってとかの距離だったら始発まで悩んでられたのに!
「ああ、おれのデータだけはデータだけは!」
「ここか?」
そこはビルだ、最近完成した真新しい……ますます分からない、ここってなんかの研究施設だったよな。
「いらっしゃいましたか」
メイド服を着た女性が自動ドアの前で立ちすくむ俺に話しかけてくる
「あなた様が伝説の魔法女騎士ZENOですね」
「え、ああ、えっと」
「僅か6日間の前回イベントで総勢1200KILL 190DEATH K/D 6.315789という戦績を残した最強のソロプレイヤー、ですよね」
「うーんと、えっと」
「そうではなかったでしょうか」
「いや、まぁそうなんですけど」
「でしたら、こちらへ」
中へ案内される。
赤いカーペットが敷かれた廊下は中世のヨーロッパのようで1本道の先には、それにそぐわないエレベーターがある
「エレベーターを使い最下層へ向かいます。4階、3階、7階の順でボタンを押せば地下8階へ行くことができます。これから多用することと思いますので覚えておいてください」
「多用?」
「その話はついてからにしましょう」
30秒程度無言が続く
「到着いたしました」
扉が開く。白衣の男が2,3、4人か、そしてあそこに、俺のクラスメイトで学園のアイドルの浅田さんがいると。は?
「なんで!」
「ひゃ!」
びっくりした浅田さんもかわいいな~……じゃなくて!
「なんでいるの神田君」
「そ、そっちこそ」
「私は……えっと」
「その話をこれからしますので、お二人ともこちらへ」
奥の部屋に誘導され、隣り合わせで立たされる
「少々お待ちください」
「あ、ちょ……」
「ね、ねぇ」
「え、あ、何?」
「え、いや何か聞かされてる?」
「い、いや何も」
「……」
「……」
沈黙が続く。1分、2分……そろそろ5分かな?
まだかな、すっごく息がしづらい
「お待たせいたしました」
来た!
「あ、来た……」
声出ちゃってるよ浅田さん……!
「いやすまないね」
すらっとした、30歳前半ぐらいのおじ……いやお兄さんだな、イケメンだし
「時間はある、ゆっくり自己紹介でもしよう。私は長田俊介ここの所長だ。そしてこちらは」
とメイド服の女性を指差す
「私は、エマと申します」
ペコリときれいなお辞儀をする
「して、そちらの君がZENO君で、そちらの彼女が噂の戦女神か」
「ハイ、こちらが神田幸樹さんと浅田唯さんです」
「え、っとなんですかね呼んだ理由って」
「そのことを今から話す、彼女が」
「ハイ、私が」
とモニターを見るように促される
「今から、 Consciousness Fusion Systemについての説明をいたします」
「えっと?こんじぇすねすふゅーじょん?」
「ここではCFシステムと呼ばせていただきます。
CFシステムはその名の通り、二人の人物の意識を融合するためのシステムになります。どうやってそんなことをするのかと申しますと、先ず、このシステムを使用する二人は同じ想いを共有していることが必要になります。その想いを触媒として二つの意識を新たな一つの肉体に封じ込めるといった仕組みになっております。なお、封じ込める肉体は意識がなく、二つの意識があった肉体と同じ、お二人でしたら、ヒト細胞で構成された肉体でなければならないというわけです」
つまり、意識のない人間を二人の意識で動かすってこと?
「それって、死体を動かすってことですか」
「ハイ、そうととらえていただいて構いません」
「え?どういうことですか、私たちは死体を動かすために呼ばれたんですか」
「ああ、そういうことだ」
「実験のためですか」
「いえ、人間での実験は終わっているため、残りはお二人がお互いに想いを伝え合い、この体に意識を融合できるかの確認を終わらせるだけです」
といい、運ばれてくるのは大きなシリンダーだった。
「これは、人間?」
「ハイ、こちらで用意したヒト細胞を培養して作った人造人間です」
「でも、人じゃなければいけないんですよね」
「いえ、私はヒト細胞で構成された肉体であればよいと説明しました。なので、死体である必要がないのです」
そうか、意識がなければいいのか、なら人が作ったものでもよいのか
「でも、脳があるなら……」
「いや、これはただのヒトの複製、この子には意識が芽生えなかった。しかし並行して行われていたCFシステムの器として選ばれたのです」
「ってことは生きてる?」
「どういう状態を生きているとするか、にもよりますが、脳機能は自我意識以外すべて正常ですので、すべての臓器は正常に動いています」
「死んでるとも言えないって感じか」
「えっと質問いいですか?」
「ハイ、大丈夫です」
「このシステムを使ったらもう戻れないんですか?」
確かに、それは気になるな、戻れないなら逃げるか。でもなんでこれを説明したんだ?後で聞くか
「いいえ、それは違います。46時間以上の融合でなければ元の肉体に意識を戻すことが可能です」
よかったじゃぁ長い間使わなきゃ元の肉体にもどれるわけだ
「あのー、僕からもいいですか?」
「ええ、構いません」
「それで僕らの呼ばれた理由って……」
聞きたいのはそこだ、なぜわざわざゲームのシステムメールなんか使って、ってなんで浅田さんが?
「それは、あなた方がこのシステムを使用し地球を侵略する地球外生命体と対峙していただくためです」
「いやいや冗談ですよね」
「いえ、決してそのようなことはございません」
うん、だよね。だけど信じるかって言われたら画像でもない限り
「こちらが発見時の画像になります」
「あるじゃん!」
「本物ですか?」
「ああ、本物だよ。私がとったからね」
「え?あなたが?」
「僕は地球外生命調査員兼古代遺物研究所所長だからね」
なんか渋滞してね?
「ここって古代の研究してるのに意識がどうのこうのって研究してるんですか?」
「この技術はアーティファクトを基にして作られているので」
「どんなアーティファクトなんですか?」
「北海道で出土した、そこの住む祈祷師が使用していたと思われる、死者との交信をするための触媒として使われた鉱石です。それを現代技術で拡張し、このシステムを完成させました」
「そうなんですね」
「本題に入ってもよろしいですか?」
「あ、ハイわかりました」
さっきの地球外生命体がどうこうっていうあれかな
「あなた方お2人に戦っていただきたいのです、この体で」
「え?」
「あなた方二人はお互いに想い合う、俗にいう両想いの二人ですし、幸樹さんは頭の回転が速く、どの行動が最適か的確に判断する能力が優れていると認識しています。そして唯さんは地下格闘技上で200戦199勝1引き分けの最強戦士ですので二人の意識を融合させ、この体、強化人体で戦闘を行えば、恐らく真に最強の戦士になれると考えたのです」
色々聞きたいことあるけど……両想い?俺と、浅田さんが?いやそんなことないよね、確かに小学校から高校まで追いかけてきたし、ずっと俺は好きだったけども、浅田さんが俺みたいなゲームヲタクに惚れてるわけなんかねぇよ
「そんなわけないよな……」
「そんなわけないよね……」
「ほら息ぴったり」
「「え?」」
「じゃぁエマ、二人にしてあげようか」
スタスタと部屋の外へ出ていく
それから多分3分くらいたった
「あ、えっと、」
「な、何?」
「幸樹君って頭いいの?」
「い、いや良いわけじゃないけど」
「そうなんだ、じゃぁ、えっと」
「あ、地下格闘技って何のこと?」
「そ、それはえっと、お父さんの借金を返すためにやってただけで……その」
「借金!?いくらぐらいの!」
「えっと、1200万ぐらい?」
「せ、せんにひゃくまん!」
「それだけ残して捨てられちゃったの私とお母さん」
「はぁ?そんなこんなかわいい子の残してよく逃げられたな!良心がないのか良心が!ぜってぇ許せねぇよ男として」
「かわいい?」
「え?」
「私、かわいい?」
「まぁ、すごく」
「すごく!」
「そ、それで返せたの?」
「返せたよ、だから辞めた」
「そういうのって辞めれるんだ」
ってか地下闘技場ってなんだよ
「うん、契約が200戦生き残れたら3億だったから」
「さんおく!」
「うん、あ、私は殺してないよ、殺すのは性に合わないから」
性に合わないってなんだよ!
「しかもそんな殺す殺されるみたいな試合してたの?」
「してたよ」
「なんかすごいね、でもお母さんとかいるでしょ?」
「母は、父がいなくなってしまったときに極度の人間不信になってしまって……」
「あ、なんかごめんね」
「ううん、大丈夫。お母さんは生きててくれれば」
「優しいんだね」
「えっ!」
「俺こんな優しい子知らないよ」
「いやそんな、ほめても何もないですよ」
「いや別に何か欲しいわけじゃないよ」
気まずい空気が、1舜流れる
「「あのさ」」
「先どうぞ」
「あ、うん、さっき言ってた両想いってホント?」
これは!来たのでは!
「いや、うんホントなのかな?俺は好きだよ……」
言っちゃったよ俺!何してんだよ、キモイだろ俺なんか相手のことも考えろよ!
「私も……」
「は?」
「え、いや?」
「全く!いやじゃない!」
「なら、えっと」
「付き合ってください」
「いわれちゃった」
かわいいなおい!
「手でもつないじゃう?」
「マジか、そんなことしちゃっていいの?」
「いいよ、私の彼氏君だし」
「じゃ、じゃあ」
右手同士が絡み合う、ホントにちっちゃいんだな女の子の手って。
「で、どうする?」
「どうって、戦うかどうか?」
「私は戦いたい」
「どうして?」
「私は、死にたくないし、みんな死んでほしくない、だから侵略者と私が戦えば死ぬ人が少なくなるなら、戦いたい」
「でもそれで僕らが死ぬかも」
「君が死ぬのはいやだけど、でもほかの大勢が生きるなら怖くない」
すごい人だ、俺は今の今までやる気になってなかったのに。俺も死ぬのはいやだ、だけど彼女と死ねるなら……重いか、でも彼女がやりたいならうん、断る必要はない
「わかった、僕も頑張る」
「いいの?死んじゃうかもよ」
「いいよ、付き合うって何すればいいかわからないけど、浅田さんがやりたいことがしたい」
「な、なんか恥ずかしいね」
うん、神田幸樹17歳童貞!頑張るか
コンコンとノックされる
「そろそろいいかな」
「ノックした後に聞かないでください」
「は、ハイ!」
と上ずった声で言う。そして、するりと右手が離れる、耳元でささやかれた
「まだちょっと恥ずかしいから、ごめんね」
おいおいおいエロゲかよ!
「仲良さそうだな、いい兆候だ」
「ええ、その調子で、作戦開始までにセックスまで済ませておいてください」
「え?」
浅田さんが爆発しそうだ!
「エマ、清き少年少女の前で直接的な表現はやめないか」
「し、します!」
「ええ!?」
急に何を言うんだこの子は!
「今からしよう!」
「ちょっと待って!まだ早いよ!しかもここじゃさすがの俺も恥ずかしいよ!落ち着いて!」
「わ、わ、私は落ち着いてるよ!」
「落ち着いてください、浅田さん今すぐにしなければいけないということではありません」
「うんそうだよ!お落ち着いて!」
爆発してる浅田さんをエマさんと二人でなだめる
「ごめんなさい、なんかテンパっちゃって」
「なんか、爆発してる浅田さんかわいかったよ」
「か、かわいい!?」
「イチャイチャしているところ申し訳ないが、戦ってくれるのかい?拒否することもできるが」
彼女が声を出す
「やらせてください、私たちに」
「君はいいのかい?」
「ハイ、彼女がやるというなら」
「うん、いい顔だ。早速実験を行おう」
「準備を行います、こちらへ」
また案内される。さっきより彼女との距離は近く感じた
「この席に座ってください」
向き合うように座らせられ、ヘッドギアのようなものをつける。次の瞬間感覚がなくなっていく、そして、気が付いたときはシリンダーの中だった。
「シリンダー開封」
培養液がなくなっていき、重力を感じる、が、崩れることはなく、外へ出れば久しぶりのような空気を感じる。
「気分はどうですか?」
「ええ、大丈夫」
「頭が痛いとか、体が痛いとかないですか?」
「うん、大丈夫です」
「でしたらまず、服を着ましょう」
と、手渡された服を慣れた手つきで着る。
「これ、いいデザインですね」
「ありがとうございます、こちらは所長がデザインしたものになります」
「そうなのですね、あの人すごいんだな」
いろいろやってるんですねあのひと
「そうしたら、まずこちらで今日の訓練を行います」
「訓練ですか?」
「時間があるとはいえ、やれることはやっておきましょう」
「わかりました」
と、体育館程の広さの真っ白な部屋へ案内される
「ここで、AIとの訓練を行います、では、ここからは音声ガイダンスに従ってください」
と言い残し、外へ出ていく
「こんにちは、被検体A_0099」
「私のことですか?」
「はい、では戦闘訓練を開始します」
すると、白い床からピッチャーマシンが出てくる
「このマシンから飛んでくるボールをすべて拳で打ち返してください」
その瞬間、4,5台のピッチャーマシンからボールが飛んでくる、それを拳で弾き返す
かなりの数のボールが押し寄せてくるが、それを目で見て的確に拳を打ち込む、拳は痛くないしかも体はついてきている、スピードがどんどん速くなっていく、「戦える」とふと感じた、次から次へと豪速球が襲い掛かる、しかしそのすべてを弾き返す、前へ進み一つ、また一つとマシンを一撃で破壊する。すべてのマシンが破壊されたとき、AIが喋りだす
「素晴らしいです、では次のステップへ行きましょう」
スピーカーからの音声が流れ、ここから3時間訓練は続いた
「本日の訓練は終了です、お疲れさまでした」
体は疲れを感じていなかった、
「お疲れ、えっと……何と呼べば?」
「そうだな、カンダユイでどうだ?」
「それは未来を見据えてか?」
「い、いや違います!その二人の意識が混ざってるから間をとって……と思っただけです!」
「わかっているさ、君のことはユイ君と呼ばせていただこう」
ハハハと笑いシリンダーの中へ入るように促される
「もう終わりですか」
「ああ、お休み、ユイ君」
そういわれ、意識が途切れる
気が付けば、寝ていた、隣のベッドには僕の彼女が寝ていた
「おはようございます、どうでしたか?」
「どうって……」
夢のようだ、あまり覚えていないが沢山の機械を破壊した気がするけど
「夢みたいです、あんなことができるなんて、あのパワーあのスピード、あのボールも止まっているように見えました」
「神田様の反射神経と浅田様の身体能力、その二つが組み合わさり、さらに我々の作った肉体によって素晴らしい成績でした」
そうして長い一日が終わった……
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