10.閉じ込められた生活(side:アンジェラ)
「ねぇ、一体いつまでここに閉じ込める気?」
私は苛立ちを押さえることが出来ず吐き捨てるように尋ねた
「アンジェラ様が2人のお子を産み落とされるまでと命じられております」
では、とお辞儀してメイドは出て行った
帝王の言った通り私は本当につながれていた
あんなのただの比喩だと思ってたのに何でこんなことに…?
部屋の中央にある柱に繋がれた鎖の反対端は私の左足首の錠だった
あの日屋敷に戻るなりこの部屋に通された
エリナは私の身支度を整える中で驚くほど自然にこの足の枷と錠を取り付けていた
気付いたときには既に鎖の反対側は柱につなぎ留められていて逃げ出すことも叶わなかった
バスルームもトイレも当然のようにある
部屋の中は自由に行き来できるもののこの部屋から出ることは叶わない
万が一鎖を外せたとしても窓の下でもドアの前でも護衛が見張っている
「ちょっと!マックスを呼びなさい」
「申し訳ありません。ただいま絵に没頭なさっていますので」
この返事を一体何回きいただろう?
「それ、ここに来てから10日ずっと同じことしか言ってない。くだらない言い訳はもうたくさんよ!」
「事実でございます。短くて2週間、長ければ3か月ほどアトリエから出られることはございません」
「は…?」
それが何を意味するのか理解するのを私の頭は拒んだ
最悪3か月もこのまま放置されるなどありえない
この私が3か月もこのまま蔑ろにされるなんてむしろあってはならないのよ?
「これは命令よ。呼んできなさい。マックスの妻である私が言ってるの。それがどういう意味か分かるわよね?」
メイドに掴みかかって言うとメイドは恐怖から震えながらかろうじて首を縦に振る
「さっさと行きなさい」
部屋から蹴り出して自分はベッドにダイブする
あれから30分は立ったはずなのにまだあの豚は来ない
その間苛立ちをぶつけるように気持ちを吐き出していた
言葉にすれば少しはこのムカつきもマシにはなるはず
なのにどれだけ吐き出そうとこの待たされる時間がそれを叶えてくれない
「ちょっと!いつになったら来るのよ!?」
「申し訳ありません。私にはわかりかねます」
淡々と答える私に付けられたこのメイド
何をどれだけ言っても顔色一つ変えやしない
それが余計に憎たらしいわ
「本当に役に立たないメイドね!今度お父様にあったら首にしてやるから!」
側に有った本をメイドに投げつける
でも届かなくて余計に腹が立つだけだった
「呼んでると聞いたが?」
突然ドアが開いてようやく豚が入ってきたのは1時間が過ぎてからだった
ノックぐらいしなさいよと思ったけど…豚には無理ね
「ええ、呼んだわ。嫁いできたのに顔を見せないってどういうことかと思ってね」
これまで男は皆私に傅いてきたのよ?
その私を妻に出来たんだから敬って当然なのにこの豚は10日も顔さえ出さなかった
理由次第ではお父様に連絡を取って懲らしめてやらないと…
「どうもこうも私の優先順位の一番上は絵を描くことだ。それは父上もご存知だしあなたは望んで嫁いできたわけじゃないだろう?私のことなどその辺の豚としか思っていないと聞いたが?」
ありえない答えが返ってきた
私が一番じゃないなんて許せない!
「そうよ。でも背に腹は代えられないじゃない。私はあんたの子を2人産むまでここから出してもらえないのよ!?あんたなんかに抱かれるなんて吐き気がするけどそれしか手段がないなら受け入れるわ。だからあんたも役目を果たしなさいよ!」
本当は絶対嫌だけど…別の男を呼び込むことも出来なさそうだから諦めるしかないわね
こうなったらとっとと2人産んで憂さ晴らしするしかないわ
そう思っていたのに…
「…少なくともそんな態度の女性を抱く気にはならない。今の君を抱くなら娼館に行った方がましだ。3か月時間を差し上げよう。あなたは一度自分の立場をきちんと理解した方がいい」
「どういう意味よ?」
「帝王の血を引く家の者として恥ずかしくないふるまいを身に着けてください。あなたに選ぶ権利があるように私にも選ぶ権利がありますから」
「は…?」
耳を疑った
この豚は私を選ばないと言っているように聞こえるのは気のせいかしら?
「明日から家庭教師を寄越します。全員が合格を出せば…そうですね、私の仕事が落ち着いていて私の気が向けば、この部屋を訪れて差し上げますよ」
「何…言って…」
「次にお会いできるのがいつかは分かりませんが…まぁそれもあなたの努力次第でしょう」
失礼、とそう話を終わらせてマックスは出て行った
「ちょっと待ちなさいよ!」
私がどれだけ叫んでも豚は振り向きもせずに去ってしまった
豚がここに来ない以上私の望みは叶わない
「ちょっと待ってよ…」
なんて言った?
恥ずかしくない振る舞いを身につけろ?
家庭教師を寄越す?
合格しても豚の仕事と気分次第?
私はその場にへたり込んだ
よくわからないけど私の思っていた状況と違うということだけは分かる
「何でこんなことに…?」
その言葉をこの先嫌というほど繰り返すことになるなどこの時の私は思いもしなかった
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