第12話 正義


 最後に正義とは。

 正義とは、とても歪なものだと思いませんか?

 その言葉は小さな子供ですら知っているありふれた言葉。

 では、その子供にとっての正義ってなんでしょう?

 アニメのヒーロー?仮面をつけたヒーロー?それとも、お父さんかな?

 分かる通り、歳なんてものは関係なくどの人であれ、自分にとっての正義がある。

 それは、もちろん悪人にだってある。

 正義というのは、悪い言い方をすれば都合の良い自己肯定でもある。


 例えば、子供のいじめです。

 第三者から見れば、間違いもなく悪です。

 ですがたまに、こう言った言葉を聞きませんか?

 『彼にも問題があった・これはイジメじゃなくて揶揄っているだけだ・先に向こうが始めた』

 もちろんこれ以外にも、いろんな言い訳があると思います。

 大事なのはワードではなく、その時の感情です。

 これらがイジメを行った者が持つ己の正義だったら?


 そうですね……例えば。

 問題があったから、その問題に気づいてもらう為に正義の元行ったが、ついやりすぎてしまった。っと言われたらどうですか?

 

 うん、うん。そんな正義ありえない、納得できないって?

 でもこれ、働いている大人なら、当たり前のようにしてるんじゃないですか?

 例えば、ある正義の元で働いている者は最初は殴られ虐められるそうですよ。

 自分の弱さや精神を強くする為に。うん、怖いですよね。

 でも不思議な事に、会社でも同じ事があると思いますよ?例えば上司とか……

 ただ、自分が大人になって対処や精神力が強いから耐えられるだけで。そして、対処できてしまうからそこに気が付かず当たり前になってしまう。

 あれ?当たり前になる……聞いたことありませんか?イジメが当たり前になると、周りの人間はイジメに気がつかないって。

 気がついていないのは、周りだけでなく自分ですら……

 怖いですよね。


 1人で寂しそうだったから、仲間はずれにしないように正義の元、一緒に遊んでいた。

 うん、うん。これも納得できないですよね?

 遊んでいたんじゃなくて、イジメていたんだろ!そんな言い訳通用するか!ふざけるなって思いますよね。

 でも残念な事にイジメをしていた者が、相手が1人が寂しそうだったから、遊んでついやりすぎちゃった。

 って言えば簡単に治る話ですからね?

 え?自分の子供がそんな目に会っていたら、許せるわけないだろって?

 いやいや、常に1人でいるのはイジメじゃないんですか?

 本人が望んでいるから良いだろって?

 あなたは望みますか?

 うん、うん、これも怖いですね。


 後はそうですね……

 先に向こうが始めた、正義は負けちゃダメだから戦った。

 これだったらどうでしょう。

 一体どちらが悪いんでしょうね。

 もしかしたら、先に虐めていたのは相手かもしれませんよ?

 きっと、悔しく理由を聞くでしょうね。

 その判断をするのは?もちろん、話を聞いた大人でしょうね。

 基準はどこに?どこで判断する?なにを証拠に?

 もちろん、話を聞いた大人が持つ己の正義の元ですよ。

 どうです?正義って意外にクソみたいな言葉でしょ?

 

 聞いたことがある人もいると思います『正義の反対は、別の正義』

 この言葉を聞いた時、点と点が繋がった気がしませんか?

 要はこういうことですよ、自分にとって都合がいい人間は、皆、正義であり……ヒーローなんですよ。

 だってそうでしょ?現代で大量殺人をすれば人々は、恐怖、怒り、悲しみ。そういった、負の印象を持つと思う。

 では、戦争中であれば?

 彼らは、歓喜の声をあげ、敵兵士を皆殺しにした者を讃えるでしょう。

 そんなことないって?では、調べてみると良いですよ。

 戦争 英雄。

 たったこのワードで、何人もの大量殺人鬼が出てくると思いますよ?

 じゃあ、このふたつの違いは?

 もちろん、戦争では非戦闘員を殺してない、殺人鬼とは違うから。と、そう言った理由もあるかもしれません。

 でも1番の理由は、自分にとっての都合の良い正義がそこにあるからと思うんですよ。

 そして、それを決めるのは傍観者である貴方なんです。

 殺人を行ったものではない、それを見て聞いた人間が彼らを罵倒するのか賞賛するのか決めるんですよ。

 不思議でしょ?正義か悪かを決めるのは、本人じゃないんですよ。

 それに、どちらも同じ事をしているのに、正反対の言葉が返ってくる。

 なぜって?それは、自分にとって都合の良い正義が、そこにあるからなんですよ。

 

 なぜ、ここまで長い話をしたというと。

 達也は殺された側。

 先程までの話は、どこまでいっても生きている人間に対してだ。

 では、死んでしまった人は?その人達は、一体どんな気持ちで亡くなったんでしょうね。

 自分の正義に相反する人間に、裏切られ殺された。

 きっと、殺された者は生きている人間には分からない程の、怒りや悲しみに呑み込まれたでしょうね。

 だが、復讐をする機会を得た……いや、得てしまった。

 相手は、己の正義に反する自分を殺した人間達。

 それも自分以外の人間も殺め大量殺人をしている。

 きっと彼は正義の元、関わりのある人間全てを殺すでしょうね。

 そこで問いたい。

 これから行うであろう彼の行動を、傍観者である貴方は正義と捉えるのか。

 それとも、悪と唱えるのか……一体どちらでしょうね。  

  

 これで、舞台も役者も揃いました。

 私の話は一旦ここまでとしましょう。

 ここからは、己の正義に渦に飲まれた者達の物語です。

 さぁ、正しい正義を見つけに行きましょうか。

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