第10話 高揚
「はぁ……はぁ……」
達也は、必死に理性を保とうとなん度も深呼吸をしていた。
ーーあいつ。笑っていやがるよ……お前達は、俺を殺したんだぞ?なんでなんの変化もなく生きているんだ。こんな事があってたまるか。今すぐ殺してやりたい。今の俺には力があるんだ。証拠なんて簡単に隠す事ができるんだぞ?殺したい……殺意を抑えきれない。あいつの喉を噛み切り糞尿まみれの中に落としてやりたい……
達也は、すでに限界だった。
それもそうだ。自分を裏切り殺される原因の1人でもあるんだ。
殺意を抑えることの方が難しいだろ。
そんな、ギリギリになっている達也を冷静にしたのは瑠衣だった。
「達也くん、大丈夫?様子がおかしいよ?まぁ、彼女も可愛いからね」
瑠衣は、意味のわからないことを言いだした。
ーーこいつは何を言っているんだ?あんなアイドルに興味なんかないんだよ……俺が用があるのはそいつのファンだ。もうだめだ……今すぐあいつを殺そう。
「そうそう、私は彼女との繋がりもあるから、そんなに気になっているのなら、会わしてあげようか?まぁ、もし会った事がバレたら、熱いファンに追っかけ回されることになるけどね」
「……会う?ファン……?辛い……辛いことなんですか?」
「えぇ、それはもちろん辛いことよ!今まで応援してきた純粋無垢だった推しの女の子が、他の男に抱かれてるなんて知ったら、気が狂いそうになるだろうね」
ーーそうか……ただ、殺すだけではダメだ。あいつの心をぐちゃぐちゃにしてからだ……あぁ、想像しただけで快楽で脳が溶けそうだ。そうだ、そうしよう。あいつの全てを奪ってやる。
「……瑠衣さん。彼女に会いたいです!僕は、彼女のファンになりました!!」
達也は、溢れ出る殺気を抑え頑張っていつも通りの表情を作った。
「えぇ、そうね。その代わり、うちでちゃんと働いてがっぽり稼いでよ?君にはその価値があるんだから」
「あはは。もちろんです。僕のことを助けて、願いまで来てくれるんだ。どんなことでも、僕はやりますよ」
達也の瞳は、あったばかりの時に比べると黒く濁っていた。
そしてその瞳は、弥生の瞳にそっくりだと瑠衣は思い少しだけ身震いしていた。
「じゃぁ、この後に会えるかセッティングしてみるから少し待ってね」
「はい!お願いします!」
ーーあいつまだ笑ってやがるよ。
隆二は、みゆきが舞台をさった後も楽しそうに応援していた。
頑張れ!頑張れ!いつも君のそばにいるよ!!一生をかけて君を応援するからね!!!っと。
ーーっクック……一生をかけて応援か……そんなにしたいなら、本当にそうしてもらおう。お前の生涯をかけて彼女を応援しろ。そして、裏切られどん底に落としてやる。あぁ、実現するのが待ち遠しいよ……なぁ、隆二くん?
そうだな……まずは、みゆきについて調べるためにある程度の信用を得るところから始めるか……あぁ、楽しみだ。
「お待たせ!達也君、聞いて驚くことにみゆきちゃんのアポが取れました!!っが、これは完全なプライベートだからちゃんと変装はしてもらうわよ」
「そ、そんな簡単に取れるんですか?瑠衣さんて一体何者です?」
「もちろん、2人っきりではないわよ?それに、今回はお互いに利益があるからこそ承諾してもらえたわけで、プライベートとは言っても、ほとんど仕事のようなものよ。だから、仲良くなれるよう頑張ってよ?上手くいけば、うちの会社はウハウハよ」
瑠衣はとろんとした目つきで、涎が垂れそうなほど口角が緩んでいる。
「うわぁ……瑠衣さん凄い顔してますよ。それに、みゆきちゃんに会えるのなら何でもやりますよ」
「ヨシヨシ、その粋だ!!なら、待ち合わせ場所に19時集合だから一旦帰って、準備しようか。それに今日買った服も着たいし」
こうして、瑠衣のおかげでみゆきと会う機会得ることができた。
達也の復讐には3人の標的がいる。
まず、弥生 実。
今だ彼に会う機会どころか話にすら出てこない。
当面は関わることすら難しいであろう。
次に、鳥居 令子。
彼女も弥生と同じく、何の進展もない。
最後は、隆二。本名 白田 隆二。
同じ職場の後輩だった男で、達也の記念すべき最初の標的でもある。
年は、達也の3個下の入って1年の新入りでもあった。
彼の出生に何の問題もなければ、達也の下についたのも上司からの指示だ。
それなのになぜ、達也が最後に聞いた会話の中に『ここ数年』という言葉が出てきたのかだ。
あの時の話を整理するなら、隆二は警察になる前から達也を知っており、実と共に達也を殺害をする予定があったということだ。
確かに達也は、弥生 実が犯人だと思ってはいなかったが、真相には近づいてはいた。
だからこそ殺害されたのだが、問題なのは先も言った『ここ数年』このワードである。
今はまだ、このワードの真相はわからないが後にある重要な意味を持つ事になる。
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